ディスカヴァー社一同より献本御礼(courtesy of Discover 21).
干場社長、お待たせしました(Thank you for waiting)。
本書、「外交官の父が伝える素顔のアメリカ人の生活と英語」は、タイトルどおり、外交官である著者がその子どもたちに日本語と英単語、時には英文でアメリカ合衆国(The United States of America)について語ったものを一冊の本にまとめたもの。
目次 (Table of Contents) - Discover: ショッピングカートより
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先ほどからやたら日本語(Japanese sentence)の後に英語(English phrases)が登場するが、これは実は本書の文体をパクった(copycat)したものである。
その著者の英語だが、いかにも外交官らしく、ほぼ正しく、そしてまぎれもなく第二国語である(formally taught as a second language)。誤解なく通じるのだが、ジモティ(natives)はそういう言い回しはしないというものが散見される。
そこが、よい。
なまじそこで生まれ育つと、どうしてもくだけた(frank)表現を使いがちであるが、それだと理解するのに本文(text)だけではなく文化的背景(cultural background)、すなわち文脈(context)まで共有していないとわからなくなってしまう。著者はあくまで日本人。こういうのもなんだが、かつて深夜TVに出てきた、英語だけうまくて頭の中身がなさそうなバイリンギャル(airheads)よりよほど好感が持てる。
それでも、形式が形式だけに、やはり説教臭さは否めない(a little too preaching)。どうせなら一方的に語る形式(speech)ではなく、親子の会話(dialogue)にすればよかったのに。息子さんは高校生ということなので、もっと滑らかな(smooth)表現も教えてもらえたのではないか。
これは、フレーズではなく文(sentence)が登場するときにより強く感じる。一例を示しつつ添削を試みよう。
P. 64庭付きのマイ・ホーム(one's own house with a garden)を持ち、おいしいものを食べ、南の島でバカンスを過ごし(spend one's vacation in a southern island)、何不自由ない生活を手に入れることはアメリカ人の夢である。
まず、「庭付きのマイ・ホーム」だが、マンション(condo)でもない限り庭が付いているのは当たり前なので、プール(swimming pool)にした方がよいだろう。日本語の表現をそのまま訳すのではなく、当地で自然な表現を日本語にした方がよい。
それよりも気になるのが"one"の使い方。これ、実はかなり鼻につく(snobbish)言い方なのだ。確かに人物不確定の時、"one"を使うのは英文法上正しく、実際辞書にも登場するのだが、実際の会話では高学歴の人しか使わない。選挙演説で確実に負ける言い回しである(Talk like that if you want to be the last one to be voted)。
これを"you"に変えるだけで、親しみやすさがぐっと変わる。この三人称を二人称にしてしまうというのは、味の素なみに強力な手法だ。私のblogに「あなた」という日本語ではやや強烈すぎる表現を我ながら多用するのはこのことも理由の一つである。
これが気恥ずかしいなら、複数形にするという手もあるが、これだと他も全て複数形にせねばならず(subject-verb agreement)、不便である。"one"の代わりに"his"というのもあるが、男尊女卑的なにおいがのこる(sounds too male-chauvinistic)し、"her/his"というのも気を遣い過ぎ。というわけで迷ったら"you"で押し通すといいというのは覚えておいてもいい(a rule of thumb)
まず、「プール付きのマイ・ホーム」(their own house with a swimming pool)を持ち、おいしいものを食べ、南の島でバカンスを過ごし(spend your vacation in a tropical island)、何不自由ない生活を手に入れることは、アメリカ人であれば(if you were an American)夢みて当然である。
こんな感じだろうか。
ディスカヴァー社長室blog: 外交官の父が息子のために書いたこの本は、用紙代から見ても中身から見てもほんとにお得だ ●干場キーワードやフレーズに英語つきで書いてあるので、自然な英語表現が自然に覚えられちゃうというすぐれモノ。
それを否定しないが、上で見てきたように、鵜呑みにするのではなく(don't take them literally)、少しずつつっこみながら(with a grain of salt)がよいだろう。
あと、一カ所「これはいささかまずいのでは」という箇所があった。
P. 245アメリカでは、自分の安全は自分自身で守るという意識が強い。移民として新大陸に渡り、インディアン(an American Indian)や猛獣(a fierce animal)から身を守りながら、西へ西へとフロンティアを目指した開拓者魂(a pioneering spirit)が根っこにある。
うむむ、とても Berkeley にいたとは思えない、アホでマヌケなアメリカ白人史観である。自警意識の高さについて語るなら、修正憲法第二条(the Second Amendment)を上げた方が適切だし、身を守るという観点から行けば Native Americans はむしろ被害者だし、彼らを取り上げるのであればむしろ感謝祭 (Thanksgiving Day)で取り上げるべきだろう。この下りの失点は小さくない(To say the least, that paragraph was politically incorrect.)。ましてや著者が外交官であることを考えれば。もし増刷がかかるのであれば、この部分は書き直した方がよいだろう。
Or did the author want to make it sound like a typical Japanese politician with slippery tongue :-?
Dan the Nullingual

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