「はじめての課長の教科書」が総合1位になったとのこと。
と同時に、第三刷からの帯が右になるとのこと。
「課長の教科書」の舞台裏について一言いいつつ、ディスカヴァーという出版社について少し書いておくには絶好のタイミングだろう。
そこが作る本以上に、評するに値する会社なのだから。
ディスカヴァー社のすごさ、それは
ディスカヴァー社長室blog: 課長の条件・会社の条件・ハラ君の結婚の条件 ●干場ちなみに、私の部屋には、次のオノ・ヨーコの言葉が貼ってあります。
「ひとりで見る夢は夢にすぎないが、みんなで見る夢は現実になる」
この「夢をみんなで見る」ことを具現化していることにある。同社はどうやってそれをなしとげたのか?
コツその1:パスは相手を読んでまわす
今回の「事件」の発端は、著者が私に献本したところからはじまる。ここまでは、今や(私にとっては)日常茶飯事となっている。先月に至っては、献本が来なかった日が土日も含めて一日もなかった。
違っていたのは、献本の時期。発売一ヶ月以上前に来たのだ。
献本のほとんどはすでに発売開始されるか、早くても一週間前なのだが、それだと書評は用意できても、その書評を軸に「ループ」を起こすには時間が少し足りない。
献本が早かったおかげで、私は「いい書評」を書くために現在足りないものを全て著者と出版社に伝え、著者と出版社もそれを準備する余裕が充分にあった。
サッカーにたとえれば、通常の献本は相手が今いる場所に出しているのに対し、今回は相手がどこで蹴るのかを読んだ上で、そこにパスをだしていると言えよう。おかげで私は動きながら「蹴る」ことが出来たし、相手にその能力があるとわかったので、安心して「まだ誰もいない」場所に「ボール」を回すことが出来た。
社内でこれができてる会社は少なくないだろう。しかし「赤の他人」に対してこれができる会社はそれほど多くない。
あなたは、「製品」というボールだけ見てはいないだろうか。「プレイヤー」を見ているだろうか。
コツその2:「貸し代」を作る
献本→書評という一過性の流れが、献本→書評→反響→対応→(他者も含む)さらなる書評というループになっていく過程で、今回の新オビが生まれたのだが、以下のエピソードはちょっとだけ紹介する価値がある。
このオビの前に、「私の書評をPOPで使わせてくれ」という依頼があったのだが、そこで提示されていた「薄謝」が、他社が今まで提示して来た金額よる明らかに安かったので、私は「もう一声!」と返事をした。
そうしたら、一声が一桁上がっていた(それほど驚かないように。元々薄謝なんだから)。これではYesと言うしかない。
その代わり、「オビにも使わせて下さいね」。
はじめにお断りしておくと、書評段階では、献本を除き私の報酬はゼロ。いわば私の「持ち出し」。
逆に、POP採用の時点で、POP採用以上の金額を提示した時点で、今度はディスカヴァー社の「持ち出し」。
いずれにせよ、「貸し借り」をその時点で清算しきらず、「貸し代」を残しているのがポイントだ。貸し代がある、ということは、今後も関係を続けていくということに対する暗黙の了解ともなる。
相手にとって抱えきれないほどの負担を押し付けるのは言語道断だが、ビジネスを継続させたかったらある程度の貸し借りは残しておいた方がいい。それが、「みんなで見る夢」をつなげるのりしろともなるのだから。
コツその3:エンドローリング
ここまでは「裏話」だが、同社の最大の特徴は、同社の本をきちんと見れば誰にでもわかる。「読む」でなくて「見る」。
奥付である。
ここでは同一著者による、「効率が10倍アップする 新・知的生産術」(ダイアモンド社刊)と、「無理なく続けられる 年収10倍アップ時間投資法」(同社)を比べ、その違いを明らかにする。
まずは「知的生産術」の方から。
「効率が10倍アップする 新・知的生産術」奥付著者 | 勝間和代 |
発行所 | ダイヤモンド社 〒150-8409 東京都渋谷区神宮前 6-12-17 http://www.diamond.co.jp/ 電話/03-5778-7232(編集) 03-5778-7240(販売) |
装丁 | 石間淳 |
イラスト | 上杉久代 |
撮影 | 平山順一 |
DTP | ダイヤモンド・グラフィック社、デジカル デザイン室 |
制作進行 | ダイヤモンド・グラフィック社 |
印刷 | 八光印刷(本文)・加藤文明社(カバー) |
製本 | 川島製本所 |
編集担当 | 寺田庸二 |
他の本に比べるとこれでも充実しているのだが、それでも映画に例えれば、冒頭のクレディットのように、「主な登場人物」しか出てこない。
ところが、「時間投資法」の方はこうなのである。手で写したものなので、間違いがあればご指摘を>d21各位
「無理なく続けられる 年収10倍アップ時間投資法」奥付Author | 勝間和代 |
Book Designer | 金澤浩二 |
Illustrator | 上杉久代 |
Publication | 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン 〒102-0075 東京都千代田区三番町8-1 TEL 03-3237-8321(代表) FAX 03-3237-8323 http://www.d21.co.jp/ |
Publisher | 干場弓子 |
Editor | 原 典宏 |
Proofreader | 磯崎博史 |
Promotion Group | |
Staff | 小田孝文 中澤泰宏 片平美恵子 井筒浩 千葉潤子 早川悦代 飯田智樹 佐藤昌幸 横山勇 鈴木隆弘 大薗奈穂子 山中麻吏 空閑なつか 吉井千晴 山本祥子 |
Assistant Staff | 俵敬子 町田加奈子 丸山香織 小林里美 富田久美子 井澤徳子 古後利佳 藤井多穂子 片瀬真由美 藤井かおり 三上尚美 福岡理恵 長谷川希 島田光世 仲ひかる |
Operation Group | |
Staff | 吉澤道子 小嶋正美 小関勝則 |
Assistant Staff | 竹内恵子 畑山祐子 熊谷芳美 清水有基栄 鈴木一美 田中由仁子 榛葉菜美 |
Creative Group | |
Staff | 藤田浩芳 千葉正幸 橋詰悠子 三谷祐一 石橋和佳 大山聡子 田中亜紀 谷口奈緒美 大竹朝子 |
Printing | 株式会社厚徳社 |
そう、エンドロールになっているのである。同社によれば、アルバイトでもその本に関わっていれば奥付にその名が乗るとのこと。
エンドロールというのは、読者にとってそれほど意味がある情報ではない。実際映画でも、エンドロールがまわっているうちに立ち去る人は少なくない(私もほとんどの場合そうだ)。食パンのミミ扱いである。
しかし、関係者にとって、それがあるのとないのとでは士気がまるで異なる。だから映画では余計なコストまでかけて、何分にもわたるエンドロールを流す。エンドロールに出るものの多くは薄給か無給だが、エンドロールに乗る事そのものが報酬の一部なのだ。
ましてや本の場合、制作に必要な人員はずっと少ない。一ページで足りてしまう。通常の奥付とコストはほとんど変わらないはずだ。
ならば、費用ゼロで関係者に報酬を配る場として奥付を使ってしまえばいい。
これは他社がすぐにでも真似るべきだろう。
まとめ
「先読み」「貸し代」そして「エンドローリング」。同社に限らず、「できる会社」は多かれ少なかれやっている。昔と少しだけ違うのは、それが社内で完結しているのではなく、社外をも巻き込んだ形になっていることだろうか。
こういう形で私を巻き込んでくれたことを、著者と出版社に感謝します。
Dan the Ad-Hoc Team Member
追記:ディスカヴァー原様、添削ありがとうございます。どうせなら、このエンドロールも御社Webに載せては?
×ディスカヴァーの写真ではないですが
○ディスカヴァーの社員ではないですが
親指シフトで、「い」は右手薬指、「し」は左手薬指なのです。
なので
しゃしん
しゃいん
のように、しやいがたくさん出てくると、たまに間違えます。恥ずかしい。