技術評論社稲尾様経由で著者より献本御礼。
初出2008.04.03;販売開始まで更新
ソフトウェアの受託開発というものに書かれた日本語の本としては、今まで読んだ中で最も誠実に書かれた本であるように感じた。
それだけに、それらの本に関する不満がかえってふくれあがってしまったのもまた偽らざる心境である。
本書「受託開発の極意」は、SIerの雄、永和システムマネジメントに勤める著者が、受託開発についてまとめた一冊。「WEB+DB PRESS plusシリーズ」の一冊でもある。
目次 - 『受託開発の極意』amazonで予約開始! - TECH-moratorium : テクモラトリアムよりより詳細な目次が 受託開発の極意 ―― 変化はあなたから始まる。現場から学ぶ実践手法(WEB+DB PRESS plusシリーズ)|gihyo.jp … 技術評論社 に
本書は、そんな永和さんの秘密を包み隠さず教えてくれる。
しかし、本書には一つ決定的に書いていないものがある。
何を作ったか、だ。
これこそが、私の一番の不満なのだ。
これは、本書に限ったことではない。受託開発について日本で語られた本全てに共通している問題である。
404 Blog Not Found:書評 - アジャイルレトロスペクティブズ「レトロスペクティブの女神」?で、女神様方は何をお作りあそばせになったの?
という不満が、本書でもつきまとう。
これは、なぜ
受託開発の極意 ―― 変化はあなたから始まる。現場から学ぶ実践手法(WEB+DB PRESS plusシリーズ)|gihyo.jp … 技術評論社経済産業省の調査によると,日本のソフトウェアエンジニアの大多数は受託開発を行っています。「ソフトウェア業」の約85%,「情報サービス業」全体で見ても約45%は受託開発です。
であるにも関わらず、受託開発というのがそれに相応しい存在感を示せないでいるかの根源的な理由でもあるのだ。「どう」作るかは公開しても、「なにを」作ったかは公開しない。日本の受託開発にまつわる最大の謎がこれなのである。
これは、ソフトウェア受託開発の常識かも知れないが、開発においてはむしろ非常識である。建築であれば、誰が発注し、誰が設計し、誰が施行したかというのはよほどの場合を除けば明らかで、少なくとも元請けが誰かはそうである。
だから、よきにつけあしきにつけ、建築というのがどんな仕事なのかというのはイメージしやすい。どこかの建設会社のCMに「地図に残る仕事です」というものがあったが、そのおかげで部外者でも建築に関しては、具体的な作品を見ながら論じることができる。「ここがいい」「ここが悪い」「ここが安い」「ここが高い」といった具合に。
それでは、ソフトウェアではどうか、といえば、少なくともオープンソース開発は作品も行程も公開されている。また、自社開発した製品であれば、パッケージソフトであれWebアプリケーションであれ、製品の開発行程は非公開でも製品そのものが公開されている。
なぜ、SIerが「なにを」作ったのかを公開しないのか、それが私には不思議でならない。同じくソフトウェアを開発するものとして、納得が行かない。もちろんNDAの壁はある。私でさえ、開発に携わった事実そのものを公開できない案件をいくつか手がけて来た。しかし誰がどの案件を手がけたかすらデフォルトで非公開というのは理解に苦しむ。
よしんばそれを公開しないとしても、本書のような書物のために、モックプロジェクトを用意するのは可能だったはずだ。たとえば「発想する会社! (The Art of Innovation)」では、ショッピングカートを取材陣の目の前で開発していた。
日本の受託開発には、HowはあってもWhatがない。
これでは誤解するなという方がおかしいではないか。
「Webに残る仕事をしたんだよ」という権利は、SIerにだってあるはずだ。ソフトウェア開発という仕事が、土木開発程度には部外者に理解されるには、「どう」はさておき「なに」を見せるのが先ではないか。「なに」がなくてなにがものづくりなのだ!?
まずは何を作ったのか、それを語ってくれ。ものづくりをしていると主張するのであれば。
Dan the Codesmith
確かにないです。仕事しながらそう思います。
HPで、取引先を列挙する中小のソフト会社が
多いのかな?という気もします
企業向けシステム(成果)を家族に説明するのに苦労します。
建設のように、作成したものがまだわかりにくいのも
影響しているんじゃないでしょうか。その場所にいけば
見えるってものではないですし。。
この本はいい本であることは間違いないなと思います