洋泉社の依田様より献本御礼

なんとも「いい」タイミングの発刊だが、偽悪的なタイトルに反してなかなかの良本だった。

[プロ野球]巨人のゴンザレスに薬物違反で公式戦出場停止??livedoor スポーツ
プロ野球の根来泰周コミッショナー代行は26日、読売巨人軍のルイス・ゴンザレス内野手(28)をドーピング(禁止薬物使用)違反で、同日から1年間の公式戦出場停止処分にすると発表した。

本書「北京五輪もヤバい!? ドーピング毒本」は、スポーツにおけるドーピング(と理を入れるのは、私はむしろ「ドーピング」と聞いて半導体製造工程を思い浮かべてしまうため)に関してまとめた一冊。ドーピングに関してはブルーバックスの「ドーピング - スポーツの底辺に広がる恐怖の薬物」がよくまとまっていたが、「ドーピング=悪」というスタンスを終止とっている同書に対し、倫理的観点に関してはより中立的な本書の方が私には印象的だった。

目次 - 洋泉社 | スポーツ | 北京五輪もヤバい!?ドーピング毒本より
はじめに 現代スポーツはドーピングを抜きには語れない
FILE1 ドーピングはスポーツが生んだ鬼子だ!
FILE2 ドーピングに手を染めた五輪アスリートたち
FILE3 【インタビュー】二宮清純 ドーピングはスポーツの歴史と共に歩んできた
FILE4 プロ選手はドーピングへの誘惑とどう対峙していけるか
FILE5 衝撃の「ミッチェル・リポート」を掘り下げる
FILE6 薬物への認識が甘い「日本野球機構(NPB)」
FILE7 格闘技の世界では薬物はもはや「常識」なのか
FILE8 ディープインパクト薬物失格から考えるニッポン競馬の死
FILE9 愛甲猛の告白 私はどうしてステロイドに手を出したか
FILE10 ドーピングの争点
FILE11 【インタビュー】JADA浅川伸&田辺陽子 アンチドーピングという名の戦い
FILE12 ダイエットのためのマル禁ドーピングメソッド
FILE13 わがドーピング体験記

見ての通り、本書には「ドーピングは悪」という主張もあれば、「悪のそしりに耐えられるならいいんじゃない」という主張も混じっている。いずれの場合も、実体験が元にあるので説得力がある。どちらの結論が「正しい」というものではないと思う。これらの善悪の判断を、本書は読者に任せている。そう、「毒者」ともなりうる、あなたに。

ドーピングが悪とされる理由は二つある。一つは、それがチート(cheat)に当たること。「クスリで勝つなんてとんでもない」、というわけである。これは分かりやすいが、それでは「高地トレーニングやダイエットなど、大枚をはたいた科学的トレーニングはOKなのか」と問われると言葉に詰まる。

しかし、ドーピングにはもう一つの、よりわかりやすい悪もある。それが選手の体を破壊してしまう、ということだ。国をあげてのドーピングのあげく、性転換を余儀なくされた選手もいる。それで命を落とした選手すらいる。こうなると「ドーピングなんぼのもの」ということは言いにくくなる。しかしそれとて「この一戦のために命をかけてきた」と言われると返す言葉が見つからない。

結局、ドーピングについて考えを進めていくと、フェアとは何かという考えを推し進めざるをえない。フェア。Fair. この言葉には適当な日本語訳がない。フェアは公平でも公正でもない。フェアとは何だろうか。

実はこれをテーマにした講義を行う予定だ。私の答えはその後に披露したい。一つだけヒントを出すと、「フェアとは何か」の前に「なぜフェアがいるのか」を考えるとよい。

本書は、ドーピングを通して「フェアとは何か」を改めて考えさせる一冊でもある。「フェア」という言葉を念頭に起きつつ一読してみてほしい。

Dan the Fair Blogger