突き抜けろ!限界論 OBIIミーティング」にて著者ご本人より献本御礼。お待たせしました。

その感想は、というと、真っ先に出て来たのは、「有料でもいいから、これがWebページならもっとよかったのに」というもの。

本書「ウェブを変える10の破壊的トレンド」は、JETROの駐在員としてNYCにいた著者がまとめたWebのトレンドレポート。著者は、以下のとおり、それを10の破壊的トレンドとして分類している。

目次 - SBCr shopより
  • プロローグ:破壊的トレンドとは何か?
  • 第一章:ダイレクト(Direct)…ユーザーとネットを結ぶ feed、widgetほか
  • 第二章:フリー(Free)…「潤沢経済」時代のビジネス
  • 第三章:クラウドソーシング(Crowdsourcing)…集合知をカネに変える
  • 第四章:プレゼンス(Presence)…リアルタイムな情報を生かす
  • 第五章:ウェブオリエンテッド(Web-Oriented)…あらゆるサービスをウェブで提供する WebOSほか
  • 第六章:メタバース(Metaverse)…「仮想」が「現実」を呑み込む
  • 第七章:ビデオ(Video Hosting)…「放送」「映画」はどこまで解放されるのか?
  • 第八章:インターフェース(Interface)…キーボードを捨てる日
  • 第九章:サーチ(Search)…vsグーグル第二ステージ
  • 第十章:セマンティックテクノロジー(Semantic Technology)…ウェブが我々を「理解」する
  • エピローグ:破壊するものとされるもの
  • プロの調査員の手によるものだけに、実に読みやすく分析も的確だ。これがWebがある時代のWebに関する本でなければ、「良著。すぐ買え!」の一言で棲むのだが....

    本書では、各章ごとにそのトレンドに関するURLがまとめられている。その数およそ1ダース/章。全部で120以上ある。これを本を片手に追うのは実に骨が折れる。むしろ本書が良著で良心的に書かれているだけに、紙というメディアの制約をより強く感じるのだ。

    もしこれがWeb記事であれば、本書は各章ごとに何百もブックマークがついて、何万回と読まれていたに違いない。実際著者は渡辺弘美の「IT時評」というWeb連載を持っている。そこにリンク集だけでも掲載できなかったのだろうか。あるいは、本書の上梓のタイミングで個人blogを開設して、そこに「紙にはおけないコンテンツ」をおいてもなおよい。

    内容そのものに関する注意点もある。本書は主に合州国におけるトレンドを扱っているので、それに対比する日本のサイトに関しては弱い。たとえば、rimoがあってニコニコ動画がないのは日本の読者はアゼーンなところだ。読み方としては、訳本のように読むのがいいのだろうか。

    とはいえ、紙として本書は出来るだけの工夫はしてあるようにも思う。版型は「3時間で「専門家」になる私の方法」と同じ、縦がA5の「黄金比」。これ、実に手に馴染む。新書の読みやすさとA5の広さを兼ね備えた感じで、高級感も出る。すかすかのハードカバーよりもずっとよい。

    また、本書で取り上げている10のトレンドは、短そうで案外長い、数年単位で続きそうなトレンドでもある。これらを勘案すれば、料金分は元が取れる。でも、今からでも遅くないから、著者は本書に対応するWebページを開設するべきだと申し上げておく。

    それが本書の本来の「第0章:イクスピリアンス(experience)」となるはずだ。

    Dan the Blogging Author

    追記:ご本人によるlink。でも「渡辺弘美」で検索しても上位に来ないのはなぜだろう。

    破壊的トレンド
    http://hiroyoshi.wordpress.com/