初出2008.05.26; 2010.02.05 文庫化のため更新

ぎゃあ、 マインドマップ的読書感想文に先を越されてる。Amazonも即日在庫が切れてるし。だが書く。著者から直接購入するルートもあるのだし。

弾言する。

自己啓発書なるものを買ったことがなかった方、あなたはラッキーです。本書一冊あればいいのですから。

自己啓発書を、まるで新しいダイエットを試すように買って読んでは「結局役に立たなかった」とお嘆きの方、その旅も本書でおしまいです。

そして自己啓発書の著者の方、本書の上梓に構想から二年かかったことに感謝しましょう。その間この世界は切り取り放題だったのですから。

本書「ラクをしないと成果は出ない」は、日垣流GTDであり、ワークライフバランシングであり、ライフハックである。日垣流ということは、文章として一流ということである。その一流ぶりは、この目次からも見てとれる。ほとんどの自己啓発本の内容は、著者サイトで無料公開されているこの目次の足元にすら及ばない。

目次 - 日垣隆公式サイト ガッキィファイターより
はじめに
第1章 基本編
1 ラクをして成果を上げるのが基本中の基本 
2 ゴールを必ずイメージしてから仕事に取りかかる
3 自分にできないことをしている人を、素朴に尊敬する
4 お金で自分の時間は買えない。他人の時間なら買える
5 「ぜひ続編を」に即対応できるよう、素材は使い切らない
6 外部の人に自分の仕事のおもしろさが伝わらなければ、それはつまらない証拠
7 よくわからなかったら現場に行って考える
8 気になったら、まず買う
9 自分に対する相手の優先順位を上げてもらうことが仕事の基本
10 全体像と個別の処方箋を混同しない
第2章 インプット編
11 「つまらない」と思ったら、できるだけ早く撤退する
12 情報収集にのめりこまない。情報とは「出合う」ものだからである
13 立ち読みは書店でなく家の中でする
14 若いうちはテーマなしで一日一冊、四〇代は一日で五冊
15 興味がわいたことは講演やセミナーに出て、全体像と情報源を一気に押さえる
16 書棚一本の本がたまったら、新しい分野を開拓できる
17 ブログを世界中の井戸端会議における、「立ち聞き」として活用する
18 ウソには必ず理由や背景がある。それを探るとインプットが効率的になる
19 発行部数数千部のメルマガや専門誌や白書類にたくさん目を通す
20 図書館に行けば行くほど「無駄遣い」になる
第3章 ネットワーク編
21 いざという集まりには万難を排して参加する
22 アイデアは他人の頭で揉んでもらう
23 メールの未処理は「なし」の状態にして帰宅する
24 会いたい人にはできるだけ向こうから望んで会ってもらうように仕向ける
25 お願いした場合は「いつでも」と言う
26 予測がつかなかったら、親しい友人と賭けをする
27 人から薦められたものは、無理をしてでも即日取り入れる
28 期待値を下げる
29 自分の実力をマッピングしておく。身の丈を知ったうえで見栄を張る
30 先輩の一言アドバイスには、とにかくまず従ってみる
第4章 撃退編
31 締切日に納品しても、返信がないような会社とは仕事をしない
32 依頼には即決で答える
33 愉しめない喧嘩は避ける
34 自爆しない
35 NGな人には説明しない。NGな人とはモメない
36 クレームは、成長に不可欠なもの(一割)と、無駄(九割)に分かれる
37 できるだけ葬式には行かない努力を
38 三日かかることは一日でやる
39 「苦手なこと」は人の手を借りて解決する
40 NG上司に煩わされない
第5章 独立編
41 本当に「良いもの」は自分で売ってみる
42 出された問題はすべてその場で解決の方向と、「いつまでに」を明確にする
43 今の仕事を30年後にもやっているかを自問。もしNOなら続かない
44 自分の仕事が黒字になっていなかったら、絶対に会社を辞めない
45 商売道具への投資はケチらない
46 最初から必ず黒字にする
47 「この社と切れたら自分がアウト」という取引先は作らない
48 「やりたいこと」を周囲に話しておく
49 「好き」を安さの言い訳にしない
50 独自の販売回路をもち、その売り上げは五年で二倍が最低ライン
第6章 継続編
51 好きな仕事を増やすために、好きではない仕事を毎年二割ずつ削除する
52 「なるほど」と思ったことは、二四時間以内に「やる」メドをつける
53 過去を振り返らない
54 「何をしないか」を明確にしてゆく
55 常に確率を意識する
56 一発屋でなく、人気(売り上げ)×継続の面積を広げていく
57 貯金しなくても良いようなキャッシュフローを、常態化する
58 問題を見つけたら、必ず即日解決の糸口を見つけておく
59 継続させる小さな工夫を
60 自由に生きるために健康を維持する
第7章 組織編
60 今いるメンバーを前提にする。「上手くいかない」のを彼らのせいにしない
62 会議や集会は、参加者全員が「待ち遠しい」仕掛けをつくる
63 自分の「忘れグセ」を前提に、「忘れても、できる」仕組みをつくる
64 共有する言葉の定義を明確にしないと、誤解が量産される
65 コーチはするものではなく、優秀なコーチに短期間「つく」のが近道
66 どれくらい時間がかかるかは先に訊く。ギャラも先に決めておく
67 インセンティブを高める工夫だけで、成果が上がる場合は予想外に多い
68 毎日仕事が終わったら、机の上と周辺を完全にリセットする
69 「約束の優先順位」を見直すクセをもつ
70 休暇中も仕事をしたほうが、のんびりできる
第8章 時間編
71 会議は一企画につき二度だけで終える
72 決裁は火曜日の午前一〇時半から、と決めておく
73 探し物は一ヵ月で合計一時間以内に
74 人を待たせない。待たされても怒らない
75 「遅刻してしまった!」を先にイメージする
76 よほどゆとりがない限り、正義に多大なエネルギーを注がない
77 レファ本の常備は時間を節約する
78 出欠を迷うイベントには行かない
79 一万円札と名刺は三ヵ所に入れておく
80 もう腕時計をしない
第9章 アウトプット編
81 ノウハウはどんどん公開する
82 「好き」をお金にしてゆく
83 「本格的に勉強したい」分野の仕事を引き受ける
84 アウトプットしないものはインプットしない
85 数値目標とその根拠を明白にもつ
86 同じネタで何度も稼がないように自戒する
87 「新鮮でおもしろいこと」は三〇秒で説明する
88 毎晩アルコールが欠かせない人は伸びない
89 相手を飽きさせず一時間話せたらお金になる
90 「必要でないこと」は極力やらない
第10章 生活技術編
91 死以外の悲劇は、一〇年後に必ず人生の肥やしになる
92 子どもができたら、「仕事で二〇年後にブレイクする」準備を始める
93 昨日と違う今日、今月と違う来月、来年と違う再来年にする
94 加齢とともに遊び時間を増やしてゆく
95 最悪の事態を想定し、その兆候が出たら動く
96 よほど親しい人以外にはプレゼントをしない
97 ドタキャンは月に一度だけ、と決めておく
98 旅行用の持ち物リストをつくっておく
99 子ども部屋より書斎を優先するのが、家族のためになる
100 大切な人は命がけで守る
おわりに

この目次だけでもかなり「腹がふくれる」コンテントだし、この目次だけで十分自己啓発できてしまう人もいるかも知れない。しかし、目次だけ見て本書を読まないのは、メロンパンの皮だけ食べて残りを捨ててしまうほどもったいないことだ。著者はこのカリカリの「皮」を7時間で焼き上げたが、モフモフの中身を仕上げるのに2年を費やしている。仕事が速い著者としては異例のことである。

そして本書のうまさは、この2年かけて作り上げたモフモフの本文にある。本書の構成は、一項目の例外もなく見出し、本文、そしてPOINT!で2ページとなっているが、本文中には最近の自己啓発書でよく目にする重要部分を太字にしたり、あまつさえ大きなフォントで強調というところが一切ない。そうする必要がないのは、文章力と構成力の賜物。プロのライターの面目躍如だ。いいことが書いてある自己啓発書は少なくない。文章がうまい自己啓発書もまた少なくない。しかし、両方を兼ね備えているものは実に少ない。どちらかというと売れる自己啓発書は前者なので、いきおい下手な文章を編集でごまかすことになるが、これは合成調味料や合成着色料に通じる下品さである。たしかに編集による強調を施すことで、言いたいことが読者に伝わりやすくはなる。しかし読書というのはTV視聴と違って著者の行っていることを一方的に受け取るものではなく、著者との対話であるはずだ。下手な強調は読者の「内なる声」をかき消してしまう。本書は自己啓発書には珍しい、しかし本としては本筋の、著者と対話できる一冊なのだ。

著者が「平凡」であるのもまた自己啓発書としてはプラスだ。

P. 2
 硬派ジャーナリズム(なのか)の世界で書いてきた者が、経営コンサルタントが書くようなビジネス書を出していいのでしょうか。
 もちろん、いいのです。「できる経営者」が「普通の社員」に向けて「ああやれこうやれ」と言っても、参考になるのは二割程度でしかありません。
 私は普通の働き手であり、独立自営業者でもあり、友人や知人に真顔で頼まれて、倒産しかけた会社を再建した"偶然"も何度かあります。売文というのは、生産者でもあり、消費者でもあり、試行錯誤の結果、私は自分で自分のメディアも同時にもって生活を安定させています。

この点においては「天才型」の著者、すなわち才能をもっていち早く世に出て成功したタイプの著者は不利である。自己啓発書というのは真似するところに価値があるのに、最も真似にくい才能がキーとなるからだ。真の天才はもとより、天才と見なされるだけで損である。たとえば勝間和代は、本を読む限りでは「努力型」であり、また成功の秘訣も才能ではなく努力と工夫、すなわち誰でも真似できることの積み重ねであるにも関わらず、史上最年少で公認会計士になったという「ハンデ」を背負っている。本書の著者には、これがない。

P. 2
作家・ジャーナリスト。1958年、長野県生まれ。大学卒業後、販売員、トラック配送係、TVレポーター、編集者など数々の職を経て、87年から執筆活動に入る。転職2回失業3回。

実は自己啓発書において、著者が「天才でない」と証明するのは難しいが、著者はそれをクリアーしている。だから本書に対しては、「どうせ私は○○さん(その本の著者)ではありませんよ」という言い訳が通用しない。その分消化吸収はよくならざるを得ないである。

それでいて、我々は「ただの人」が書いた自己啓発書は手にすることすらない。「ただの人」ではそもそもその人の真似をしてうまく行くという実証がないからだ。その点も、著者は今までの実績でクリアーしている。著者は、まさに「平凡を究めて非凡に至った」人であるのだ。

これほど自己啓発書を書くにふさわしい人が日本語圏に存在するだろうか。

それでいて、本書は「単なる」自己啓発書ではなく、「日垣隆作」である。そこにはまぎれもない著者の個性がにじみ出ている。個を損なうことなく普遍的な知識を語り、普遍的な知恵を伝えつつ個を失わない。これぞ、自由で民主的な社会(だよね?)における理想ではないか。

その日垣節の真骨頂を100番目にもってくるところがまたニクい。

100 大切な人は命がけで守る

極論してしまえば、命がけで守るほどの大切な人がいない人は、啓発に値するほどの自己がまだないということでもある。私が自己啓発本をオトナの読み物だと考えている理由がまさにこれだ。何億稼ごうが、何百万冊本を売ろうが、自己だけで完結しようとすれば余ってしまう。ラクをしないと成果は出ないが、成果を使い切るのは楽ではない。ましてや、命がけで守るほどの大切な人がいないともなれば。

だから、本書に0番目の項目を勝手につけるとしたら、こうなるのではないか。

0 まずは命がけで守りたいものを見つけよ

Dan the Inspired