もしかして、山田玲司には漫画より文章書きの才能の方が上かもしれない。
「絶望に効くクスリ」が青臭く感じる人も、そもそも漫画を読まない人も、こちらならすんなり飲み下せるはず。
本書「非属の才能」は、「インタビュワー漫画家」山田玲司が、「絶望に効くクスリ」を通して出会った「非属者」たちとのやり取りを、絵を一切使わず文字だけでダイジェストしたもの。
目次 - 光文社発行の書籍より「絶望に効くクスリ」は、本書を書くためのメモだったのかと思うほど、本書のキレはいい。「絶望に効くクスリ」が生薬だとすると、本書はそこから有効成分を抽出して精製したOTC(Over the Counter Drug; 処方箋なしで買えるクスリ)といった感じだ。山田玲司的な青臭さや偏向は抑えつつも、効き目はほとんど損なわれていない。
序文「空気が読めない奴」といわれたことのあるあなた まわりから浮いているあなた 「こんな世の中おかしい」と感じているあなた 本当は行列なんかに並びたくないと思っているあなた のけ者になったことのあるあなた おめでとうございます。
本blogの読者であれば、このうちの一つは該当するだろう。もちろん本blogの主はこれに全て該当する。本書の定義であれば最高におめでたい奴である。
しかし、上記に該当しているだけでは、まだ非属者はさなぎである。羽化するためには何が必要か。それが最終章のテーマ、「和をもって属さず」だ。
それがどういう意味なのかは、是非本書で確認してもらいたいが、私がすぐに思い出したのは、"Forever Peace"の締めの言葉。
Alone, together. The way it always used to be.
私にとって、あらゆる小説のなかで最も美しい最後の一行だ。残念ながら邦訳である「終わりなき平和」では、この部分が物語の文脈に対して非常に限定的に訳されてしまい、感動が何桁も減衰してしまったが、「和して属さず」というのはこの境地を実に端的に表している。「非属」といい「和して属さず」といい、漫画家離れした言葉のセンスだ。
もちろん、委細にはとても同意できない点もある。特にネットに対するアレルギーは何とももったいない。和して属さずにいるために、これほど役にたつ場は人類史上存在しなかったのだから。もっともスルー力がなければたしかに、これは非属にとっての毒でもあるのだけれども。
しかし、本書の各論に異を持つのもまた、非属の才である。本書の小異は大同を損ねるものではない。あえて時間をかけず、各自の最速でまずは読んで見て欲しい。そして、その後自問してみてほしい。
あなたの"非属の才能"は、何ですか?
Dan the Round Peg in a Square Hole
色んな人がいると思いますが、納得するところでこの作品に共感すれば楽しく読めるんじゃないですかね?
共感できないところは参考として読んで進めていけばいいと思いますし。