技術評論社書籍編集部田中様より献本御礼。田中さんは本書の編集者でもある。

正直「またiPhone本か」と開封して思ったが、同封の添え状を見て俄然読了欲が。

iPhoneショック」を決定版と位置づけていたのが当時編集作業をしていた私にも奮起になりましたので、

それだけあって、確かに本書はひと味違うiPhone本であった。

「iPhoneショック」の主人公は、iPhoneそしてAppleだが、本書「iPhoneが日本に上陸する日」の主人公は実はiPhoneではない。日本のケータイ業界なのである。香港在住の携帯電話研究家である著者山根康宏は、iPhoneを通していかに日本のケータイ業界が日本の常識、世界の非常識であるかを語ったのが本書なのである。

目次 - 書籍案内:iPhoneが日本に上陸する日|gihyo.jp … 技術評論社より
第1章 iPhoneの登場〜携帯電話業界への衝撃
第2章 日本の携帯電話ビジネス,その利点と欠点
第3章 日本式携帯電話ビジネスの反対に位置するiPhone
第4章 iPhoneから見えてくる日本の携帯電話ビジネスの未来

本書にとってのiPhoneは、まさに黒船、である。その黒船そのものを書いたのが「iPhoneショック」なら、それが「幕府」にとって何を意味するのかを書いたのが本書。たしかにこれは一読の価値がある。

日本の、キャリアーを頂点とした業界構造が、世界の非常識であること、パラダイス鎖国の賜物であることまでは本blogの読者であればおぼろげにご存じだと思う。しかし「それでは世界の常識は」、と問われてもピンと来ないのではないか。

なぜピンと来ないか、それは鎖国を打ち破るほど魅力的な黒船が今まで登場してこなかったからだとも言える。たしかにGSMはグローバルスタンダード。しかしグローバルスタンダードだから何だというのだ。国際ローミングなんかオレには必要ない。SMS(Short Message Service)なんか、日本のケータイのメールにくらべてしょぼすぎる。i-Modeは世界に誇る技術。ケータイ小説は世界に誇る文化....

と思ってませんか?

しかし、世界もまた確実に進んでいる。カメラ付きケータイで、10メガピクセルなんてのまである。金持ち向けの1000万円もする端末だってある。MMS(Multimedia Messaging Service)を使えば、キャリアーを問わず「写メール」できる。端末が強い世界で何が起こるのか。世界をシカトしていた人も本書で世界の現実をしかと知ることとなる。おっとっと。たとえが黒船だけあって「ペリーのお願い」が混じってしまった。

しかし、「列強」のいずれもが今までのところ黒船にまではならなかった。NokiaにしてもSamsungにしてもMotorolaにしろ、日本におけるプレゼンスは無視できるほど弱い。辛うじてSony-Ericssonが4位にいるが、SonyはとにかくSony-Ericssonはマイナーな存在である。

しかし、Appleは違う。Macだけでも市場シェアに不釣り合いなほどの存在感があるのに、iPodは市場を制覇している、というより携帯MP3プレイヤーという市場そのものを構築してしまった。だから黒船たりうるのである。

思えば日本を開国したのは、当時の列強であるイギリスでもフランスでもなく、新興国だった合州国。それを思えば黒船がAppleなのも歴史の繰り返しかもしれない。

しかし、黒船が来てから開国までしばらくかかったように、iPhoneが日本に上陸するのはなかなか大変であるというのが本書の主張でもある。たしかに冷静に著者の主張に耳を傾けると、iPhone上陸はAppleにとっても決して楽ではなく、さらに日本のキャリアーにとっては楽ではない。

だからこそ、私からもお願いしたい。

「開国シテクダサーイ」、と。

Dan the iPhone User-to-Be