これ、かなり有名な話で、産婦人科医にすら支持者が多くいるのだけど....

助産士が教えてくれた「男女の産み分け方」 - Attribute=51
姉御「セックスの時に女がイクと男の子が生まれて、女がイかないと女の子が生まれるのよ」

はっきり言おう。迷惑な迷信だ、と。

とりあえず、科学的にここまでは本当そうだというのは、以下まで。

  • ヒトの場合、以下の条件を満たすと♂になり、それ以外は♀になる。
    1. Y染色体を持つ精子(以下Y精子)によって受精すること
    2. Y染色体にあるSRY遺伝子が適切な時期に発現すること
  • Y精子はX精子よりも平均質量が大きい -- X遺伝子の方がY遺伝子よりずっと大きいため

多分そうだというのが、以下。

  • Y精子は酸性に強く、アルカリ性に弱い

    多くの医者がそう言っているし、そう書いてある本も多いのだけど、論文検索しても出てこないなあ

  • Y精子の方が移動速度が速い

    これは上記からの推察。直接実験した結果があるかどうかは知らない

「女性がオーガズムを感じると男児、そうでないと女児」の根拠は、うち「Y精子は酸性に強く、アルカリ性に弱い」を論拠としているわけなのだけど、オーガズムと膣内PHの関係というのは、これまた調べても出てこない。

そして、もしかしてガセ、というのが

  • Y精子はX精子の2倍も多い数

というもの。産婦人科のWebページの多くにこれが載っているのだけど、たとえば

を見ると、精子のX:Y比率にさほどの差はなく(AbstractによればわずかにX精子の方が多い!)、生まれた時点での男女比に精子のX:Y比率は関係ないとのことである。

で、現在の男女生み分け法で最も確実(といっても80%程度)パーコール法は、Y精子とX精子の質量の違いを利用して、どちらかを濃縮した上で人工授精するという方法で、この場合オーガズムどころかセックスすら不要。

という現況を整理すると、

オーガズム(ないしその欠如)は、現時点では信頼できる男女生み分け法ではない

ということになります。

助産士の姉御にお伝えください。あなたの体験は、単なる偶然の一致だとしても、サイコロを二つ振ってゾロ目が出る確率より高いのだ、と。

これだけなら、まだ「ヨタ話」としてスルーすればいいだけですが、加えてこういう事情もあります。

男児の方が死産率が高い

そう。折角身籠っても無事に生まれてくるとは限らないのです。そして生まれてこない場合、それが男児である確率の方が高く、さらに日本ではこの傾向が顕著なのです。

環境ホルモンの影響などが原因の候補に上がっていますが、これもはっきりしません。はっきりしているのは、男児の方が死産しやすいという統計のみのようです。

このような現況で「オーガズム説」を流布したら、どうなるでしょうか?

「おまえのかーちゃんでべそ」よりは害があると言えるのではないでしょうか。

さらに、中絶という要素がこれに加わります。実は現在最も簡単な男女生み分け法は、妊娠してから望まない性別の胎児を中絶するという方法です。あまりに黒い話題なので皆大声で言いませんが、中国や韓国の男女比率が狂っている原因がこれであることはよく知られています。日本では逆に、出生における男子比率がわずかに下がっていますが、「逆中韓」を指摘する方もいらっしゃいます。

「オーガズム説」を信じるぐらいなら、中国人や韓国人の方が欧米人や日本人よりもセックスが上手ということを信じた方がいいのではないですか?

あと、産婦人科の多くがこの「オーガズム説」につながる男女生み分け法を記載していますが、男女生み分けにかかる費用が保険適用でないということにも注目しておく必要があるでしょう。要は、産婦人科のセールストークなのだと。

私は二児の父として産婦人科をめぐる状況の悪化に心を痛めるものの一人ではありますが、この件に関して言えばいいかげんにしろ、と言っておきたい。ええかげんな事を言い続けて生み分けに失敗したら訴訟に出るぞゴラァ、まで言い切っていいと思います。

Dan the Father of Two Daughters