いかんいかん。どうしても献本された「文系本」の書評率が高い。ちゃんと自腹購入の理系本も書評しなければ。
子供でも読めて、大人でもたのしめるまさに良著。
本書「葉っぱのふしぎ」は、タイトルどおり一冊まるごと葉っぱの本。
目次 Si新書『葉っぱのふしぎ 緑色に秘められたしくみと働き』概要 (サイエンス・アイ新書Web)
|
|
大気中の酸素は植物が作っていることは小学校でも習う(はず)。それに「光合成」という名前がついていることは中学生で習う(はず)。光合成全体の化学反応が
6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2
であることは高校で習うはず。さらに生物を選択していれば、光合成の酸素が二酸化炭素ではなく水由来であることも習うはず。
しかし、葉っぱの仕事はそれだけではない。確かに光合成は葉の最も重要な仕事であるが、それでは、なぜ風台風が去った秋にサクラが一斉に狂い咲くのかは説明できない。本書に出てくる最初の問題である。
本書は、光合成から落葉まで、葉というシステムを、「葉っぱの視点」から描いた一冊。植物に詳しい人であれば、地球温暖化の元凶として削減が求められているCO2が、植物にとっては「息切れ」するほど低い濃度であることをすでにご存じかも知れない。しかし著者にかかると、それがこうなる。
P. 169「大気中の二酸化炭素の濃度が上昇している」といっても、0.04%以下です。この濃度は、カップ一杯の中に、ただの二滴だけミルクを入れた濃度と同じです。
こうしたわかりやすい表現に加え、本書はサイエンス・アイ新書というメディアの特性をフル(カラー)に活かしていて実に読みやすい。私は科学マニアということもあって、本書に出てくることはあらかた知っていたが、それでもなお楽しめた。
それにしても、葉っぱはすごい。
P. 92現在の科学は1枚の小さな葉っぱがしていることを真似することが出来ないのです。
確かに、太陽光からエネルギーを取り出す技術を我々は持っている。しかし太陽電池を作るには大がかりな工場が必要で、そこから取り出せるのはあくまで電気であり、しかもそれを保存するのは今でも大変かつ非効率だ。あんな薄っぺらなところでそれをでんぷんの形にするという芸当は未だ我々には出来ない。ましてや、葉は自己増殖してくれるのだ。
私たちは、植物の前には謙虚になって、植物から多くのことを学ばねばなりません。
千円でこれだけ学べるのだから、なんともありがたい。そうそう。本書がわずか千円で収まっているのも、本書が紙という、まさに光合成で出来た材料を原料としているからでもある。
我々の科学技術は、いつになったら植物に追いつくのか.....
Dan the Heterotroph

このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。