著者より献本御礼。

びっくりした。

なぜなら、「なぜオープンソースがうまく行くのか」の答えが、「あさっての方」から来たからだ。

これはblogger必見の一冊でもある。

「なぜblogを書くのか」の答えも、ここに書いてあるのだから。

本書、〈「崖っぷち会社」が生まれ変わった3つの方法〉は、商社、ITベンチャーを経て故郷に戻って親の会社を次いだ著者が、いかにして成熟を通り越して衰退すらはじめている家業を立て直したかを一冊の本にまとめたもの。

目次
  • はじめに 崖っぷち会社が、生まれ変わる!
  • 第1章 社長は、怒りと悩みだらけ
  • 第2章 なぜ「ノウハウ」をオープンにすると売り上げが伸びるのか?
  • 第3章 「ノウハウ」で売り上げを1億2000万円増やすコツ
  • 第4章 売り上げが劇的に伸びる「コミュニティ」のつくり方
  • 第5章 すべて公開!売り上げ急上昇の「コミュニティ」の中身
  • 第6章 「ブランド商品」で下請け体質から抜け出せ!
  • おわりに 生まれ変わるために一番大切なこと

著者と同様の「前回までのあらすじ」は、それこそ日本全国で繰り広げられている。「外遊」を経て家業を継いだら、左前だった。こんなんだったら、そのまま返ってこない方がよかった....

しかし、その「外遊」の経験が、思わぬところで家業を救う事になる。著者の場合、それがなんとオープンソースだったのだ。

本書には「オープン」「コミュニティ」「ブランド」という三つの方法が出てくるが、圧倒的に重要なのが一番最初の「オープン」、すなわち「ノウハウを公開してしまうこと」だ。実はこの点は「アルファ・ドッグ・カンパニー」でも指摘されていて、この手法が洋の東西を問わずうまく行くことが伺えるが、同書の法では本書ほど「ノウハウ公開」には焦点が当たっていなかった。

それでは、なぜノウハウを公開するとうまく行くのか?ビジネスの世界では、その逆こそ常識だったのではなかったのか。忠臣蔵だって赤穂藩のノウハウが盗まれたからああいう結末を迎えたのではないのか。

理由その一は、著者の産業が成熟・衰退産業であるということにある。一言で言うと、著者の会社にある技術というのは「枯れている」。それは確かに素晴らしい技術なのだけど、その技術を隠し持っていてもそれが売り上げにはつながらないのだ。確かにこれはオープンソースにも通じることだ。当初のLinuxに出来た事は、商用のUnixにも出来ることばかり。出来ることそのものは、市場参加の必要条件であっても充分条件ではないのだ。

それなら、公開したほうがいい。

自信をもって公開するためには、その技術が公開するものにとって「枯れて」いなければならない。安心して使える技術だからこそ公開できるのだし、そして顧客は技術が公開されている様を見て、確かにそこは技術を持っているのだと安心することが出来る。同じ品質と価格の製品であれば、ブラックボックスよりも「トランスペアレントボックス」の方が安心なのだ。そう。公開というのはそれだけで「安心」という価値を提供することにつながるのだ。

さらに公開する過程を通じて、技術者もまたおぼろげだった技術への理解を確固たるものとすることができる。さらに公開された技術は、次の一歩を踏み出す際のよりしっかりとした足場となる。

ユメのチカラ: 技術は会社のものではない。みんなのものだ。社内セミナーをニコニコ動画(RC2)で公開するまで。
先日、野村総合研究所向けに「技術は会社のものではない。みんなのものだ」というタイトルで社内セミナーをした。

こうして技術を公開していくうちにコミュニティが出来上がり、そのコミュニティを基盤としたブランドが出来上がる。そうなると強い。今やLAMPのそれぞれの頭文字は、オープンソースのプロジェクト名に留まらず、コミュニティ名にしてブランド名。そしてそのブランドをブランドたらしめている技術の持ち主を、顧客たちは優先して指名するようになる。

このことが、オープンソースソフトウェアの世界にとどまらず、紙加工業という「成熟・衰退産業」でもうまくいくんだよ、というのが本書の主張なのである。もはやオープンソースというのは、IT業界というローカルな世界の出来事ではなく、世界の至るところで沸き起こっている潮流なのだ。

そしてこのことは、個人にも成立するのである。blogを書くというのは、自らをオープンにすることなのだ。それが発展すればblogを核としたコミュニティが自然に成立し、そして個はブランドと化す。本書が私の元に届けられたのも、このblogがあったからだ。その意味で、このblog自体が本書の正しさの別証明になっていたのだ。

ここまでくれば弾言せざるを得ない。

オープンソースは、正しい。それも主語限定で正しいのではなく、誰にとっても正しくなりうるのだ、と。

まだ信じられない?本書を見て確認してみて下さい。

Dan the Open Source Engineer