担当編集者の松本様より献本御礼。

これだよこれ!

こういうフィットネス本を待っていた。

本書「40歳からの肉体改造」は、肉体のトレーニング=鍛錬(training)ではなく、コンディショニング=条件付け(conditioning)の本。本書が役にたつのは、こんな方々である。

  1. 忙しくてできない?
  2. 肩こりで集中力が切れてしまう方
  3. 腰痛が体質だとあきらめている方
  4. 朝起きて倦怠感・疲労が残り、午前中は苦手な方
  5. 些細なことでイライラ、怒りで損をしている方
  6. 心配ごとが多く、猫背気味、いつもため息をついている方
  7. お腹をへこめたい方は「代謝促進」を
  8. 夜中や朝方に目が覚める、眠りが浅い方々

これ実は、第七章の目次である。詳細目次は後でお目にかけるとして、これが最初ではなく最後にあるところが、本書のポイントである。

実はフィットネスにおいて、最も大変なのは、「脳を説得する」ことなのではないだろうか。

たいていのフィットネスには、具体的に体を動かす体操が欠かせない。本書もその例外ではないのだが、体を動かしたくて動かしたくてたまらない子供はとにかく、大人にとっては体操というのははたから見ていてまぬけな上めんどくさいものである。だから「いやいや」やることになるし、いやいやだから続かない。

その点において、「いつまでもデブと思うなよ」は画期的な一冊だった。フィットネスから体操をなくしてしまったのだ。「頭でやるダイエット」であれば、大人でも、いや大人だからこそついていける。

しかし、同書はダイエットではあっても、フィットネスではない。腹はへこむかも知れないが、目がぱっちりするわけでもなく、肩こりがなくなるわけでもなく、ひざ下のむくみがなくなるわけでもない。これらをなくしたかったら、やはり体操するしかないのである。

本書は、その体操の必要性を、前半130ページを使ってじっくり解説する。まず体でなく頭を説得しているのだ。これがよい。「ごたくはいいから早くやろ!」というタイプにこのアプローチはじれったすぎるかも知れないが、頭でっかちの中年にこれはぴったりだ。息をするのもかったるい私でさえ、とりあえずベッドの上でできるものはやりはじめたぐらいだ。

そしてなんといっても、本書がよいのは「体を鍛える本」ではなく「体をゆるめる本」であることだ。これが今までありそうでなかった。いや、あったかもしれないが、「ごたくはあとまわし」にしているものばかり。体をゆるめるためには、まず頭をゆるめなければならないのだ。

そういうわけで、中身に対しては申し分ない本書なのであるが、外身はもう少し工夫できなかったのだろうか。「40歳からの肉体改造」でAmazonで検索すると、本書を含めて3冊引っかかる。これではどの「40歳からの肉体改造」なのかわからない。かといって「トレーニングは後回しにして、まずはコンディショニング」だと、ちくま新書っぽくない。ずばり「肉体コンディショニングとは何か」ではどうだ。とにかく副題にも「コンディショニング」が入っていないのはいただけない。

本書がいかに「頭を説得する」ことを重視しているかは、最後にまわした全目次を見ていただければ納得いくと思う。だまされたと思ってまずは読んでみて欲しい。仮に効用がなかったとしても756円。ビリー隊長の数(十)分の一である。値段の方は「頭を説得」するまでもない、「ごたくはいいから早く」買っても損はない。

Dan the Conditioning Blogger

目次 - 筑摩書房 40歳からの肉体改造 ─頑張らないトレーニング / 有吉 与志恵 著にないけど松本様よりmailにて
序章 答えは、自分の身体が知っている
あなた自身を大切にしてほしい / あなたの可能性をつぶす落とし穴
第一章 あなたの身体、どうなっていますか?
退化している現代人 / 姿勢をつくる筋肉、関節を曲げる筋肉 / 深層部の筋肉のバランスのよさが姿勢をつくる / 姿勢は人となりを表す / 筋肉は人生の履歴書 / 過緊張という筋肉の悲鳴 / 心と身体をむすぶ
第二章 コンディショニングという観点でみると
コンディショニングとは、身体を改善すること / コンディショニングは脳のトレーニング? / 手足はコンディショニングを受け止める器官 / 足のコンディショニングで内臓疾患を改善できるかも / コンディショニングは中医学の考え方にも通じる / 体温は健康を知るバロメーター / 皮膚は臓器であると考えたことがありますか? / 日本文化にコンディショニングの原点をみた
第三章 コンディショニングのメカニズム
背骨は人間の要 / 背骨と四肢の関係 / 背骨の役割 / 脊柱を守る筋肉 / インナーユニットは呼吸でコントロールできる / そもそも呼吸ってなに? / 呼吸のメカニズム / 腹式呼吸と胸式呼吸 / 頭を支える筋肉たち / 腕を動かす筋肉 / 下肢を動かす筋肉 / 筋肉のパフォーマンスを上げるには / 筋肉には性質がある / 筋肉には性格がある / 身体にある下水道
第四章 コンディショニングの基本テクニック
コンディショニングは毎日短時間で実施 / コンディショニング成功への入り口 / 身体をリセットする / リセットコンディショニング / まずは脱力から / 揺らぎの効用 / 老廃物を筋肉から追いだす / アクティブコンディショニング / インナーを鍛える「コアトレ」
第五章 身体をリセットする方法
骨格をリセットコンディショニング
  1. 首のリセット
  2. 背骨上部のリセット
  3. 背骨下部のリセット
  4. 骨盤のリセット
  5. 肩のリセット
  6. 肘・手首のリセット
  7. 膝・股関節のリセット
  8. 股関節のリセット
  9. 足首のリセット
ストレッチポールを利用するリセット
寝ながら行なうコンディショニング / ベーシックセブン 基本ポジション
  • 予備運動1 胸椎の小さな伸展
  • 予備運動2 腰椎の小さな伸展
  • 予備運動3 脊柱の小さな回旋
  • ベーシック1 肩甲骨をゆらし胸椎周りの緊張を取る
  • ベーシック2 肩甲骨を外転させ脊柱の小さな屈曲を狙う
  • ベーシック3 腕の外転と内転させ、胸椎の小さな伸展を狙う
  • ベーシック4 股関節のちいさな内外旋
  • ベーシック5 膝関節の小さな屈曲で、股関節を外転、外旋させ骨盤前後傾を狙う
  • ベーシック6 ゆらぎで脊柱の連動を狙う
  • ベーシック7 呼吸
筋肉をリセットして弾力を取り戻す
  1. 首の周りの筋肉のリセット
  2. 肩周りの筋肉のリセット
  3. 肘・手首周りの筋肉のリセット
  4. 骨盤周りの筋肉のリセット
  5. 膝・股関節周りの筋肉のリセット
  6. 股関節周りの筋肉のリセット
  7. 足首まわりの筋肉のリセット リンパ節の改善で筋肉と関節の動きをさらに滑らかに
  8. 足首まわりのドルフィング
  9. 膝下リンパ節のドルフィング
  10. 鼠頸リンパ節のドルフィング
  11. 腸骨リンパ節のドルフィング
  12. 胸郭のドルフィング
  13. 腋下リンパのドルフィング
  14. 鎖骨リンパ節のポンパージュ
  15. 鎖骨リンパ節のポンパージュ
第六章 コンディショニングの実際
いよいよアクティブコンディショニングをスタート
  1. コアトレ「全呼吸」
  2. コアトレ「横隔膜・腹横筋の動きと連動を出す呼吸のトレーニング(腹式呼吸)」
  3. コアトレ「胸郭の動きを出す呼吸のトレーニング(逆腹式呼吸)」
  4. コアトレ「腹横筋を目覚めさせる強制呼気」
アクティブコンディショニングとは
  1. 軸回旋と骨盤の動きの連動をはかる
  2. 座して骨盤と軸回旋の連動をはかる
  3. 座して骨盤と上体回旋との連動をはかる
  4. 立ち上がる前の足首・膝・股関節・骨盤・脊柱の連動
  5. 脚と骨盤の連動と軸の確立
  6. 足裏・足首・膝・股関節・骨盤の連動
第七章 体調別お勧めコンディショニングは、これ!
忙しくてできない?
肩こりで集中力が切れてしまう方
腰痛が体質だとあきらめている方
朝起きて倦怠感・疲労が残り、午前中は苦手な方
些細なことでイライラ、怒りで損をしている方
心配ごとが多く、猫背気味、いつもため息をついている方
お腹をへこめたい方は「代謝促進」を
夜中や朝方に目が覚める、眠りが浅い方々
参考文献