タカ派はハト派より強そうだ。マッチョはウィンプより強そうだ。

なのになぜ世の中はタカ派やマッチョばかりにならないのだろうか。

それに答えてくれるのが、Evolutionarily stable strategy = ESS(進化的安定戦略 - Wikipedia)だ。

見てのとおりWikipediaにも日英双方のページがあるのだけど、どちらもわかりやすいものとは言えない。今まで見つけた解説の中で一番わかりやすいものが「生態系ってなに?」にあったので紹介する次第だ。

P.135
そこで、自然淘汰に関する「弱肉強食」のイメージの払拭にとりかかりましょう。自然淘汰は「強いものが生き残る」というイメージがありますが、たとえば、進化の上で闘争的な形質の方が生き残りやすいでしょうか?
ここで登場するのが英国人ジョン・メイナード・スミスによるタカ・ハトゲームの思考実験です。

これは以下のようなゲームだ。

  • タカ派どおしが戦った場合、勝者に50ポイントが与えられ、敗者は100ポイントを失う。
  • タカ派とハト派が戦った場合、タカ派が必ず勝利して50ポイントを得て、ハト派はすぐに退散してポイントは±0
  • ハト派どおしが戦った場合、お互いに平和のディスプレイのために10ポイントを費やし、勝者のみが50ポイントを得る。

まずハト派しかいない状況を考える。この場合、各ハトの平均獲得ポイントは、((50-10)-10)*0.5=15ポイント。次にタカ派しかいない状況を考える。この場合、各タカの平均獲得ポイントは、(50-100)*0.5=-25ポイント。タカ派だけの状況というのは、ハト派しかいない状況よりも不利だ。しかしハトに混じればタカは必ず勝利を治めるので、ある一定のところまではタカが増えるはずだ。

そうやって均衡点を割り出したのが、以下である。

勝者敗者勝率平均獲得ポイント
タカ派vsタカ派 50% Ahh =
タカ派vsハト派 % Ahd =
ハト派vsハト派 50% Add =
タカ派率 = h; ハト派率 = 1 - h
h = (Add - Ahd) / (Ahh - Ahd + Add) = %

この58.333...%というのは7/12である。

ここまでは同書にも書いてあることなのだが、ここから先が本entryのオリジナル。いろいろ数字をいじって何がわかるだろうか。

まず試して欲しいのは、ハト派どおし戦の獲得ポイントを0にした場合。早い話、ハト派が得るものが何もない状態だ。この場合でも、タカ派率は68.75%で100%とはならない。

そして、もう一つ試して欲しいのが、タカ派の勝者獲得ポイントを、敗者損失ポイントと同じ100とした場合。この場合は、タカ派が100%となる。100以上にした場合マイナスの数値が出るが、これは要するに「あり得ない」シナリオということになる。

このことから、何がわかるか。

戦いの損失が、戦いの利益を上回る限り、必ずハト派が登場するということなのだ。

そして実際のところ、戦いというのはネットでは損失が利益を上回る。仮に勝者が敗者の持分をすべて奪えたとしても、双方が戦いに費やした分だけネットでは損失ということになる。

そして、損失が大きければ大きいほど、ハト派率は高くなる。

たとえ個として得るものが何もなくとも、戦いにネット損失がある限り、ハト派が登場するというのがESSの教えるところだ。強者も弱者も、このことは覚えておいていいだろう。

なお、「生態系ってなに?」にはESSのみならず、生態系の知見が実にわかりやすく解説されている。ぜひご一読のほどを。

Dan the Evolutionary Stable Strategist

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