著者より献本御礼。書評が遅くなって申し訳ない。

良本、なのだが、「使いこなす」のが大変な本でもある。

本書〈「先読み力」で人を動かす〉は、サブタイトルに「リーダーのためのプロアクティブ・マネジメント」とあるとおり、プロアクティブとはなにか、そしてどうすればプロアクティブに行動できるようになるかを指南した一冊。

目次 - Amazonより
序 章 先読み力ってなに?
第1章 あなたの先読み力を知る
第2章 先読み力を鍛えるタイムマネジメント
第3章 メンバーが躍動するチームマネジメント
第4章 成果を生み出すミーティングはこうつくる
第5章 チーム関係者を巻き込み成功に導く
終 章 リーダーに必要な三つのこころ

それでは、プロアクティブとは何か?著者に説明していただくことにしよう。

PP. 24-25
"proactive"は「積極的に」や「1歩先の行動」、"reactive"には「受動的に」や「1歩後」の行動という解釈をすることができます。
つまり、プロアクティブかリアクティブかどうかで「歩み」に差が出るのです。この差は一歩ではありません。1歩先か1歩後だから2歩差が出るのです。

先を読んで行動する力、すなわち「先読み力」というわけである。「予測する力」と読み替えてもよい。さらに付け加えれば、「段取りの技術」とは先読み力を実践する力ということも出来るだろう。

それを養うにはどうしたらよいか、というのが本書のテーマなのであるが、率直に言うと本書は想定読者を広げすぎたあまり、詰め込み過ぎになっているところがある。

著者は「2歩差」と言っているが、実際のところ、プロアクティブに行動するにはリアクティブに行動する場合よりも必要な余力は大きくなる。なぜなら「先読み」は必ず外れるから。1歩先にあらかじめ進んでいて、そこにボールが落ちてくれば確かに2歩差となるが、実際のところは二歩先に進んでおいて一歩戻るというのがプロアクティヴィティである。いや、某歌の「三歩進んで二歩下がる」というのがその実態か。

プロアクティブに行動するには、リアクティブに行動する場合の五倍の潜在力(capacity)が必要だというのが、私の実感である。実は、そのことを著者も重々承知しており、それゆえに本書のかなりの部分が、「5歩歩けるようになるための基礎体力養成講座」になっている。本書が「詰め込み」になっている理由が、これである。

それでは、そこまでしてプロアクティブになるインセンティブは、あるのだろうか。

ある。

「5倍」というのは、あくまで最悪のケースに必要な力だからだ。そうでない場合は、潜在力と実際に行使した力が余力となる。そして余力を投資することで、個人も組織もさらに成長できる。そして先読み力が上がれば、誤差は減り、誤差が減ればそれを補正するために動く距離はさらに減る。

そう。プロアクティブという概念もまた、「損して得取れ」のヴァリエーションの一つなのだ。

ただし、一つ留意する点がある。先読み力を行使する権限と責任を持つのは、あくまでディシジョン・メーカーにあるということだ。本書で言うところのリーダーであり、組織でいうところのエクゼクティヴだ。それを無視して、「課長、それは間違っています」というのは単なる身の程知らずである。

しかしこれは、「下っ端」に先読み力が不要ということでは決してない。彼らは「組織の行方」に先読み力を行使するのではなく、「上司の行方」に先読み力を行使すればよいのである。いわゆる「デキる人」というのは、自分の立場に応じて先読み力の使い道を切り替えられる人でもある。

裏を返すと、「デキる人」といえど、いや「デキる」人であればあるほど、先読み力の行使先をきちんと示さないと困惑してしまう。著書の「知見の無駄遣い」の理由がここにある。本書の知見を有効活用してそれが報われる人、すなわちリーダーというのは商品としての本書の必要読者数に足りないのだ。

しかし、時代の風は著者の側に吹いているというのもまた事実である。先読み力が問われる立場にある人の数が昔よりずっと増えているのだ。かつてであれば、社長クラスしか問われなかった先読み力が、課長、係長のレベルでも問われるようになってきたのだ。当然想定読者もその「一歩後ろ」にいる人々、となる。

だから、こう言っておくことができる。

今は先を読めなくてもいいから、本書を読んでおけ、と。

Dan the "Proreactive"