もしかして、山田玲司には漫画より文章書きの才能の方が上かもしれない。

絶望に効くクスリ」が青臭く感じる人も、そもそも漫画を読まない人も、こちらならすんなり飲み下せるはず。

本書「非属の才能」は、「インタビュワー漫画家」山田玲司が、「絶望に効くクスリ」を通して出会った「非属者」たちとのやり取りを、絵を一切使わず文字だけでダイジェストしたもの。

目次 - 光文社発行の書籍より
  • はじめに 「みんなと同じ」はもうやめよう
  • 第1章 誰のなかにも「プチ佳祐」がいる
  • 第2章 ブルース・リーになる試験はない
  • 第3賞 定置網にかかった人生でいいのか?
  • 第4章 「変わり者」が群れを動かす
  • 第5章 非属の扉をこじ開ける方法
  • 第6章 独創性は孤立が作る
  • 第7章 和をもって属さず
  • おわりに 「みんなと違う」をはじめよう
  • 「絶望に効くクスリ」は、本書を書くためのメモだったのかと思うほど、本書のキレはいい。「絶望に効くクスリ」が生薬だとすると、本書はそこから有効成分を抽出して精製したOTC(Over the Counter Drug; 処方箋なしで買えるクスリ)といった感じだ。山田玲司的な青臭さや偏向は抑えつつも、効き目はほとんど損なわれていない。

    序文
  • 「空気が読めない奴」といわれたことのあるあなた
  • まわりから浮いているあなた
  • 「こんな世の中おかしい」と感じているあなた
  • 本当は行列なんかに並びたくないと思っているあなた
  • のけ者になったことのあるあなた
  • おめでとうございます。

    本blogの読者であれば、このうちの一つは該当するだろう。もちろん本blogの主はこれに全て該当する。本書の定義であれば最高におめでたい奴である。

    しかし、上記に該当しているだけでは、まだ非属者はさなぎである。羽化するためには何が必要か。それが最終章のテーマ、「和をもって属さず」だ。

    それがどういう意味なのかは、是非本書で確認してもらいたいが、私がすぐに思い出したのは、"Forever Peace"の締めの言葉。

    Alone, together. The way it always used to be.

    私にとって、あらゆる小説のなかで最も美しい最後の一行だ。残念ながら邦訳である「終わりなき平和」では、この部分が物語の文脈に対して非常に限定的に訳されてしまい、感動が何桁も減衰してしまったが、「和して属さず」というのはこの境地を実に端的に表している。「非属」といい「和して属さず」といい、漫画家離れした言葉のセンスだ。

    もちろん、委細にはとても同意できない点もある。特にネットに対するアレルギーは何とももったいない。和して属さずにいるために、これほど役にたつ場は人類史上存在しなかったのだから。もっともスルー力がなければたしかに、これは非属にとっての毒でもあるのだけれども。

    しかし、本書の各論に異を持つのもまた、非属の才である。本書の小異は大同を損ねるものではない。あえて時間をかけず、各自の最速でまずは読んで見て欲しい。そして、その後自問してみてほしい。

    あなたの"非属の才能"は、何ですか?

    Dan the Round Peg in a Square Hole