ディスカヴァー社一同より献本御礼。

Amazonで現在一位の本を今書評するまでもない、少し人気が落ちてから改めて、と思ったのだけど、干場社長の誕生日プレゼントの代わりならと思い立ち、仕組みにのせられることにする。

本書〈「仕組み」仕事術〉は、仕事において仕組みがいかに効果的であるかを説いた上で、実際に仕事を仕組み化していく方法を紹介した一冊。

Discover: ショッピングカートより
はじめに
PART_1 「仕組み」があなたの仕事を変える
STAGE___01 なぜ「仕組み」が必要なのか
STAGE___02 「仕組み」が必要な仕事と、そうでない仕事
STAGE___03 自分の仕事に「仕組み」をつくる
STAGE___04 「仕組み」でチームを動かす
STAGE___05 続ける「仕組み」をつくる
STAGE___06 「仕組み」仕事術・3つの黄金ルール
PART_2 「作業系」の仕事を徹底的に効率化する
STAGE___01 チェックシートを徹底活用しよう
STAGE___02 仕事の内容と手順をチェックシート化する
PART_3 あらゆるタスクを一元管理する
STAGE___01 データ管理の基本をおさえよう
STAGE___02 TO DOリストを使って、あらゆるタスクを一元管理
STAGE___03 一日かかっていた仕事が2時間で終わる! 「考えない」仕事術
STAGE___04 メール処理に「仕組み」をつくる
STAGE___05 情報収集も「仕組み化」しよう
PART_4 「仕組み」で考える人はこうしている――“7つの習慣”
終章 「仕組み」仕事術が目指すもの
あとがき

それでは、仕組みとは何だろうか?

オビの言葉を借りれば、「才能に頼らない」で、「意志の力に頼らない」で「記憶力に頼らない」で、仕事をするための工夫である。実は仕事ができる人というのは、一人の例外もなくこの仕組み作りの名人である。そして、仕組みに頼らずに成金になれる人は現代においては一人もいない。

そんな私自身も、小はこのblogから、大は人生そのものに至るまで、仕組みに頼って生きている。例えば書評一つ書くのにも、そのためのスタイルという仕組みがあり、Amazonのアフィリエイトタグを自動生成するための仕組みがあり、さらに献本が献本を呼ぶような仕組みがある。

その私から見ると、本書の「仕組み」は実のところまだまだ、である。

なぜか。

究極の「仕組み化」にまだ手をつけていないからだ。

究極の「仕組み化」とはなにか?

懸命な読者はもうお分かりかも知れない。プログラミングである。そう。プログラマーというのは、まさに仕組みそのものを作ることを生業としている人々である。だから、実のところ、仕組み仕事術を得たかったら、他のどんな参考書よりも、プログラマーたちの生き方を観察することが参考となる。プレゼンテーション一つとっても、パワーポイントの使い方をうんぬん言っている人々と、プレゼンテーションツールそのものを作ってしまう人々の間には、地球人とサイヤ人ぐらいの違いがある。

たとえば、本書のまとめに相当する「7つの習慣」は、さらに以下の三つに要約できてしまう。

  1. 怠惰になれ - be lazy
  2. 短気になれ - be impatient
  3. 傲慢になれ - be hubristic

そう。プログラマーの三大美徳である。本書を読んで「すごい」という人は、私の目から見ると周回遅れもいいところなのだ。しかし、この「周回遅れ」というのが、多くのプログラマーが嵌まっている孔明の罠でもある。それを今から説明する。

「仕組み」に対する取り組みには、以下の三段階がある。

  1. 仕組まれる - 他人が作った仕組みの中で働く
  2. 仕組む - 自分で仕組みを作る
  3. 仕組み合う - 他人が作った仕組みを受け入れつつ、そこに自分の仕組みを組み込む。また自らが作った仕組みに他者の仕組みが入るための余地を残す。

本書の狙いは、1から2へと移行にあり、その点に関して言えば本書は実によく書けている。類書は多いが、その類書の中ではベスト3に入るだろう。しかし、1から2への移行というのは実は難易度はそれほど高くなく、プログラマーになれた人ともなれば、すでにそれを達成する能力が備わっていると言っても過言ではない。

だからこそ、さらにその次の段階、「仕組み合う」があることに気がつきにくい。気がつかないから他者を見下しがちになり、見下すからこそ、仕組み合いの誘いも見落としてしまい、機会を逸してしまう。策士策に溺れる、というより策士であるが故に策を見落とす、といったところか。

ディスカヴァー社は、この「仕組み合い」が最も上手な出版社の一つである。それが昨今のベストセラーラッシュに繋がっているのだろう。私はディスカヴァー社の「仕組み」に献本等を通して「仕組まれている」と同時に、書評の形でディスカヴァー社を「仕組んで」いる。一方的に仕組まれるのは悲劇であり、それにすら気がつかないのは喜劇であるが、仕組み合いは双方にとって楽であり楽しい。

とはいえ、仕組みは基本が大切。「仕組み」がわかっているつもりの人も、まずはだまされたと思って本書をチェックしてみよう。以外な見落としがあるかも知れない。見落としがなければ、本書のさらに上を行くことを考えてみよう。本entryのようにそれを書評化するのもいいかも知れない。

それが、私の仕組みの要約。

Dan the Blogrammer