いかんいかん。どうしても献本された「文系本」の書評率が高い。ちゃんと自腹購入の理系本も書評しなければ。

子供でも読めて、大人でもたのしめるまさに良著。

本書「葉っぱのふしぎ」は、タイトルどおり一冊まるごと葉っぱの本。

目次 Si新書『葉っぱのふしぎ 緑色に秘められたしくみと働き』概要 (サイエンス・アイ新書Web)
第一話 葉っぱがおこしたミステリー
ミステリーの真相は?
台風がおこした奇跡の出来事
サクラのツボミは、いつできるか?
なぜ、秋にサクラの花が咲くか?
台風による葉っぱの災難
「台風のあとに、サクラの花が咲く」という予言
なぜ、台風のあとにサクラの花が咲いたのか?
第二話 時を刻む葉っぱ
なぜ、春に花咲く植物が多いのか?
暑さ、寒さの訪れを予知する方法は?
正確に夜の長さを刻む/時計を狂わされたら?
ガーナーとアラードの実験
どこで、夜の長さをはかるのか?
フロリゲンは幻の物質か?
第三話 光の色を見分ける葉っぱ
真っ暗な中で、葉っぱは何色か?
3色の光を混ぜると?
なぜ葉っぱは緑色か?
3つの応用問題に挑戦!
緑の葉っぱに感謝
葉っぱの性質
緑色の正体は?
疑り深い疑問
緑色光の寄り道とは?
緑色光が寄り道しない葉っぱとは?
第四話 働き者の葉っぱ
葉っぱの仕事/1粒が何粒になるか?
科学は1枚の葉っぱに及ばない
人間はどのように気づいたか?
物議をかもしたプリーストリーの実験
有名なザックスの実験
エンゲルマンの巧みな実験
ブラックマンの鋭い洞察力
酸素は何から発生するのか?
真っ暗な中での光合成とは?
クロロフィルに強い光を与えると?
第五話 葉っぱのパワー
「緑のカーテン」
「緑のカーテン」は一石何鳥か?
葉っぱの汗を見る/葉っぱは孔だらけ
葉っぱは水の浪費家か?
植物は動物より水不足に弱いか?
世界一背の高い樹木
水を吸いあげる仕組み
切り花を長持ちさせるには?
葉脈の張りめぐり方は?
葉脈標本のつくり方
第六話 葉っぱの悩み
動物に食べられたら?
植物にもホルモンがある
「食糧かエネルギーか」
大気中の二酸化炭素の濃度
二酸化炭素を取り込む方法は?
「二酸化炭素をもっと吸いたい」
葉っぱの呼吸
光の中での呼吸をどうしてはかるか?
光呼吸は何のために?
第七話 葉っぱの運動
刺激を伝えるオジギソウ
葉っぱが閉じると、いいことがあるのか?
「熱い!」という刺激は伝わるのか?
眠らせなかったら枯れる」は誤り!
葉っぱの中でおこる運動とは?
青色光だけを吸収する色素とは?
気孔を開ける光の色は?

大気中の酸素は植物が作っていることは小学校でも習う(はず)。それに「光合成」という名前がついていることは中学生で習う(はず)。光合成全体の化学反応が

6CO2 + 12H2O → C6H12O6 + 6H2O + 6O2

であることは高校で習うはず。さらに生物を選択していれば、光合成の酸素が二酸化炭素ではなく水由来であることも習うはず。

しかし、葉っぱの仕事はそれだけではない。確かに光合成は葉の最も重要な仕事であるが、それでは、なぜ風台風が去った秋にサクラが一斉に狂い咲くのかは説明できない。本書に出てくる最初の問題である。

本書は、光合成から落葉まで、葉というシステムを、「葉っぱの視点」から描いた一冊。植物に詳しい人であれば、地球温暖化の元凶として削減が求められているCO2が、植物にとっては「息切れ」するほど低い濃度であることをすでにご存じかも知れない。しかし著者にかかると、それがこうなる。

P. 169
「大気中の二酸化炭素の濃度が上昇している」といっても、0.04%以下です。この濃度は、カップ一杯の中に、ただの二滴だけミルクを入れた濃度と同じです。

こうしたわかりやすい表現に加え、本書はサイエンス・アイ新書というメディアの特性をフル(カラー)に活かしていて実に読みやすい。私は科学マニアということもあって、本書に出てくることはあらかた知っていたが、それでもなお楽しめた。

それにしても、葉っぱはすごい。

P. 92
現在の科学は1枚の小さな葉っぱがしていることを真似することが出来ないのです。

確かに、太陽光からエネルギーを取り出す技術を我々は持っている。しかし太陽電池を作るには大がかりな工場が必要で、そこから取り出せるのはあくまで電気であり、しかもそれを保存するのは今でも大変かつ非効率だ。あんな薄っぺらなところでそれをでんぷんの形にするという芸当は未だ我々には出来ない。ましてや、葉は自己増殖してくれるのだ。

私たちは、植物の前には謙虚になって、植物から多くのことを学ばねばなりません。

千円でこれだけ学べるのだから、なんともありがたい。そうそう。本書がわずか千円で収まっているのも、本書が紙という、まさに光合成で出来た材料を原料としているからでもある。

我々の科学技術は、いつになったら植物に追いつくのか.....

Dan the Heterotroph