双方とも、ディスカヴァー社一同より献本御礼。
うーん、困った。
両書ともなかなかの好著で、しかも両方併せて読むと1+1≫2となってますますいい。
のだけど、一冊で両書の合計を上回るものがすでに存在しているのだ。
〈ビジネスマンのための「発見力」養成講座〉および〈ビジネスマンのための「数字力」養成講座〉は、ビジネスマンの、ビジネスマンによる、ビジネスマンのための「観察力」養成本。
「ビジネスマンのための「発見力」養成講座」目次 - Discover: ショッピングカートより- はじめに
- 発見力=ものが見える力
- 第1章 見えているようで、何も見えていない
- 第2章 関心と仮説でものが見える
- 第3章 たとえば、こんなふうに見えてくる!
- 第4章 見える力を養う方法
- 1 ほかの人より少しよけいに勉強する
- 2 新聞を読む
- 3 ふつうのものをたくさん見る
- 4 問題解決を極める
- 5 関心の幅を広げ、深める
- 6 思想を持つ
- 第5章 ものが見える10の小さなヒント
- 1 先に要点を知る
- 2 ヒントを先に得る
- 3 分解する
- 4 情報を減らす
- 5 気づいたことをすぐメモする
- 6 比較する
- 7 一部を取り替え
- 8 視点を変える
- 9 複数で話す
- 10 素直になる
- おまけ ものが見える人は幸せになれる
- あとがき
- はじめに
- 第1章 「数字力」で世の中の見え方が変わる!
- 第2章 「数字」の見方 七つの基本
- 1 全体の数字をつかむ
- 2 大きな数字を間違わない
- 3 ビッグフィギュアを見る
- 4 大切な小さな数字にはこだわる
- 5 定義を正確に知る
- 6 時系列で見る
- 7 他と比較する
- 第3章 数字力を阻害する六つの罠
- 1 主観の罠
- 2 見え方の罠
- 3 常識の罠
- 4 統計の罠
- 5 名前の罠
- 6 思い込みの罠
- 第4章 数字力が高まる五つの習慣
- 1 主な数字を覚える
- 2 定点観測をする
- 3 部分から全体を推測する
- 4 数字を関連づけながら読む
- 5 常に数字で考える
- 付録
- これだけ知っていれば、世界が見える! 会社が見える!
- 最強ビジネスマン必須マクロとミクロの数字 20!
- あとがき
目次を見ての通り、「発見力」は定性的な、そして「数字力」は定量的な観察力の養成を狙っていることがわかる。双方とも目次を見ただけで「ビジネス書かくあるべき」という構成力が伝わってくる。中身もそれを裏切らない。
しかし、それと同時に、こうも感じたのは確かである。
「ビジネスって、ちょろい」。
なんといっても、出てくる数字はたかだか兆のオーダー。それも四則演算で出せるものばかり。
科学で要求される観察力に比べれば、双方ともものの数ではない。
それゆえ、両書を足してもなお、「数に強くなる」一冊に及ばない、というのが正直な感想であった。なぜなら、「数に強くなる」は用途をビジネスに限定しておらず、その分定性的な観察も定量的な観察もより広くより深いのだ。やはり観察力に関しては、「ビジネス」より「サイエンス」の方が上である。もっとも、「数に強くなる」はどちらかというと「サイエンス」よりも「エンジニアリング」であるのだが、しかしサイエンスとエンジニアリングは、我々の「目」と「手」であり、それらを使うという点では「ビジネス」と同じく「業」である。
ビジネス書ばかり読んでいては「勝てない」理由が、そこにある。ビジネスは所詮人々の所行。自然には敵わない(というより、自然のごく一部)。あえて問題を一般化することで特定の問題を解くというのは科学の十八番。そこから学ばない手はないのだ。
そういうのを、教養というような気がする。なぜか世間では「教養」というと文学や歴史といった文系の知識が連想されるようなのだけど、今もっと必要なのは、理系の教養なのではないか。ビジネス本はその意味で必要充分すぎる。そこから得られる知識で「負けない」戦いは出来るけど、「勝つ」ためには一段の飛躍がいるのだ。
そんなわけなので、干場社長、理系教養本を作りませんか?機は熟していると思いますよ。ブルーバックスが独占していたこの分野に結構他の新書が蚕食している昨今だけど、まだディスカヴァーが手をつけていないのが不思議。
というわけで、最後は
ディスカヴァー社長室blog: フェルミ推定問題!とビジネスマンのための「数字力」養成講座のカバーの色 ●干場このところ、学生さんや一般の人に、出版書店業界の初歩の初歩みたいなお話をする機会がよくあって、最初に、では日本の全書店の雑誌と書籍の売り上げはいくらでしょう? みたいなクイズ(?)を出します。
1 200億円 2 2000億円 3 2兆円 4 20兆円 5 200兆円
の返事として、問題で本entryを締めくくることにしよう。Arthur C. Clarkeの追悼もかねて。
- 地球の静止軌道の高度を求めなさい。
- 火星の静止軌道の高度を求めなさい。
- 火星に軌道エレベーターを作る際に一つ問題となるものがあります。それが何か答えなさい。
- あなたなら、それをどう解決しますか?
なお、求めた際にはその根拠も述べなさい。数字だけの答えは不合格とします。
Dan the Number Cruncher
にハッとしました。
早速、「数に強くなる」を読んでみます!