404 Blog Not Found:再び紹介 - Stay Hungry, Stay Foolishで紹介した Steve Jobs のスピーチを見て、Jobsに興味を持った方はこちらを。

本書も「iPhoneショック」もどちらも日本有数のAppleウォッチャーがAppleのものづくりに関して書いた本だが、「iPhoneショック」ではどちらかというと会社の方に焦点が当たっているのに対し、こちらはJobsその人に焦点を当てている。

本書「iPodをつくった男」は、Apple IIとMacintoshとPixarとNeXTとiMacとiPhoneを作らせた男、Steve Jobsを通してAppleという会社を語った一冊。新書としては、最もよく書けたJobs本だと思う。本書で満足いかない人は、"iCon"を入手すべきだが、Jobsの仕事ぶりに関しては、むしろ紙幅が狭い分本書の方が焦点がよりはっきりしているようにも思う。ちなみにiConは私は英語版しか読んでいないのだけど、邦訳版の訳者は井口耕二なので信用できるはず。

目次 iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネスより
はじめに
第1章 スティーブ・ジョブズという男について
スティーブ・ジョブズ語録「僕は手に入れられる最高の物が欲しいんだよ!」
第2章 アップル社の経営方針
スティーブ・ジョブズ語録「これからは毎日会社に出てこの星で最も優秀な人間たちと働くことになる」
第3章 デザインの重要性
スティーブ・ジョブズ語録「海軍に入るより海賊であれ!」
第4章 キャッチコピーから見るアップル社
スティーブ・ジョブズ語録「僕が覗くのさ」
第5章 同じ過ちは繰り返さない
スティーブ・ジョブズ語録“One more thing”

さすが四半世紀近くAppleを追っているだけあって、JobsだけではなくAppleのこともよくわかっている。Appleファンにとって嬉しいのは、Jobsのいない時代のAppleもきちんと褒めていること(ただし、第5章できびしく採点もしている)。また、AmazonのレビューにあるNeXTとAppleの危機時代に関する言及の少なさは、特にiConと比較すると物足りなさを否めないが、主題でない以上不十分とは言えないのではないか。

それを踏まえた上で、こちら。

本当に Mac は“the first computer with beautiful typography”なのか? - sumim’s smalltalking-tos
たしかに Mac が存在しなければ、他でもない現在主流のスモールトーク的な GUI やそのルック&フィール(ここでのマルチフォントを含む…)がここまで世の中に広まることはなかったはずで、そのことにはいちファンとしてとても感謝しています。でも、聴衆が勝手に思いこむのをいいことに、暫定ダイナブックの成果をあたかも自分たちが“無”から生み出した手柄であるかのように世に広めてしまうのは、なんだか違うような気がするのです。

これはPARCのファンであれば、絶対にそう思うと私もスピーチを聞いていて思ったのだけど、本書はPARCファンには一番耳の痛い言葉も紹介している。MacPaint と HyperCard を作った、Bill Atkinson の言葉だ。

P. 64

「僕たちは世界で最初に何かを作ることに意味を見いだしたわけじゃない。世界で一番優れた何かを作ろうとしただけだ」

その言葉通り、アップル社はGUIを世界で初めて手がけたコンピューターメーカーではなかったが、その研究を進めていたゼロックス社から移籍した技術者たちを交えて、現在に至るまでPC業界全体に影響を与え続けている完成度の高いGUIベースのマックOSを送り出したのだった。

なぜXeroxはAltoを作れたのにMacを作れなかったか、いや作らなかったか。なぜ今に至るも The Document Company のままなのか。

確かにこの業界に長くいればいるほど、JobsではなくKayのような、作らせる天才ではなく作る天才の方が凄く思えてくるし、彼らがいなければこの業界そのものがありえなかった以上、「ちゃんとPARCのことも語れ!」というのもわかる。

だからこそ、Xerox の失敗から学ぶべきなのだ。もし Xerox が自らの創造性をスルーしていなかったら、今頃世界を制覇していたのは iPod ではなく xPod だったかも知れず、JavaScriptではなくSmalltalkがWebプログラミング言語だったかも知れない。

それくらい、「わかる人」ではなく「わかってくれる人」というのは、重要なのである。

で、なぜ Jobs は「わかってくれた」のか。あとは本書をご覧あれ。

Dan the Blogger Trying to Be Foolish Enough