もう来てますよ。

たけくまメモ : クリプトン伊藤社長の「態度」
そして著作物そのものより、著作物を生み出す「場」や「ツール」を作り出す人が、ヒットミュージシャンやヒット作家の作品と同じように評価され、スターになる時代がきっと来るでしょう。

ソフトウェアの世界では。

著名なオープンソースプログラマーが、ちょっとしたスター扱いを受けるのは今や珍しい話じゃない。もちろん誰もがスター扱いしてくれるわけではなくて、彼らをスター扱いするのは別のプログラマーではあるのだけど、ソフトウェアの世界ではすでに10年前からそれが常識。Linus Torvaldsしかり、Larry Wallしかり、そしてまつもとゆきひろしかり。

すでにプログラマーという「ファン」の層はかなり厚くて、スターだけではなく「プラネット」、つまりそのスターのまわりを回っている人物にまでファンがいたりする。僭越ながら私もそんな「プラネット」の一人。この点は、作家や芸能人よりも一歩先を行っているかも知れない。漫画に例えれば、アシスタントにまでファンがいるのと同様だもの。

ただし、見ようによっては行き過ぎているところもある。それは、オープンソースの世界では、自らの作品からは直接的には一円も収益を上げられないこと。この点が、初音ミクと決定的に違う。初音ミクは定価15,750円、Amazonでも現在13,703円だが、 Linux や Perl や Ruby は無料。

だけど、元々は、プログラムの世界でも「楽器」は有料だった。私は Lightspeed C を学割で買ったこともあるし、 CodeWarrior までは買っていた。gccがどこにでもある今では考えがたいことだけど(でもまだ MSDN で Visual ほにゃららを買っている人も少なくないのだろうな) 、かつてソフトウェアという楽器は有料だったし、ハードウェアに関しては今でも有料。

それでも、有料だった「楽器」が無料になって、「音楽」を奏でる人が増えたのも事実で、「音楽」を奏でる人が増えたからこそ、「楽器屋」がスターになったのもまた事実。そしてファンの中にはそこからさらに別の楽器や部品を作る人も出て来て....というのがいままでのあらすじ。

にも関わらず、それではスターたちは何して飯食っているかというと、スターたち自身まだわかっていない。一番多いのはタニマチになってくれる企業があるというパターンだけど、私のように「道楽」としてやっている者も少なくない。なぜうまくいっているのか本人達もよくわかっていないのだけど、うまく行っているのだからとりあえずいいじゃん、というのが業界人のノリではある。

むしろ下手に「仕組化」を徹底するとうまく行かないかも知れない。VA Linuxみたいに。バザールは責任者がいないからバザールなのであって、仕組化してしまったとたんに伽藍になってしまうのだろうか。

その辺のところはとにかく、いずれはヴォーカロイドもオープンソース化されるのだろうか。初音ミクを経て只音キクの時代は来るのだろうか。その時クリプトンはどうするのだろうか。ソフトウェアの世界では有料の楽器を売っていた楽器屋はもっと大きな大企業に買われていった。Lightspeed CのTHINKは Symantec に、Codewarrior の Metrowerks は Motorola といった具合に。やっぱ Yamaha かな....

Dan the Open Source Programmer