これまで伊藤真の著作は、「夢をかなえる勉強法」、「合格のお守り」、そして「続ける力」をそれぞれの出版社から献本していただいた。お礼を申し上げると同時に、ここではあえて自腹購入したこちらを書評する。

以下の判決が出てタイムリーだということもなきにしもあらずだが、

livedoor ニュース - [イラク自衛隊]多国籍軍空輸は違憲 名古屋高裁が初の判断
ラクへの自衛隊派遣は違憲だとして、市民団体などが国に派遣差し止めなどを求めた訴訟の控訴審判決が17日、名古屋高裁であった。青山邦夫裁判長(高田健一裁判長代読)は原告の請求を却下するなどした1審・名古屋地裁判決を支持し、控訴を棄却したが、「航空自衛隊による多国籍軍の空輸活動は憲法9条に違反している」との判断を示した。

本書にこそ、伊藤真の原点があると考えるからだ。

本書「憲法の力」、法曹を目指す人のための塾、伊藤塾の塾長による憲法論。大人気の塾だけあって、専門書のみならず自己啓発書も多く著しており、献本頂いたのはいずれも後者であるが、本書は一般書かつ専門書という意味で、著者の著作ポートフォリオの要となる一冊といえよう。

目次 - 『憲法の力』になかったので手入力
はじめに
政治的なクーデターが起ころうとしている
議論することが民主主義の基本では?
憲法について話をしよう
第1章 このままで公正な国民投票ができるのか
第2章 美しい日本国憲法
第3章 そんなに九条を変えたいですか?
I 九条改憲賛成派の論理について
II 日本国憲法がめざす平和主義)
おわりに
「改憲」ではなく「壊憲」
戦争に加担したくない
矛盾に苦しむ中で憲法に出会った
ピンチはチャンスだ

著者は護憲派というより立憲派であり、その立場から憲法は何かを論じた上で、日本国憲法の特長を述べている。こうした「基本に忠実に」「急がば回れ」というのは著者の基本姿勢であり、それゆえ著者の他の本を読む際にも本書を最初に読むのが「最短距離」であるといえる。著者のやり方が「是」であることは伊藤塾の人気からも伺い知ることが出来るし、私自身の経験と照らし合わせても納得がいくところだ。もし私が日本の法曹を目指すのであれば、私も塾生になっていたと思う。

しかし、私は著者の言うところの「憲法の力」をゼロ査定しているという点において著者とは異なる。

404 Blog Not Found:叡智の値段
まずは質問です。叡智(wisdom)の値段(price)って幾らでしょう?ここでは「今まで人類が貯めてきた叡智すべて」ということにします。

100兆円?1000兆円?1京円?

答えは、マクドナルドのスマイルと同じ、0円です。

どんなに素晴らしい憲法でも、使わなければただの箇条書きに過ぎない。そして日本における憲法というのはただの箇条書きに近い扱われ方をしている。著者はこのことを嘆いているが、それならば「こう使え」という提案をするべきなのだ。その点において「逆接の民主主義」は画期的な一冊だったと思う。あれほど「クリエイティブ」な九条の使い方の提案というのを初めて見た。

日本において、憲法というのは実に使われていない。違憲判決の珍しさがそれを証明している。「使いにくいから使わない」というのは立法・司法・行政の三権の怠慢なのだが、有権者もこの状態を当然のものとして受け止めている。これは「法治国家」であれば異常事態なのだが、それでも「何とかなってきた」点もまた、日本の特徴なのではないか。

本書で一番ページ数を割かれているのは、憲法第九条なのだが、むしろ憲法について語るのであれば、この「特異点」よりも他国憲法との「共通点」をもっと語るべきだったのではないだろうか。たとえば....

P. 63

そこで、国家が国民の自由や権利を不当に侵害してトンデモナイことをやらかさないように、あらかじめ歯止めをかけておくために「憲法」があるのです。

憲法は、国家権力を制限して国民の人権を保障するものであり、国民が守るべき法律ではありません。

これに賛成したいところであるが、現行の日本国憲法は、ご存じのとおり国民の義務もいくつか定めている。私にしてみるとこれは「法律による憲法の汚染」であり、実に看過しがたい。その他現行憲法は本来法律--国家権力により国民を制限する法--に分類されるべき項目が多すぎて(例えば1-8条)、かえって憲法の理念を損ねている。これらの点をきちんと指摘しないで、憲法第九条の特長を述べたのであれば「立憲派」として認められるのであるが、本書は現行憲法の問題点の指摘が欠落している以上、「護憲派」と見なされるのは仕方ないのではないか。

とはいえ、長期的な傾向として、日本も「憲法を使う国」になってきたようには感じている。今回の違憲判断を

違憲判決 - 元検弁護士のつぶやき
お辞めになる前の最後の裁判だったわけですね(^^)

という法曹は、もう一度自分達の上には憲法があるのだということに思いを致すべきだろう。また、有権者も法曹による憲法蹂躙に対してもっと声を上げるべきだろう。

せっかくの憲法である。お互いもっと活用したらどうか。

Dan the Coder

献本御礼
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夢をかなえる勉強法/合格のお守り/続ける力