技術評論社傅氏より献本御礼。「ブログ限界論」ではお世話になりました。

デスマーチに関わる者必読の一冊。

これからデスマーチに加わろうというものも、その辛さを知る者も、その中で痛みさえ麻痺してしまったものも、そして誰よりも職場の同僚や部下を意図しようがしまいがデスマーチに送り出してしまうマネージャーも。

本書「システム開発 火事場プロジェクトの法則」の副題は、「どうすればデスマーチをなくせるか?」。二部構成の本著では、まずデスマーチを防ぐための手法が紹介される。出版一年後の今なら「ライフガードハック」とでも言おうか。そして二部では、これまでの著者のデスマーチ体験が語られる。

本書は、いわば戦争体験者による戦争の防ぎ方なのだ。

目次 - 書籍案内:【システム開発】火事場プロジェクトの法則 〜どうすればデスマーチをなくせるか?|gihyo.jp … 技術評論社より
第1部 火事場プロジェクトの○と×
B:バードビュー 全体指向/継続指向
C:コミュニケーション 共有指向
E:エモーション 人間指向
F:フィードバック 適応指向
第2部 デスマーチを斬る
1章 デスマーチはなぜ生まれるのか
2章 どうすればデスマーチを防げるのか
3章 会社を辞める,そして見えてきたもの
4章 1人の力を最大限に活かすには

本書は、とても無骨で不器用だ。今年出たあまたの「ライフハック」本に比べると、読みやすさや表現の妙ではいささか見劣りする。しかしその無骨さが、本書にはむしろよく似合う。立て板に水のようなレクチャーは、軽く扱うにはあまりに痛いこの話題を扱うにはむしろ諸刃の件。明朗闊達ではむしろ「痛みも知らないくせに、売文屋は気楽でいい」という受け取られてしまうのだ。

暗い話が嫌いな人はご安心を、無骨なりに著者はユーモアを忘れない。たとえば本書には、以前私が惰訳した「建築士がプログラマーのごとく働かねばならぬとしたら」とそっくりの話が登場する。もちろん本書の方が先である。

それにしても、第二部で披露される著者の履歴は、[これはひどい]を乱発してしまう。もちろん著者ではなく、著者が置かれた状況が、である。以下の下りにはEclipse吹いたよ。

P. 175
 さらにとどめとなったのが、上司の命令だった。
 コーディングを自分の好きなようにやっていたら、「オブジェクトは作るな」「すべて関数として書け」と言われた。Javaはまがりなりにもオブジェクト指向言語であるにもかかわらず、だ。

英語の"get a job"という言葉には、「就職しろ」という文字取りの意味もあるが、日常会話では「仕事しろ」という意味合いで使われることが多い。雑談が長引きそうになった時に、上司がこれを言うわけである。本entryは以下の言葉で締めくくることにする。

Folks, get this book, get a job and get the job done. And don't ever let your job get you done.

Dan the Survivor