英治出版の松本および竹井両氏より献本御礼。
邦題に「奇跡」とあるが、本書は断じて奇跡ではない。軌跡である。
P. 54我々の孫の世代は、貧困については博物館で知るようになるでしょう。
その孫の世代へと至る、軌跡。
DIPシリーズの一環でもある、本書「グラミンフォンという奇跡」の原題は"You can hear me now"、直訳すると「私の声がきこえますね」だ。どんな声が乗っているか?副題の"How Microloans and Cell Phones are Connecting the World's Poor to the Global Economy"がそれに答えている。「マイクロローンと携帯電話はいかにして世界の貧困層を世界経済につなげているか」。本書は、グラミン銀行でマイクロファイナンスの手法がうまく行くことを証明したムハマド・ユヌス(Muhammad Yunus)と、グラミンフォンで最貧困層こそが携帯電話の上得意であることを証明したイクバル・カディーア(Iqbal Quadir)の物語であり、そして彼らの編み出したBOP = Bottom of the Pyramid 戦略のケーススタディである。
目次 - Interdependent Planet ? グラミンフォンという奇跡 「つながり」から始まるグローバル経済の大転換それでは、BOPとはなんだろうか。ここはやはりユヌスその人に語ってもらうことにしよう。
P. 66銀行が金持ちに貸すのなら、私は貧乏人に貸す。銀行が男性に貸すなら、私は女性に貸す。銀行は大規模な融資をするが、私は小口融資をする。銀行が担保を要求するなら、私の貸し付けは無担保だ。銀行が多くの書類を求めるのなら、私は文字が読めない人でも利用しやすいローンにする。あなたを銀行に活かせるのではなく、私の銀行が村々に行く。これが私の戦略だ。銀行が何をするにしろ、私はそれと反対のことをしてきたのだ。
これは、トリクルダウン、すなわち「金持ちが増えれば、その金が貧困層にもいきわたる」の正反対にある。グラミン銀行は貧乏人に貸す。その方がローコストハイリターンだから。グラミンフォンは貧乏人に携帯電話を与える。その方がローコストハイリターンだから。
BOPの画期的だったのは、貧乏人に投資した方が金持ちに投資するよりもローコストハイリターンであることを証明したことだ。実はこのことは先進国の人間でも直感的にもわかる。時給1000円のバイトを2000円にするのはそれほど難しくない。しかし一兆円企業の売上げを二兆円にするのは並大抵のことではないしずっと時間がかかる。
問題は、貧乏人は成長率において金持ちに勝っても、成長額において負けていること。投資は小口化されなければならないし、回収プロセスの数もその分多くなる。そのコストが大きいので、トータルで見ると「貧乏人に投資しても儲からない」と今まで思われてきた。しかしそれが間違いであったことを、我々はそろそろ認めなければならないようだ。ノーベル賞の選考委員たちがそうしたように。
BOP戦略の面白いところは、発展のプロセスがTOP(Top of the Pyramid)の逆であることだ。先進国においては、まず電力が普及し、次に電話が普及し、最後にパーソナルファイナンスが普及した。普及率もこの順番だ。しかしバングラデッシュでは、この逆なのだ。まずはグラミン銀行がパーソナルファイナンスを普及させ、次にグラミンフォンが携帯電話を普及させ、そして今どうやって電力を普及させようかという段階にいる。
「我々の孫の世代は、貧困については博物館で知るようになるでしょう」
我々の孫の世代は、貧困については博物館で知るようになるでしょう。
それは夢物語ではなく、可能であり、可能どころかローコストハイリターンのビジネスなのである。
Dan the Pyramid Climber

ただ、この本のように、貧困の底上げをするのは可能だと思う。
その意味で貧困を無くす事は可能だと思う。