私自身、遅延学習法の実践者なのだけど、それだけにその欠点もよくわかる。

勉強が苦手な人向けの「遅延評価勉強法」 : ロケスタ社長日記
たとえばプログラムを勉強するときに、「書籍を1ページ目からやる」のではなく「2ch型掲示板が作りたいから必要なところを勉強する」のが遅延評価勉強法になります。

その欠点を上げる前に、なぜ遅延学習法の効率がいいのかを考察しておくことにする。

遅延学習法がなぜ効率がいいか?理由は二つある。

  1. その問題が解けることが証明されている

    遅延学習法においては、問題が解けるかどうか自体は問題ではない。「2ch型掲示板が作りたいから必要なところを勉強する」というのは、2chそのものが問題が解けることの証明になっている。

    この「問題が解ける」というのは、受験者にとっては当然のことかも知れないが、実地においてはそうとは限らない。実際のところ、「その問題に解があるか」ということそのものが自明でない問題の方が多いのだ。

  2. うまく行ったことだけ学ぶことができる

    遅延学習法は、「うまく行った」ことの逆再生であるともいえる。よって分岐は生じない。試行錯誤がないということだ。たとえば始点から終点に至るのに二股分岐が10個あるとすると、可能な終点は1024個ということになるが、遅延学習法では「正しい終点」から出発するので、分岐は一つも存在しない。

    遅延学習法の効率がなぜよいかという理由が、ここにある。

そしてその遅延学習法の利点こそが、遅延学習法の最大の欠点である。

遅延学習法では「そこに至る過程がはっきりとした」「すでにうまく行くことがわかっていること」しか学べないのだ。そのどちらかが欠けてもダメである。例えばワイルズの証明以前には、フェルマーの大定理(当時は大予想)を遅延学習法で学ぶことは、証明がないので当然不可能である。また、「うまく行く」という証明があっても、過程がはっきりとわかっていないものもダメである。例えば自転車が操縦可能であることは誰もが知っているが、どうやって自転車に乗れるようになったのか筋道だって説明できるものはまだいない。自転車の乗り方を遅延学習できるのであれば、転ばずに自転車に乗れるようになるはずだが、残念ながらそうは行かない。

遅延学習できないものはいくらでもあり、そして遅延学習できるものより多いのである。

遅延学習できないものを学ぶには、試行錯誤が欠かせない。そして試行錯誤というのは、遥かに手間暇がかかるのである。

そのことは、遅延学習の価値を下げるものでは全くない。むしろ遅延学習が効くものごとは積極的に遅延学習すれば、試行錯誤が必要な問題を解くための時間も増えるのだから。

Dan the Lazy and Impatient