そう。奴らは搾取している。

ここギコ!: 「結局自己責任ですか」と赤木さんなら言うと思うぞ
もちろん、日本が二流三流国になって、社会構成員全体が生活レベルが下がっているのなら仕方ないが、世代上の優位で既得権益を握っていた側が自分の生活レベルを維持するために、その分の搾取を這い上がる機会も与えないまま搾取して、その結果以前なら社会全体の平均レベルの生活を十分送っていける程度には「笑っている」はずの人が、どうにもこうにもならない状況になっているのが問題ではないのだろうか。

なぜ搾取しているか?

搾取を甘んじて受け入れる者たちに不足していないからだ。

実は、ワーキングプアたちも、搾取されると同時に、搾取を甘受している者たちとも言える。これがワーキングプアたちから「おいしい」仕事を奪った中国人やインド人ともなれば、搾取されているということにすら気がついていないだろう。搾取率から行けば、後者の方がずっと高いのに。

同じ仕事を日本人なら月20万円、中国人なら月1万円が相場とする。搾取者は日本人をクビにして中国人を採用し、その際に他の会社と競争力を持たせるために、月2万円を中国人に払うとする。この時点で、搾取者は月18万円の得。中国人は2万円の得、日本人は20万円の損。泣く者は一人、笑う者は二人。合計金額は変わらないのに、この方が笑う者が増えている。

NHKスペシャル|ワーキングプアIII 〜解決への道〜」であえて焦点を当てていなかったのが、この「笑う中国人」の存在だ。ワークングプアとの対比として、シリーズ全体を通して「笑う搾取者」はちらほら出てくるし、資料映像程度であれば「笑う中国人」や「笑うインド人」も出てはきているのだが、充分とは言えない。

彼らの笑いがある限り、日本のワーキングプアが同じ仕事で笑いを取り戻すのは不可能なのだ。なにしろ、中国人たちやインド人たちは日本のワーキングプアたちが涙も出ないような月給に笑うのだ。

確かに、これでは勝負にならない。

それでは、搾取者たちに「奪った20万円を返せ」というのが「正解」に見えるところに、この問題の罠がある。確かにこの18万円は、ワーキングプア達からすれば不当に搾取されたものであるが、中国人やインド人からすれば、それは自分達から今まで不当に搾取してということなのだから。「それならその18万円をそいつに返すかわりにおれたちをもう9人雇え」ということになる。

さらに度し難いことに、搾取した方は搾取した方で、一番儲けて一番笑わなければならないはずなのに、それほど笑っていない。むしろその18万円を誰に奪われるか戦々恐々としているように見受けられる。

NHKスペシャル「ワーキングプアIII 解決への道」の感想
また、拙著『書評もまた書なり - 書評 - オタクコミュニスト超絶マンガ評論』でも紹介したが、大企業のためこみ金(内部留保)はバブル期には74兆円だったものが現在は203兆円にもなっている。

この203兆円の半分でも吐き出させて、それをみんなで分けるのが、一番冴えたやり方に確かに見えるし実際その通りなのだと思う。しかしそれこそが、ワーキングプアにとって一番難しいやり方であることにそろそろ気がついた方がいい。特に20代のうちにこの罠にはまるのは、ワーキングプアの拡大再生産の第一歩だと言っても過言ではない。

たしかにこれは巨額の金である。しかし、今はきみたちではなく、連中の金である。連中がそれだけの金をガメているのは、君たち以上に連中が狡くて賢くて、そして強いからである。そういう連中と正面切って戦う姿を思い描くのはなんだかかっこいいが、各個撃破されるのがオチであるし、実際そうなっている。

asin:4887595867 asin:4887595441
年収10倍アップシリーズ

それに比べたら、自己責任で強くなる方がはるかに楽で楽しい。勝間和代がそうしてきたように。彼女はなにも「セレブ」の一員になりたくて年収を10倍にしたわけではない。勝てぬ戦いを「連中」とするより年収を10倍にする方がずっと勝算が高かったからそうしたのだ。戦争を希求するより、ずっと。

勘違いしないで欲しい。私はあくまで相対的に「その方が楽」と言っているのであって、絶対的にはやはりそれも辛く苦しい道であることには変わりない。しかし自らの努力が報いられる公算は、持てる者に報いてもらう公算よりずっと高いのだ。

「連中」と戦うのは、その後でも構わないし、もしかしてそれしか方法がないかも知れない。「コミュニスト」諸君は、20世紀の敗北を今一度ありのままに受け入れてみた方がいい。世界のためにも、そして誰よりも自分のためにも。

実際、この「戦い」に「勝つ」一番の方法は、連中から「搾取された分」を「奪還」するのではなく、連中自らに「搾取はむしろ損だ」と気が付かせることではないか。水道から平和に至るまで、「誰のものでもない」ものは、弱者にだけではなく強者にとっても有益であることに気がつく必要がある。そのために一番いいのは、連中に「搾取をやめろ」と叫ぶことではなく、まず自分が連中の搾取の手が及ばないところまで「逃げる」ことなのである。そうして搾取の対象が払拭してしまえば、連中は嫌でも折れて来ざるを得ない。

その時にこそ、連中に言い聞かせてやればいい。弱者としてではなく、強者として。

レニーンやロベスピエールが負け、ガンディーが勝った理由も、まさにこれなのではないか。

Dan the Responsible to Himself