早川書房小都様より献本御礼。
初出2008.05.03; 販売開始まで更新
ああ、やっと紹介できる。
あのベストセラーが、ついに日本語で読めるのだ。
本書「人類の消えた世界」は、文字通り、たった今この瞬間に人類がこの宇宙から消えたら、地球はどうなっていくのかを、現在の科学の知見をめいっぱい駆使して演繹してみた一冊。実は一ヶ月以上前に見本を頂いたのだが、挿絵付きの完成版はやはり迫力が違う。
目次 - アラン・ワイズマン『人類が消えた世界』@ハヤカワ・オンラインより- はじめに サルの公案
- 第1部
- 1、エデンの園の残り香
- 2、自然に侵略される家
- 3、人類が消えた街
- 4、人類誕生直前の世界
- 5、消えた珍獣たち
- 6、アフリカのパラドクス
- 第2部
- 7、崩れゆくもの
- 8、持ちこたえるもの
- 9、プラスチックは永遠なり
- 10、世界最大級の石油化学工業地帯
- 11、二つのイングランドに見る農地
- 第3部
- 12、古代と現代の世界七不思議がたどる運命
- 13、戦争のない世界
- 14、摩天楼が消えた空を渡る鳥
- 15、放射能を帯びた遺産
- 16、大地に刻まれた歴史
- 第4部
- 17、ホモ・サピエンスは絶滅するのか?
- 18、時を超える芸術
- 19、海のゆりかご
- おわりに 私たちの地球、私たちの魂
人類がどうやって滅んでいくかを描写した作品はそれこそ無数にある。著名なSF作家であれば、一作や二作はそういった作品を持っている。特に小松左京は、「復活の日」をはじめ、滅亡モノの第一人者だ。筒井康隆の商業誌デビュー作、「幻想の未来」もこのテーマだった。最近のラノベでは「人類は衰退しました」もこのジャンルに分類できるだろう。
また、人類が滅亡した、あるいは地球を去った後の遠い未来の地球を描いたものも、「滅亡モノ」ほど多くはないが、Dougal Dixonが手がけている。「アフターマン」は「みんなのうた」になるほどヒットしたし、「Future is Wild」は映像化もなされている。
このとおり、滅亡前夜と滅亡の遥か後に関しては多くの作品があったのに、なぜか滅亡初日からその後を追った作品はなかった。
本書は、まさにそれである。
本書の成功は、その着想を得た時点ですでに約束されていた。あとはそれを着々と完成させるだけだったはずだ。
その完成度は?
タイトルで述べた通りだ。これこそ、まさに文明の九相詩絵巻。そこには滅びの前のパニックというカーニバルもなければ、5000万年後の生物のようなエキゾシズムもないが、見た物の目を捉えて離さない、透徹したリアリズムがある。
これ以上の説明は、不要である。
ただ、眺むるべし。
Dan the Mortal
追記:
本書はこの番組の種本?
Via:人類滅亡−LIFE AFTER PEOPLE− - HPO:機密日誌 History.Channel.Life.After.People.aviただし、本書の方が"Life After People"よりもcomprehensiveだった(特に時間軸)。両方併せてみるべし。
「The World Without Us」という原題は素敵ですね。
「The Balck Swan」を読み終えたらこちらを読むことにします。