幻冬舎小木田様より献本御礼。

仕事の速さには定評のある著者だが、今回はその中でも最速ではないか。

本書「イスラム金融入門」は、グラミン銀行やオイルマネーの再興で俄然注目度が上がった、イスラム金融について解説した一冊。そう。実はグラミン銀行もイスラム法をクリアーしているのだ。「グラミンフォンという奇跡」にもきちんと載っている。

目次 - 5月30日の朝日新聞朝刊に「イスラム金融入門」(幻冬舎新書)の広告が掲載されました!|門倉貴史のBRICs経済研究所 にも 幻冬舎 イスラム金融入門 世界マネーの新潮流 ? 門倉貴史 著にもないので手入力:(
プロローグ 金融市場の新たな勢力
第一章 イスラム金融、これだけ知れば大丈夫
第二章 有力グループ、MEDUSAのパワー
第三章 目が離せない、あの国、この国
第四章 インフラ投資にイスラムマネーを!
エピローグ 日本経済とイスラム金融

イスラム金融といえば、その特徴はイスラム法=シャーリアに則っていること。イスラムというのは一神教の中でも、禁則事項がやたら具体的なのが特徴の一つなのだが、その中には「利子の禁止」という、現代の金融から行けばとんでもない項目が存在する。

にも関わらず、ちゃんとイスラム金融というのはまわっている。一体どういう仕組みなのだろうか?それは本書を読んだ上でのお楽しみということでここでは種明かしはしないが、言われてみれば「その手があったか」というものである。

感心したのは、複数ある「その手」を、単なる融資にとどまらず保険に至るまで紹介していること。実は私はかつてインドネシアやマレーシアに出張したことがあったので、主なものは知っていたのだが、「タカフル」までは知らなかった。

そのイスラム金融が、今どえらい勢いで伸びている。2005年末で8000億ドルだった総資産は、年率15%の割合で伸び続け、2015年には3兆2580億ドルに達すると著者は予測する。なんだか「重力が衰えるとき」(イスラムが支配する地球が舞台のサイバーパンク!)が具現化しつつあるようではないか。

とはいうものの、本書を読んだ後はそのイスラム法のありようにむしろ当惑を感じなくもない。なぜ利子を取ってはいけないかといえば、それが不労所得であるからというのがその理由となっているが、それではオイルマネーはどういう扱いになっているのか。あれこそ不労所得そのものではないか。

....という論理をさらに展開していくと、以下の疑問にたどりつく。1991年以来ずっと抱いてきた疑問だ。

なぜ、サダム・フセインはクェイトなんかすっとばして、リヤドとメッカを占領しなかったのだろうか。

大義名分として、「堕落したサウド家から聖地を取り戻せ」というのは、ものすごくアピールしたのではなかっただろうか。実際、当時これをやられたら多国籍軍、いや合州国に打つ手はあっただろうか。

もっとも、そこまでの切れ者だったら、はじめからイランになんか攻め込んではいないだろうけど。

いつか、納得できる答えを聞いてみたいものだ。

話がちょっと飛んでしまった。何はともあれ、世界は見ての通りだ。イスラム人口がキリスト教徒人口を抜くのも時間の問題で(すでにそうなってる?)、そして原油高がかつてないほどの力を産油国にもたらしている。ヒト・モノ・カネの三つのうち二つを、イスラムは急速に手に入れつつある。二つが揃えば、残り一つを手にするのもすぐである。

著者に言われるまでもなく、今後はイスラム経済からますます目が離せなくなりそうだ。

Dan the Agnostic and Capitalistic