日本能率協会マネジメントセンター出版事業部坂田様より献本御礼。

勝間和代荘司雅彦も、働く側から「残業は損」と述べているが、それを「働いてもらう」側から述べているのが著者。著者の本はその点で首尾一貫しているのだが、その中で最も優れているのが本書だ。両方あわせて読んでおきたい。

本書〈「残業ゼロ」の仕事力〉は、トリンプ元社長として、従業員も増やさず残業も増やさず会社の売り上げを5倍、増収増益を19期連続で達成した著者が、それをどう成し遂げた、いや成し遂げられるように会社をしたのかを、一個人の立場から振り返って書いた本。同工異曲としては「デッドライン仕事術」があるのだが、本書の方がよく書けているのは、単価の違いばかりではないだろう。

目次 - 「残業ゼロ」の仕事力>JMAM出版より
はじめに
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第1章 御社の残業がなくならない理由
残業ニッポンの現実
なぜ残業はなくならないのか
残業が「問題解決」を送らせる
ルール違反で戦うニッポン
残業ゼロでも増収増益
「デッドライン」がスピードと密度を上げる
最後はトップの「覚悟」
第2章 問題はとにかく「分けて」考える
「問題がない」会社は危険ゾーン
「緊急対策」「再発防止」「横展開」が基本
骨はロジック、身は「GNN」
問題は姿が見えれば八割解決
天才以外は問題を小分けせよ
「デッドライン」ですべてが決まる
やることの「優先順位」は必要ない
「これくらいならできる」は禁物
ファイルもスケジュールもデッドラインで整理
第3章 次に「会議」を変えていこう
会議を大切にしてきた本当の理由
「空気を読む」なんてもってのほか
会議こそ最良の「鍛錬の場」
なぜ二分で結論を出せるのか
一番早いのは「立ち止まらない」こと
「コミュニケーション」さえあればいい
会議が社員のキャパシティを広げる
「長くて多い」のがよい会議
会議をうまく続ける「秘訣」
第4章 「残業ゼロ」の達成まで
残業と仕事内容は関係ない
きっかけは他社の取り込み
二千時間働いて売上増は「あたりまえ」
悲鳴のなか、電気を消し続ける日々
「二度と残業したくない」と思わせるには
それでも残業したら「連帯責任」
仕事は会社のなかで完結させよ
「終わり」の時間でタイムスケジュール
第5章 「速くて強い」チームの作り方
「勝てる会社にする」思いはそれだけ
仕事は「ゲーム」、勝つチャンスを与える
「成功するまであきらめない」から成功する
「豹変」「朝令暮改」はあたりまえ
「社訓」が会社をさびつかせる
組織は「右向け右」で動くもの
まずは自分の△から始める
リーダーシップより「フォロワーシップ」
組織にいる間にやっておくべきこと
活気がないのが「いいオフィス」
「仕事の範囲」は明確になっているか
社員は個室、役員は大部屋
「強いリーダー」とワンマンの違い
第6章 「仕事の常識」はこれだけ変わった
日本人は「野性味」を取り戻せ
「TTP」をできる人と会社が伸びる
「人事を尽くし」切っているか
ビンが倒れるまで放っておくな
仕事は「お金のため」にする
組織のストレスから自由になる方法
小さな現場経験を大切にする
最初の一歩は小さな工夫から
第7章 本当のワークライフバランス
もっと楽しい働き方がある
少子化対策だって簡単だ
パートナーはどっちを向いているか
ワークライフバランスの「理想図」
残業ゼロで人生が決まる
「本生(ほんなま)で生きよう

まず、本書の方が構成がすっきりして圧倒的に早く読める。本を読み慣れていない人には「デッドライン仕事術」はきついかも知れないが、本書であればどんなに遅読の人でも2時間もあれば読める。ちなみに綿の場合、10分対3分で、トリプルスコアで本書の方が早かった。ただし、同工異曲ではあるので、読書力に自信があって、時間もあるという人は「デッドライン仕事術」でも構わない。

次に、本書の方がより著者が本音を語っていること。両書とも同時期に出版されているのだが、「デッドライン仕事術」の方は、まだ「トリンプ社長」が抜けていない、というか、読んだだけでは「元社長」であることがわからないぐらい「内」から書かれているのに対し、本書では「元職場」に対して適度な距離が感じられる。

というわけで、暇も閑もない人は本書を、暇はないが閑ならあるぞという人は「デッドライン仕事術」を買え、というわけで書評部分は以上。

で、ひととおり「効率アップ本」を読んで、自分でも「暇を作れぬ奴に金は作れない」を書いた上での感想なのだが、労働基準法を変えるのであれば、ホワイトカラーエグゼンプションとか言う前に、もっと時短を進めた方が労使双方にとっていいのではないか。

現在の法定労働時間は週40時間だが、これは30時間でいいのではないか。週休3日でも一日8時間労働だと2時間の残業だが、ドイツはこれくらいで充分国をまわしている。ドイツ人に出来て日本人に出来ぬというわけはないのだが。そういえば、著者はドイツで教育を受けている。

仮に労働生産性が上がらないと、GDPはこれで25%下がるという計算だが、その程度の効率アップは、各個人の努力以前に企業の構造改革=本当のリストラで出来てしまう。少なくとも、著者はそう主張しているし、それを実績で示した。

もちろん、批判しようと思えばいくらでも批判はできる。たとえば著者は従業員を増やしていないが、派遣労働者はかなり使っている。「単に仕事を派遣に押し付けたのではないか」というツッコミをかわし切れるだけの材料が本書には足りないとは思う。しかしそれを考慮しても、残業ゼロで売り上げ5倍というのは誇張ではないし、他もやって出来ないようにはとても思えない。

「暇がなくては金も作れない」というのは自然人のみならず法人にとっても事実であるならば、法で背中を押さぬ理由はない。

労働者諸君、残業を捨てて、本を読もう。

Dan the Lazy Blogger