このニュースも、昨今話題の医療崩壊も、「プロの過失」を司法が問うことそのものがはたして正しいのか、ということに尽きるのではないか。
livedoor ニュース - [日航機ニアミス事故]管制官2人に逆転有罪判決 東京高裁静岡県上空で01年、日航機同士が異常接近(ニアミス)し、乗客57人が負傷した事故で、便名を取り違えて指示したとして業務上過失傷害罪に問われた国土交通省東京航空交通管制部の管制官2人の控訴審判決公判が11日、東京高裁であった。高裁は1審の無罪判決を破棄し、籾井(もみい)康子被告(39)に禁固1年6月、執行猶予3年▽蜂谷(はちたに)秀樹被告(33)に禁固1年、執行猶予3年を言い渡した。
まず、こちら。
2008-04-12 - 弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」自らの、プロとしてあってはならないミスを上記のように言う被告人の言は、いただけないな、と思いますね。
ヤメ検、すなわち法曹以外の世界でプロに接する機会が少なかった者らしい不見識である。法曹もまた過失を犯しうるものであるが、「法のプロ」が「娑婆のプロ」と決定的に違う点に見事に配慮を書いている。
法曹は、過失を問われない。冤罪は明らかに法曹の過失であるが、それに対して刑事罰を受けた法曹というのは存在したのだろうか。私の知る限り「過失」で刑事罰を受けた検事も判事も一人も存在しないはずだが、私は法のアマチュアなので、いたら是非教えて欲しい。
かといって、私は以下にも賛同しない。
バカな裁判官が航空管制をガタガタにさせるって・・・ - NC-15正直言ってこれは無茶苦茶な判決というか。どのバカな裁判官がこんな判決下したんだろうか。
無茶苦茶な判決、というのには同意するが、これは控訴審である。そもそもなぜ検察が控訴する必要があったのかが私には不可解だ。「検察の負け」だからだろうか。そもそも起訴する必要があったのだろうか。
しかし、この件につき「誰が悪いか」といえば、つきつめれば日本が国民主権を謳っている以上、我々である、ということになる。「どう悪いか」といえば、過失とはプロ、アマを問わず、減らすことはできても無くすことは出来ないという、業種を問わず、仕事を知るものほど強く知っている知見から目をそむけていること、となる。
asahi.com:「もう管制できない」ニアミス逆転有罪、現場に衝撃 - 社会一方で、多くの犠牲者が出たり、過失が明らかだったりした場合には「刑事責任は当然」という意見が強くなる。被害者感情もある。再発防止と刑事責任追及のどちらに重きを置くか、議論を求める声が高まっている。
過失にあたって、刑事罰がほとんど役に立たず、その一方で損害賠償+事故防止策強化モデルが多大な成果を上げているのは、この事件が起こった航空業界ではすでに常識となっていると同時に、「失敗学」を通して他業種のエンジニアにも共有されつつある認識である。
もし飛行機事故をすべからく刑事罰で罰していたら、航空機はここまで安全な乗り物となっただろうか。
極論に聞こえるかも知れないが、私は業務上過失(傷害|致死)罪そのものを廃止すべきだと考えている。過失は損失ではあるが、罪とは言えないからだ。そして業務上過失罪で加害者を罰しても、被害者感情を100%納得させることは不可能である。その代わり、損害賠償を厚くし、事故防止策の導入を義務づける方が社会損失も少なくなるはずである。
プロもミスを犯す。全てのプロがそうである。だからそのミスを罪としてはならない。ただしミスによる損失は、プロの契約不履行と見なせるので、その損害は賠償するのがプロとしての責任である。プロ個人で賠償するにはあまりに大きな損失とて、業界全体であれば賠償は可能だ。保険だってある。
プロの罪は、そのミスを放置することにある。事故そのものがプロの罪ではない。事故から学ばぬことが罪なのだ。
その点において、日本の法曹業界の罪は他の業界にも増して重いのではないか。冤罪防止一つとっても、そのための具体策の導入にあれほど抵抗するのはなぜだろうか。
しかし、その罪を「放置」する一方、罪も憎んで人も憎んできたのが我々国民でもある。法曹や医師といったプロフェッショナルを「先生」と呼び、しかし事故があったら彼らを罪人扱いしているのは他ならぬ我々なのだ。プロはお上でもなければましてや神でもない。むしろ「下僕」なのだ。
「主」としてどう「プロ」を遇するべきか、主権者であれば常に考えておく必要があるのではないか。
Dan the Man to Err
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