元分子生物学専攻で、ドロップアウトを経て今IT長者(笑)のオレがきましたよ。

プログラマーに比べ、バイオ研究者に飛び抜けた才能が現れない理由のひとつ - バイオ研究者見習い生活 with IT
最近情報系クラスタの人々と接触する機会が多かったのだが、彼らの多くは
  • 楽しんでいろいろ試行錯誤して、意識しないままスキルが向上した
のだろうな、という印象を持っている

たしかにそのとおりで、

うらやましいことこの上ない。

というのもわかるけど、しかしちょっとまってちょんまげ。

リアルと直結する分野では、それでもバイオって一番進歩が速かったじゃないの。

要は仮説→実験→検証サイクルの回転速度の違いではないかと。

実際、思考実験だけで済む分野では、昔も今も早熟の天才が何人も出てる。特に数学はそうで、ガロアとかアーベルとか。理論物理学なんかもそうで、白髪頭であっかんべーしている好々爺な印象があるアインシュタインだって、光電効果や特殊相対論を思いついたのは20代のとき。

ところが、同じ物理でも実験物理学だとこうは行かないのはご存じのとおり。思いつきをIn Cerebro(脳内)で発展させるだけじゃだめで、実験装置で確かめなきゃ行けない。ところが今日日ノーベル賞を狙える粒子加速器は、一つ作るのに数兆円かかる。あんまりに金がかかるというんでSSCなんかおとりつぶしになった。この時一番反対の声を大きくあげていたのはバイオな人々だったよね。

このことは科学(Science)だけではなく工学でもそう。典型的なのが核融合。もうこんな感じ。

404 Blog Not Found:マクロエンジニアリング受難世代
「核融合への挑戦」、私は新旧双方を持っている。旧版の第6章には、「実証炉が1995年、2000年には実用化」と書いてる。これが新版の20章には、「2050年ごろ実用化、これを急いで2030年ごろにできないか」となっている。

これに比べたら、バイオの世界は仮説→実験→検証サイクルがずっと高速回転している。In Vivo(生態観察)がIn Vitro(試験管内実験)になったというのはやはりでかかった。どの分野でも、仮説→実験→検証で一番大変なのは実験なのだけど、この実験のコストが飛躍的に下がった分野というのはやはり「発展」も早くなる。速度でいったら In Vivo ≪ In Vitro となるのだけど、さらに今では In Silico (コンピューターシミュレーション)が加わってさらに速くなった。だから、バイオを含めて、In Silico が適用できる分野では早熟の天才が現れてもおかしくないんじゃないか。

だけど、In Cerebro や In Silico だけですべて済むわけじゃない。In Vitro も In Vivo も必要なわけで、こういう分野でがんばっている人たちというのはほんと尊敬する。新旧「核融合への挑戦」の著者の吉川先生とか、堪忍袋が磁気でできてるんじゃないか。

ダーウィンが種の起源を書いたのって、たしか50歳の時。むしろ「ウサギ」ばかりに囲まれている業界にいると、「カメ」でないとやっていけない業界にすごさを感じるし、他の自然科学にくらべたら、バイオってよっぽど「ウサギ」的じゃないの。

Dan the Impatient