築地書館より、「本が好き!(β)」経由で指名献本御礼。

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200万都市が有機野菜で自給できるわけ
世界がキューバ医療を手本にするわけ
吉田太郎

面白い。実に面白い。

こういう言い方もなんだけど、北朝鮮レポートよりよっぽど面白い。

There's more than one way to run a country.

双方とも、今世紀のキューバのレポート。「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」はキューバがいかにして冷戦崩壊による食料危機を乗り切ったかを、「世界がキューバ医療を手本にするわけ」は、いかにして貧乏国が先進国なみか時にはそれに勝る医療を提供してきたかをレポートしている。

「200万都市が」の方は400ページ以上、「キューバ医療を」の方も280ページ以上の詳細なリポートなのだが、その要諦をひと言でまとめると、以下のとおりとなる。

買えなければ、自分で作ればいい。

「200万都市が有機野菜で自給できるわけ」目次 - 200万都市が有機野菜で自給できるわけより
はじめに キューバへのプロローグ 1
I 食糧危機を救ったキューバの都市農業 17
1 未曾有の経済崩壊が都市を襲う 18
2 町中を耕す市民たち 42
II 園芸都市ハバナ、かく誕生せり 57
1 軍が始めた「プロジェクトX」 58
2 都市の空き地、畑になる 76
3 有機野菜づくりの助っ人・都市農業普及員 87
4 農家に学ぶ研究員たち 100
5 コンサルティング・ショップ 118
6 人気を呼ぶ野菜直売所 131
7 危機を救った緑の薬品 153
8 都市農業の多面的な機能 169
III 緑の都市を目指して 181
1 わたしの緑計画 182
2 首都公園プロジェクト 199
3 キューバの交通革命 218
4 原発から自然エネルギーへ 230
VI 持続可能な都市を可能とする仕組みづくり 265
1 サンフランシスコの都市農業 266
2 コミュニティ・ソリューション 278
3 コミュニティ医療とまちづくり 293
4 市民社会とキューバのNPО 307
5 市場原理とのバランスを求めて 336
V 21世紀の都市は園芸化する 355
1 躍進する世界の都市農業 356
2 江戸は世界最大の園芸都市だった 373
あとがき 394
参考文献 405
「世界がキューバ医療を手本にするわけ」目次 - 世界がキューバ医療を手本にするわけより
プロローグ 〜 キューバへの誘い 10
I 群を抜くキューバの地域予防医療 25
II 外貨の稼ぎ手〜高度医療と医薬品 59
1 キューバのハイテク医療 60
2 デング熱とキューバのバイテク戦略 71
3 世界の人々のためのワクチン 84
4 恋愛大国キューバの対エイズ戦略 95
III 代替医療と電子情報ネットワーク 111
1 鍼灸、ハーブ、自然食、気功、ヨガ 112
2 キューバの医療情報革命 128
IV 国境なき医師団 141
1 被災国で活躍するキューバの医師たち 142
2 ラテンアメリカ医科大学 159
3 キューバの医療外交 174
V 持続可能な医療と福祉社会の仕組みづくり 189
1 ピーク・オイルと省エネ宣言 190
2 一二〇歳まで生きる島 201
3 格差社会解消への挑戦 216
4 今も生きるチェ・ゲバラ 237
エピローグ 237
参考文献 264
用語集 267

思い起こせば、COMECON(をを、ことえり知ってやがるの)というのは、加盟国家を「国家」ではなく「一地方」化する試みだったとも言える。そこにおけるキューバというのは独立国というより砂糖を算出する一地方。キューバはその状態に長いこといた。「カストロ兄弟による独裁国家」とはいうけれど、その実体はむしろ同じ知事が何度も選挙される日本の一地方というのに近かったのではないか。日本の長期地方政権における知事の「コアコンピタンス」が霞ヶ関とのパイプだったように、カストロの「コアコンピタンス」はソ連とのパイプだった。

この状況は、ソ連崩壊で一変する。私を含め多くの人が「キューバも長くないな」と思ったはずだ。キュバーのソ連依存度は、東欧諸国以上に高かった。ソ連というダンナがいなくなった以上、キューバが一国でやっていけるわけがない、と。

しかし、東欧が「中欧」になって西欧とゆるやかに統合していくということは、なぜか合州国が許さなかった。キューバに対するかの国の態度は、軟化するどころかむしろ厳しくなった。トリチェリ法が成立したのが1992年、ヘルムズ=バートン法は1996年である。

キューバは、自分で何とかするしかなかったのだ。

これで「独裁者」カストロが市民に放逐されれば、東欧と同じようになっていたかも知れないが、キューバーではそうはならないかった。どうなったかは、是非本書で確認して欲しい。少なくともカストロ兄弟が独裁者ではあっても圧政者でないことはわかる。

何はともあれ、キューバは、ソ連崩壊と経済封鎖を生き延びた。

そして、その様子を経済封鎖を実施している合州国ですら見直す動きが広がっている。先日DVD化されたSiCKOは「キューバ礼賛」よりも「アメリカ批判」の映画ではあるし、映画の中でアメリカ人たちが受けた治療には少なからぬ「やらせ」があったというのは事実ではある。面白い映画ではあるけど、同作はジャーナリズムというよりエンタテイメントであることは留意しておく必要がある。

「ガッキィファイター」2008年3月1日号
例えばCTスキャンは、アメリカには3,564機、日本には1万693機もありますが、キューバには合計2機しかありません。

しかしキューバの乳児死亡率が合州国より低いというのもまた事実であり、そしてキューバを手本にしようという国が増えてきているのもまた事実である。

同前
そして、合州国をまつろわぬ国が増えてきているというのも、また。

本当に注目すべきなのは「カストロ(フィデル)後」ではなく、「ラウル後」 だと私は思います。著名でなかっただけで、50年前から兄とともにラウルは革 命の指導者であり、カストロ政権の最高幹部であり続けてきたからです。

この点に関しては同感だ。キューバに限らず世界は、カストロ兄弟以前のキューバがどうだったかを覚えていない。キューバの革命が単なる「カストロ政権」だったか、「本当の革命」だったかは、当のカストロ兄弟が去った後でしか判断できないだろう。

しかし、

同前
ただし、ラウルは反米の旗を降ろすわけにはいきませんし(そんなことをしたら、ただちに暗殺されます)、民衆は異議申し立ての手段も経験もありませんから、東欧より少し(5年ほど)時間がかかると思います。

とはならないのではないか。むしろキューバは中南米という「反米大陸 」における高等教育センターとしてやっていけてしまうのではないか。少なくとも「グローバル経済」という、ソ連よりも大きな「ブロック経済」にそのまま組み込まれることをキューバー人はよしとしないのではないか。

両書を読了した後は、そんな気がする。

Dan the Islander