OBII 「突き抜けろ!限界論」、ド年末のドんづまりであるにも関わらず、大勢の方に来ていただいてありがとうございました。最高の「忘年会」でした。

その会場で、カソウケン(家庭科学総合研究所)内田麻理香さんに直にいただいたのがこちら。

もちろんサイン入りだぞ、いーだろー

という個人的な満足感はさておき、約束どおり24時間以内の書評。

この発想が、欲しかった。

本書「恋する天才科学者」は、彼氏候補として歴代の天才科学者たちを見るとどうなるか、という一冊。これがありそうでなかった。本書にとりあげられた科学者たちは、以下の男たち。

目次
まえがき
  • アイザック・ニュートン - 女嫌いでケンカ好きの「政治屋」科学者
  • ハンフリー・デーヴィ - 異例の大出世、でも嫉妬に狂ってしまった美形科学者
  • マイケル・ファラデー - 大科学者なのに清廉潔白、実は...?
  • ニールス・アーベル - 少女漫画のヒーロー的な数学者
  • チャールズ・ダーウィン - 親のすねかじりの「家康的」野心家
  • エヴァリスト・ガロア - 絶望に縁取られた「間男」な天才美少年
  • アンリ・ファーブル - 元祖「昆虫くん」で超一流サイエンスライター
  • アルフレッド・ノーベル - 生涯独身・でも女に彩られたノーベル賞受賞者
  • 南方熊楠 - 日本のレオナルド・ダ・ヴィンチ、奇人ぶりも超人的
  • アルベルト・アインシュタイン - 女グセが悪い暴言家
  • ニールス・ボーア - 心ここにあらず、でも物理学界でも家庭でも良きパパ
  • エルヴィン・シュレーディンガー - 科学界の光源氏
  • ヴォルフガング・パウリ - 機械を壊す名人で「物理学界の良心」
  • ヴェルナー・ハイゼンベルグ - 現代の大嘘つきか、単なる不器用なイケメンか
  • ロバート・オッペンハイマー - 栄光と苦悩を一身に受けた「原爆の父」
  • リチャード・ファインマン - 「永遠の少年」の魔術師
注釈
参考文献

いや、おそらく発想だけであれば、過去にも結構あったのだろう。しかし発想だけでは本書は書けない。本書は、これらの天才達の業績をわかった上で、「男としてどうよ」ということを綴ったものなのだから。女で主婦で母でサイエンティストとしての訓練を受けたサイエンスライター、内田麻理香の面目躍如である。

およそ男科学者の伴侶として理想的な女(ひと)ではないか、著者は。

痛快なのが、アインシュタイン。「女グセが悪い暴言家」とバッサリ。でも本当なのだから仕方がない。最初の妻(にして、もしかしたら特殊相対論を見つけたのは実は彼女だったというゴシップもあるほどの科学者)ミレヴァに対する仕打ちは、男の私から見ても[これはひどい]タグをつけざるを得ない。ここまでは比較的有名な話だけれども、二番目の妻にして従姉のエルザに関する見解にはヤラレタ。

もちろん、このテーマで書くと不満も募る。一番の不満は、誰を入れて誰を入れないというものであろう。見ての通り、本書に出てくるのはほとんど近代の男達だ。このテーマで書くには、業績だけではなく私生活の記録も必要になるが、当然のことながら古いほどそういった記録は少なくなっていく。「証拠不十分」で「釈放」というより「時効」が成立してしまった残念なケースが実にたくさんあるのが見受けられる。アルキメデスやユークリッドが、男としてはどうだったというのは、男の私も知りたいところなのだが。

それを加味しても、例えばオイラーが抜けているのはオイラも不満。「天才パパ」といって真っ先に思い浮かぶのがやはり彼。ベルヌーイ一族も、一族ごと取り上げたらすごく面白そう。

個人的に一番不満といえば、クルト・ゲーデルがこのリストに入っていなかったこと。「一途」という点では、トップクラスではないだろうか。アインシュタインのマブダチでもあったので、本書で併記したらさぞ...あと、前々から言っているのだが、マックス・プランクのちゃんとした伝記が訳書でなく日本語で欲しい。あと当然ながら「女性編」も欲しいし、あと....

いかんいかん。本書の一番のよさは、そうした欲求不満をかきたてることにあるのだから。続編も、是非。

Dan the (Husband|Father of Two)