小学館情報誌編集局情報誌戦室小林様(長っ)より献本御礼。
タイトルのベタさも取材の面白さもいつもの佐々木クォリティ。
本書「起業家2.0」は、IT関連ジャーナリストとしてはもはや右に出るものがいない感がある佐々木俊尚の最新作。今回のお題は、タイトルにある通り、ITバブル崩壊後も実はしっかりやっている、新世代のIT起業家たち九組。以下のとおりである。
目次見てのとおり、この九組の会社とその代表たちは、一見したところ「IT」という以外まるで共通点がないようにすら見える。ゼロスタートの山崎とはてなの近藤では、水と油どころか宇宙人と未来人ぐらい違う。それでもこの九組の会社に通底する何かを佐々木は感じ取ったのだろう。それは何か、というのが本書の主題ということになる。
オビより「ホリエモン」終焉後のJベンチャーはとんでもないことになっていた!拝金的な彼らとは相反する独自のビジネスもでる。先鋭的な超技術志向。楽しさの追求。mixi笠原健司ほか2010年をリードする「ナナロク」世代のRealStory!!
著者のインタビュー力には定評がある。だらだらインタビューをするのではなく、きちんとインタビュイーのバックグラウンドを調べた上で的確な質問をするので、答える側もずいぶんと話しやすい(ちなみに私も脇役としてインタビューされている)。そういうインタビュワーがあつめた言葉に、借り物の台詞は一つもない。
それだけでも本書には読む価値があるが、価値をさらに高めているのが、これらの言葉が実はネットには載っていないということだ。ネットはもちろん佐々木にとって書かせない発表の場ではあるが、実はそこはメインではない。きちんと金になる文書を金にできるメディアに発表している点が、ネットの論客たち--僭越ながら私も含めて--と違う。佐々木には「タメ」があるのだ。
ネット言論の「打てば響く」に慣れたものにとって、この「タメ」は実に難しい。私にそれが欠けているのは、本blogを使って本を書いていることからも明らかだろう。「こちら側」のジャーナリストとしてきちんと場数を踏んでいる差なのだろうか。うらやましくもあるが、それ以上に「今すぐ書いてしまいたい」誘惑に著者がどう耐えているのかが気になる。
本書に限ると、一つ欠点が。それは文字の大きさ。本書は四六版なのだが、文字が新書どころか文庫より小さいのである。私はやたら字を大きくしてベージ数を稼ぐ本が嫌いだが、本書ぐらい小さいとさすがに読みづらかった。ページ数は200を切っているので、紙の節約だろうか?これなら1300円ではなく、活字をもう少し大きくした上で250ページにしてAmazonプライスの1,500円にした方がよかったのではないか。
内容を考えれば、それは取るに足りない欠点ではあるのだけど、これでは本書を最も読んで欲しい「起業家2.0」の親の世代にやさしいとはとても言えない。ブログなんて、しょせんはひとつの表現コンテナー(メディア)に過ぎないと著者は言うけれど、紙の場合もそうだというのだろうか。
老眼鏡を新調してでも読む価値のある一冊。
Dan the Interviewee Thereof
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