アスペクト貝瀬様より献本御礼。
これが到着した日に
マンガ脳 (内田樹の研究室)日本語と日本の宗教の「辺境性」についてのプレゼンテーションだったのだが、いつのまにか「日本人の脳」の話から、マンガの話になってしまった。
が上がっていて、テラシンクロニシティという感じだったのだけど、その時にはまだ書影はおろかAmazonにページもない状態だったので後回しにしていたらもう販売していたというorz。
本書「マンガ脳」は、神経内科医で作家でクルーズフェチの著者が書き飛ばしたマンガ論。この「書き飛ばした」というところがミソ。
年間10冊ペースだけあって、著者blogの紹介も
マンガ脳 - 米山公啓のブログアスペクトから「マンガ脳」がでた。 最近のマンガを脳科学的に読み解くという趣向。なかなか面白い展開になっていると思うが。従来のマンガ論は、その人のマンガ感想になってしまっていることが多いが、あくまでも科学的に解説。
と書き飛ばしていらっしゃる。
目次 - マンガ脳|アスペクト ASPECT ONLINEより
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「科学的に」とはいうけれど、実のところ、我々が脳をどれほど知らないかというのは、脳についての研究が進めば進むほどそう感じるようになるというのが正直なところ。個人的には、「脳トレ」にしろ著者の諸作品にしても、「大丈夫っすか?まだ高温超伝導よりわかっていない話題を、ニュートン力学なみに『こうだ』って言い切っちゃって」という思いが強い。特にfMRIを用いた研究で「こうだ」と言われると、「はて?MRIってそんな時間分解能よかったっけ?artifactひらってるだけじゃないんすか?」という突っ込みの一つや二つや....1500億ぐらい入れたくなってくる。この当たりの実際は立花隆の「100億年の旅」シリーズなどに活写されている。話が脳だけに、話半球と割り引いて受けるのが正しい。くれぐれも「お医者様のおっしゃたことだから」と神のお告げのごとく受けないこと。医術の進歩は結構早くて、脳よりずっとわかっていたはずの消化器ですら、治療方針が結構変わってるでしょ?昔はたかが胃潰瘍ですぐ切ってたのよ。
しかし、「医者なんてその程度のものです」とリラックスして読むと、本書は実に面白い。個人的にはヨネ先生の最高傑作なんじゃないか。特に第一章は、「半」現役の医者らしく、医療マンガに対するつっこみは痛快のひとこと。
とはいうものの、同じ憶測にしても、科学的に憶測するのとそうでないのとでは、説得力が全然違うというのも確か。「マンガは顔と目である」というのは慧眼。単に慧眼というだけではなく、そのために「ホムンクルス」をもってくるところがシビれる。
もう一つ素晴らしいのは、医者の手によるものにも関わらず、倫理に足をすくわれていないこと。でないと「ホムンクルス」とか論評できないもんね。まさかトレパネーションが現在標準的な医療として用いられているとは思えないしねえ。
それでも、大脳生理学的に正しいかどうかはさておき、マンガというのは心によく効く薬だと思う。少なくとも鍼灸が効くというのと同じぐらい、それは確かだと言ってよい。♪マンガマンガマンが〜まんがをむさぼると〜あたまあたまあたま〜あたまがよくなるぅ〜ってか。
というわけで、本書はすでにマンガ脳を持つ人と、マンガ脳に嫌悪感を持つ人の両極端にお勧め。本書単体でも楽しめるけど、本書に引用されているマンガも是非読んで起きたい。というわけで目次中に登場する作品はリンクにしておきました。あわせて是非。
Dan the Mangaphilia
頭は、良くならねえと思う。