私も火事経験者だけれども、同じ火事でもずいぶんと違うのだなあと妙に感心してしまったので。

折角リストにしてくれたので、diffを取るような形で書くことにします。ただし私が罹災したのは、1991年12月21日。もう16年も前の話なので、その分褪せているのは先にお断りしておきます。

前提条件の違い

まず、同じ火事でもここは違うという条件をまとめておきます。二つだけですが、この違いは決定的です。

  1. 持ち主 - GIGAZINEの場合借家で、私の場合は持ち家(ただし所有者は私本人ではなく父)
  2. 火事の規模 - GIGAZINEの場合半焼で、私の場合全焼。

リストの差分

以上をふまえて、GIGAZINEリストとの差分を。

  • 消火中

    一軒の家が燃え尽きるのには、以外と時間がかかります。築150年+の我が家の場合、鎮火するのに20時間ほどかかりました。その代わり、火の手が上がるのはあっという魔で、5分後には家全体に火がまわっていました。これは建築様式によっても変わるでしょう。

    一端燃え広がると、ちょっとやそっと水をかけたぐらいでは木造家屋は鎮火しません。我が家で燃え残ったのは、押し入れの中にあったアルバムだけでした。

    なので、結構消防のみなさんと落ち着いて話をする時間もありました。いろいろ学んだのですが、さすがにすぐには出てきません。これは宿題ということで。

    1. 消防記録のための事情説明

      火事の原因がはっきりしていたので、これは楽でした。石油ストーブから灯油が漏れて、そこに引火したのです。その時私は寝ていたのですが、母に叩き起こされて脱出する際にその様子を目にすることができました。十秒に満たない時間でしたが、一生忘れないでしょう。

    2. 警察に説明

      これまた楽でした。「証拠物件」である石油ストーブが焦げ錆びながらも残っていたからです。配管の穴も確認できました。

    3. 家の壁や天井破壊の許諾

      全焼ゆえ、このステップは不要でした。アルバムの次によく原型をとどめていたのが、出火元の石油ストーブだったというのが皮肉でしたが。

  • 消火作業終了直後

    全焼に時間がかかったので、まだ鎮火する前に保険屋さんもかけつけてくれましたし、GIGAZINEの場合と比較するとかなり楽でした。

    1. ガス会社の人からの説明

      都市ガスではなくプロパンガスだったので、この点はあまり問題になりませんでした。ただし、一つやばかったこともあります。台所のタンクは「うまく」消失していたのですが、離れの風呂場(田舎ですから)にあったタンクに引火する危険もあったのです。消防の一番のプライオリティは、この離れと隣にあった祖母の隠宅(これまた田舎ジャーゴン)への延焼防止で、消防のみなさんは見事にそれをやりとげました。改めて感謝します。

    2. 電気会社からの説明

      実はこの火事で、家の近所、というよりあまりに近くにあった電柱とそれに接続していた電線が巻き添えになりました。この電柱、実は違法設置で、火事になる前に屋根に電線が接していました。そういうこともあってか、下流にある住戸(ただし標高だと上)への給電復帰やそれに必要な電柱移設などは嘘のように迅速でした。

      一つ飽きれたのが、有線放送(現株式会社 USEN)。下流住戸への配線の損害賠償を要求してきたのだ。ところが、その配線は中部電力に無断でなされた違法なもの(違法電柱に違法放送線だったので、違法の自乗(笑))。そのことを指摘するとすぐに引っ込んだのだけど、この手の話で一番早くかけつけたところの一つが同社だった。後年同社からインターネット専用線を買うことになるとは当時は思いもよらなかったよなあ。

    3. 「り災状況申告書」を消防署から受け取る

      これは翌日手配した記憶がおぼろげに。

  • 保険の手続き

    前述のとおり、鎮火する前に保険屋さんがかけつけてくれたので、このステップは非常に楽でした。

    一つ付け加えると、火災保険には、火事そのものに対してだけではなく、片付け費用に対しても保険金が下りることがある、ということです。これは契約次第なはずなので、あらかじめ確認しておきましょう。保険金の支払いも本体よりも早く、我が家の場合も翌日には200万円が振り込まれました。

    1. 現場写真の撮影

      これはさすがに他者に頼みました。なにしろ、カメラすら消失してしまったのですから。今ならカメラ付きケータイが普通で、またケータイを身につけていることも普通なので、昔より遥かに楽でしょう。

    2. 保険会社に連絡

      消防と仕事先の次に連絡を入れたのが、ここ。なるべく早めに連絡を入れましょう。ベテランのエージェントなら、こういう時の知恵をたくさんもっています。それまで含めての月々の支払いなのですから。ネット系の損保で今イチ不安なのは、このエージェントの能力かも知れません。日頃から懇意にしておくとよいでしょう。

    3. 鑑定人が来る

      このステップは不要でした。全焼が明らかで、ゴネようもなかったということもあります。

    4. 見積もりを出してもらう

      これまたほぼスルー。満額おりました。

    5. 「り災証明書」を出してもらう

      これまた記憶に残らないほど。このあたりの委細はエージェントがてきぱきとやってくれました。

    6. 保険金請求書に記入

      これも。

    7. 保険会社から振込

      本体の方の保険金の振込は、一ヶ月弱かかった記憶があります。

    8. 確定申告

      GIGAZINEの方にこの項目がなかったのが不思議ですが、火災による損害は当然控除の対象ともなります。普段確定申告しない給与所得者の人でも、これは必ずやっておきましょう。我が家の場合、サラリーマンの父の分をそうしたのですが、所得税が実質ゼロになるほどでした。

      当時の税法と今の税法でどれほど互換性があるかは定かではないのですが、以下をみても罹災者に対しては税法も優しいのは今も変わらないようです。

こうしてみると、火事というのは全焼の方が何かと楽だ、ということです。保険金も満額おりますし、事務の手続きもずっとシンプルです。話を聞いた限りでは、他の災害の場合もそうなのではないかと思われます。

災難というのは、実はとんでもなく効率的な学びの場でもあります。火事から再建までの一年というのは、体感的には学校の四年から八年に相当するほどでした。

それもまた運と言ってしまえばそれまでですが、「300年に一度」というのは、一生の長さで割れば四人に一人は人生のどこかで体験するということでもあります。火事場泥棒は犯罪ですが、火事場学校はそうではありません。こればかりは、経験してみないと実感がわかないものでもあるのですが。

火の用心!

Dan the Survivor