英治出版の松本および竹井両氏より、「未来をつくる資本主義」とともに献本頂いたもの。
初出2008.04.20; 販売開始まで更新
これで、「未来をつくる資本主義」、「ワールドインク」とあわせて、「三部作」が完結することになる。
本書「ディープエコノミー」は、「未来をつくる資本主義」が提示した問題を、ボトムアップで解決する例を集めたもの。トップダウンの例が「ワールドインク」。原著ではそれぞれ独立した書かれたものを、こうしてDIPシリーズの三部作にまとめるというのは英治出版のアイディアだと思われるが、なかなか秀逸である。
目次 - Amazonより- はじめに
- 第一章 拡大の果てに
- 第二章 食から見えてくる経済
- 第三章 失われた絆
- 第四章 地域に芽生える力
- 第五章 持続可能な未来へ
- おわりに
「経済が何のためにあるのか」、いま一度その意義を見直すことによって、人類にとっての「幸福」をも再確認できる1冊。
「経済が何のためにあるのか」、まず、この著者の問題意識がある。
P. 25私は、ここアメリカと世界で、公平に富を配分するべきだという平等の意見には賛成だ(実際、もし感秦ごとが成長だけなら、加速させる最良の方法はもっと公平に所得を再配分することだ。それについては説得力のある証拠がある)。そして、いくら指導者が強調しようとも、私たちはこれまでより裕福にはなっていない。そう肝に銘じておくことがきわめて重要だ。それが世の中の、直感には反しているが確固たる事実の一つであり、本書のあちこちで私の主張を支えている。成長は断じて、大部分の人を裕福にはしていない。
私自身の経験も、これは是である。私の財産は確かに増え、財産が少なかった時よりも「幸せ」にはなっているが、財産の伸びほど「幸せ」の伸びは大きくない。経済成長は、その果実にありつけなかった人はもちろん、その果実を受け取った人ですら裕福にしていないと言わざるを得ない。
しかし、著者が提示するのは、富の再配分ではない。富の再構成である。
しかし私はいつまでもこの点について論じるつもりはない。なぜなら再配分の計画は、いかに懸命で道徳的でも、成長第一の効率性重視型経済が直面している対処するにはあまり役に立たないからだ。
それでは、どうするべきか。それが本書の主題である。是非本書で確認してほしい。
本書は、今回の「三部作」の中では、もっとも「刺さる」表現が多かった一冊であった。たとえばあの広大なアイダホ州に、ポテトを生産する農家のニッチがわずか600しかないというのは、「なにかどこか間違っている」という例の一つに過ぎない。本書にはこうした「成長が裕福につながらない例」というのがこれでもかこれでもかと登場する。
この問題に対する本書の代案は、それらを加味してもなおナイーヴに見えはする。しかし、検討に値する案ではあると感じる。重要なのは「たった一つの冴えたやり方」を見つけることではないし、おそらくこの問題にはそういう回答はない。しかし「冴えないけど今のやり方よりましな何百ものやり方」を、それぞれがそれぞれのやり方で実現することは可能であり、本書にはそうした「数々のやり方」がいくつも紹介されている。
誰のための経済なのか。
考え続けるに値する課題ではないか。
Dan the Deep Economist

トラックバックさせていただきました。
「誰のための経済か」簡単に解が見つからないからこそ、考え続けるに値するテーマだと思います。