年賀状と一緒に郵便受けに入っていたのがこちら。筑摩書房の石島様より献本御礼。

初掲載2008.01.04; 販売開始まで更新
大竹文雄のブログ: ちくま新書
「週刊エコノミスト」に阪大社研のメンバーを中心にして連載した「効く経済学」が、
『こんなに使える経済学−肥満から出世まで』(ちくま新書)
として出版されます。来年1月初旬発売です。

実に愉快な本だが、一つ看過しがたい不愉快さがある。

本書の目次だ。

本書「こんなに使える経済学」は、「経済学的思考のセンス」の大竹文雄をはじめとする大阪大学の経済学者一同が週刊エコノミストに連載していた「よく効く経済学」を加筆修正の上一冊の本にまとめたもの。早い話がアンソロジーである。

ところが、本書はアンソロジーであるにも関わらず、目次に執筆者名が出てこないのである。これは致命的に近い欠陥である。それがなぜ致命的な欠陥であるかは、経済学の素人である私がこの後なるべく経済学的に説明することにするが、ここでは「本来あるべき姿」に変えた目次をまず以下に披露する。この目次、すべて私の「書き下ろし」につき、誤字脱字がいつものコピペベースのものより多いかもしれない。遠慮なくご指摘を。特に執筆者に関しては。

目次
序「経済学は役立たず」は本当か
第一章 なぜあなたは太り、あの人はやせるのか
なぜあなたは太り、あの人はやせるのか - 池田新介
たばこ中毒のメカニズムを解く - 池田新介
臓器売買なしに移植を増やす方法 - 高宮浩司
美男美女への賃金優遇は不合理か - 安井健悟
第二章 教師の質はなぜ低下したのか
学年ごとの競争は公平か - 川口大司
文系の大学院志願者が一時増えた理由 - 小川一夫
出世を決めるのは能力か学歴か - 川口大司
教師の質はなぜ低下したのか - 大竹文雄/佐野晋平
第三章 セット販売商品はお買い得か
セット販売商品はお買い得か - 鈴木彩子
犯罪が地域全体に与える影響とは - 沓澤隆司
理論を逸脱する日本人の行動 - 西條辰義
人の生まれ月を決めるのもの - 暮石渉/若林緑
少子化の歴史的背景とは - 杉本佳亮/中川雅央
第四章 銀行はなぜ担保を取るのか
日本人が貯蓄しなくなったワケ - チャールズ・ユウジ・ホリオカ
株で儲かる「裁定機会」はあるか - 筒井義郎
ぜいたくが解く株価のなぞ - 池田新介
銀行はなぜ担保を取るのか - 小川一夫
銀行の貸し渋りはあったのか - 筒井義郎
第五章 お金の節約が効率を悪化させる
談合と大相撲の共通点とは - 青柳真樹/石井利江子
周波数割当にオークションは馴染むか - 齋藤弘樹/芹澤成弘
不況時に公共事業を増やすべきか - 小野善康
お金の節約が効率を悪化させる - 小野善康
サザエさんの本当の歳を知るには - 鈴木彩子
第六章 解雇規制は労働者を守ったのか
「騒音おばさん」を止めるには - 大竹文雄
耐震データ偽造を再発させない方法 - 常木淳
解雇規制は労働者を守ったのか - 大竹文雄/奥平寛子
相続争いはなぜ起こる - チャールズ・ユウジ・ホリオカ
あとがき
執筆者一覧

なお、一つの文に共著者がある場合は、本書で使われている・ではなく/で区切った。そうでないとチャールズ・ユウジ・ホリオカがチャールズ氏とユウジ氏とホリオカ氏の共著に見えなくもないからである。

ふう。ここまで書いたところで、目次の不備による不経済が指にしみると愚痴っておこう。

本書には確かに執筆者一覧が巻末にあるが、本全体を共同執筆したのであればとにかく、本書のように各エッセイの文責が明らかな場合に目次に執筆者名を載せないというのが失礼にあたるというのは経済学以前の問題である。雑誌であればまずありえないし、技術書でもまず見られない。

それでは、なぜそれが経済学的にも「あかん」ことなのか。名前には、貨幣以上に収益逓増の法則が強くはたらくからだ。金持ちがより金持ちになる以上に、有名人はより有名になる。その結果、本来はその有名人の功績でないものにも関わらず、その人に「名寄せ」されてしまうことが実によくある。卑近な例で言えば、元記事よりもそれにリンクした有名blog(本blogも含む!)の方が多くブックマークされたりという現象は実に良く見る。

そのこと自体は、ある程度仕方がないとは思う。人の記憶力には限界がある。それであればより親しみを感じる方を優先して記憶するというのは経済学的にも合理的だ。

だからこそ、より強い名前を持つ者は、そうでないものをきちんと言及する責任があるのではないか。私はこれを「エンドロールの仁義」と呼びたい。映画にとってのエンドロールがなかったら、関係者は皆ブチ切れるだろう。「名前を掲載する」という支払い不履行に相当するのだから。アンソロジーにおいて執筆者名を目次に載せぬのもそれと同じことだと思う、いや、今や目次というのは検索エンジンにとっても実に有用なメタデータであるので、エンドロールを端折るよりもひどい行為だと言わざるを得ない。

本entry執筆現在、Amazonのリンク先はなぜか著者名が抜けているが、このあたりの事情でもあったのだろうか。また、筑摩書房のWebにも、本書の単独ページはまだ存在せず、これから出る本に辛うじて乗っている。発売開始まで数日あるが、これはぜひ正していただきたい。重版されるのであれば本書の方も直していただきたいし、Webの目次であればそれを待つ必要すらないはずだ。

以上、目次に関しての文言で私はちょっと疲れてしまったが、その点を除けば「経済学の大胆な、しかし当然の適用の例」として本書は実に面白かった。「なるほど」もあったし「それはおかしい」もあったが、そういうものが混じっていることこそアンソロジーの醍醐味であり、その意味で本書はアンソロジーとして良書であるだけに、目次の瑕疵は看過しがたい。ただ、グラフにはもう少し気を配って欲しかった。分散グラフでR2を載せないのは素人ダマしっぽくなってしまうし(といっても一般書でR2が載っていない例が多すぎるので本書だけが悪いわけではない)、下部を省略した場合は波線は出しておいて欲しい(これまたTVでよく出てくるグラフ技なので本書ばかりが悪いわけではないが)。

あとは是非、各自の目でご確認のほどを。損はしないはずです。

Dan the (In)?famous