洋泉社依田様より献本御礼。なぜか二冊も献本されてきた。
良著。「国語算数理科しごと」と、簿記の参考書のギャップをつなぐ位置に本書はある。本書をきっちり読み込めば、簿記三級なら受かるかも知れない。
のだけど、個人的には本書のスタイルにちょっと引っかかった。
本書「会計のルールはこの3つしかない」は、巷でかなり増えてきた、「会計の基礎」本のうちの一つ。
目次 洋泉社 | 会計のルールはこの3つしかないを増補- はじめに 会計のルールはたった3つだった
- 第一章 会計の基本原理と財務3表を理解する
- STEP0 金を出した人に分かりやすく報告する - 会計の目的
- STEP1 稼ぐのにいくら遣ったか - 費用と収益の対応
- STEP2 商売が続くとどうなるか - 期間損益計算
- STEP3 町内会方式の会計ではどうしてダメなのか - 信頼関係の強さが会計の中身を決める
- STEP4 費用はいつ発生するか - 発生主義会計
- STEP5 大きな収益はどのように配分するのか - 費用配分の原則
- STEP6 現金の出入りを記録する - 現金出納帳がその基本
- STEP7 4分割でカネやモノの流れを考える(1) - 出金も入金もさらに分割する
- STEP8 4分割でカネやモノの流れを考える(2) - "ぱなし"で区別する理由
- STEP9 4分割でカネやモノの流れを考える(3) - 貸借対照表と損益計算書
- STEP10 カネは流動物! - キャッシュフロー
- STEP11 キャッシュはどおように増えたり減ったりするのか - キャッシュフロー計算書のつくり方
- 第二章 簿記の流れはこうなっている
- STEP12 似たような項目はまとめる - 勘定科目
- STEP13 簿記の流れを把握する(1) - 仕訳のしくみ
- STEP14 簿記の流れを把握する(2) - 期間の仕訳
- STEP15 簿記の流れを把握する(3) - 残高試算表
- STEP16 決算書とは何か - 「財務3表」のつながり
- 第三章 会計ではこのポイントが重要になる
- STEP17 一気にドカンと費用にしない - 固定資産の減価償却
- STEP18 棚卸資産とは何か(1) - 低価法
- STEP19 棚卸資産とは何か(2) - 金額の計算方法
- STEP20 売上は本当に上がっているのか - 収益の認識基準
- STEP21 これがなければ会計ではない - 企業会計原則と一般原則
- STEP22 税制度は普通の会計とは違う - 税務会計
- STEP23 税制度による決算のゆがみを調節する - 税効果会計
- STEP24 将来確実に発生する支出を見越しておく - 負債と引当金
- STEP25 できるなら計上は避けたい架空の資産 - 繰延資産
- STEP26 ブランドは資産でいいのか - のれんの償却
- STEP27 借りたふりをして実際には買っている場合 - リース会計
- STEP28 将来の退職金支払いを見越しておく - 退職給付会計
- STEP29 経営者がごまかす余地を減らせ - 取得原価主義の限界
- STEP30 資産価値の増減を見積り、反映する - 時価会計
- STEP31 固定資産の収益力の低下に備える - 減損会計
- STEP32 グループでまとめて情報を開示する - 連結会計
- STEP33 どこまで連結するか - 連結するための基準
- STEP34 会計は世につれ
- 会計の3つのルールは歴史が作った
本書の特長は、目次を見てもわかるとおり、なんといっても実践的な会計において登場する概念や手法をきちんと紹介していることにある「国語算数理科しごと」を見ても、会計の理念はわかってもそれで実際の会計を読み書きできるかというと無理がある。会計は四則演算で足りるが、理念本には加減しか出てこない。本書は減価償却をはじめ、乗除が必要なところもなぜ必要か、どう行うのかをきちんと書いてある。
その点において、
オビ「さおだけ屋」よりも
身につく、使える、
本質がわかる!
というのはウソではない。「この3つしかない」がむしろウソ。いや、ウソではないが3つでは理念は網羅できても実践は網羅できない。本書の特長は「粗にして漏らさぬ」ところにあるので、後者を強調していないのが残念ではある。200ページ弱でここまでやったのは大したものだ。
とはいえ、私がいまいち本書を好きになれなかったのが、本書のわかりやすさの源泉でもある物語仕立て。本書ではコロンブス、イザベラ女王、越後屋といった面々が繰り広げるコメディを通して会計を学ぶのだが、この人選がアカん。コロンブスといえば、私にとってはタバコと梅毒を世界中にばらまいた張本人だし、イザベラ女王といえば異端尋問の主犯。これでは感情移入できない。
むしろ、普通の現代日本の商店を舞台にした方がよかったのではないか。どうせフィクションを元にするのであれば、登場人物もそうするべきであった。
とはいえ、その分を差し引いてもこの本はよく出来ている。よくもこれだけの内容が新書一冊に収まったものだ。本書に書いてあることを一通り理解できるのであれば、自営業では充分以上である。
Dan the Bookkeeper of His Own
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