早川書房編集部東方(tobo)様より献本御礼。
東方だけあって、大変な本を献本していきましたよこれが。
冗談はさておき、すごいよこれ!Nスペの 地球大進化とか好きな人ならこたえられないはず。
本書「大気の海」は、文字通り、まるごと一冊大気のサイエンス・ノンフィクション。
目次- プロローグ
- 第1部 気持ちよい毛布
- 第一章 頭上に広がる海
- 第二章 生命の霊薬
- 第三章 食物とぬくもりと
- 第四章 風に吹かれて
- 第2部 地球を守る空
- 第五章 すべて(ホール)の物語
- 第六章 空の鏡
- 第七章 最後のフロンティア
- エピローグ
- 謝辞
- 訳者あとがき
- 注釈
とにかく本書の凄いのは、「見える」こと。すこぶるヴィジュアル。まずプロローグからして凄い。読者はジョゼフ・キッティンガーとともに、高度30kmから地上に落ちる体験をする。30kmといえば、「横」方向には東京から幕張程度。成田までの半分の距離しかない。田舎だったらちょっとした買い物のためにこれくらい走ることさえある。しかし「縦」方向だと、高度30kmというのは途方もない。半分宇宙なのだ。
しかし、この薄い大気は、その組成を変えつつ、40億年もの間生物を護って来た。その意味において、本書のタイトルである「大気の海」という表現は実に正しい。もっともフランス語では海は母(la mer)でも空は父(le ciel)なのだが。第二章では、この大気の構成を、プルーストリーとラヴォアジェの目を通して改名していく。その過程で二人の波乱に満ちた生涯も読者は追体験することになる。
第四章と第六章に、それぞれコロンブスとマルコーニが登場するのは、「大気」が主題の本書では以外に思えるかもしれない。その意外な関係は本書で確認していただくとして(賢明な読者はもう目次で見抜いているかも知れないが)、本書を通して共通しているのは、描写が実に映像的なこと。そのままドキュメンタリー番組の脚本、いや絵のない絵コンテとして使えるぐらい鮮明なのだ。
これ、そのまま「地球大進化」みたく、映像化してくれないかなあ。同じ著者の「スノーボール・アース」は未読だけど、「地球大進化」の種本の一つっぽかったし。
「コンテナ物語」の映像化してほしい作品だけど、そちらがDiscovery Channelの二時間スペシャルとかに相応しいなら、本書は一章づつNスペ一話分という感じ、そう「地球大進化」みたく映像化してほしい感じ。
著者のGabrielle Walkerは、母で美人で化学博士で、もちろんサイエンス・ライター。凄い人もいるもんだ。本書のまさに空のように壮大なスケールは、本当に圧倒的。空間方向にも広いのだけど、第二章のエピーソドを見てもわかるとおり時間方向にも凄い。でも凄いのは、この超人的スケールを常人的な目線で魅せちゃうこと。Singhの引退宣言を見てショボーンとなっていただけに、Walkerの活躍がさらに眩しい。
この手のノンフィクションとしては決して字数は多くなくても、やたら「広い」本書を一年弱で訳出してしまった訳者にも脱帽。Copyright (c) 2007ってちゃんと書いてある。仕事早すぎっ。なのに注釈もきちんと訳出してあるところとか、さすが翻訳ものの早川。
これでハードカバーでなければ、とハードカバー嫌いの私はおもっちゃうのだけど、税込み2,100円はブロックバスター。各章(プロローグとエピローグも数に入る)だけで新書一冊分の読み応えがるのに、値段は3冊分だから、コストパフォーマンスから行けば1/3。お見逃しなく!
Dan the Man @ the Bottom of the Ocean
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