というわけで、Bill Gates が引退する。のでひと言書けとあちこちから言われているのでここにまとめて書く。

Life is beautiful: ビル・ゲイツの引退と「ソフトウェア・ビジネスの興亡」と
つまり、ビル・ゲイツは「人類の歴史始まって以来初めて、土地・金・石油などの天然資源ではなく、知的プロセスをコントロールすることより世界一の金持ちになった」という点で特異な存在だというのだ。

それも一つ。

しかし、私にとって、彼の最も偉大だったのは、「みんな」と常に戦い、そして負けなかったことだ。

彼が「みんなの敵」だったのは、今に始まったことじゃない。まだパッケージソフトというものが商品でなかったころ、BASICをコピーしまくっていた連中に対して「やめれ」といった時以来、彼はずっと「みんなの敵」だった。DOS, Office, Windows 95, IE.... Microsoftの製品の正否というのはあまりに簡単に峻別できる。「みんなの敵」と認識されれば成功、「みんなのうちの一つ」だったら失敗。

彼は、みんなの敵 = Public Enemy という役割を30年にも渡って演じ続け、そして破綻しなかった。

これこそ、「個」じゃないだろうか。

現代にあって「個」というのはなぜかそれだけで善と見なされてきた。間違っているのは大きく群れた「やつら」で、正しいのは小さく散らばった「個々」。1984年のMacintoshのCMは、まさにそれを映像化したものだった。

しかし、Bill GatesはMicrosoftを隠れ蓑にしなかった。常に「正しいみんな」の矢面に立ってきた。これは「正しいみんな」にとっても実に楽だったはずだ。大きくてつかみどころのない「敵」よりもずっと。彼がいてくれたおかげで、「みんな」は「正しい」を具体的にイメージすることが出来た。そしてそのうちの少なからぬ「正しい」が普及した。パーソナルなコンピューター、グラフィカルなインターフェース、そしてネット間(インター)ネット。コンピューティングの世界で過去30年に起きたこの三台革命のうち、彼は全てに「敵」として立ち続け、そして、倒れなかった。

大悪は大善に通じるという言葉に、彼ほど相応しい者がいるのだろうか。

ゲイツ引退、本当の功績とは?:CNET Japan オンラインパネルディスカッション - CNET Japan
個人的に、”マイクロソフトを憎んで、ゲイツ憎まず”なので、お疲れ様ですといいたいです。

わかってねえなあ。だから選挙に勝てないんだよ。憎んでよかったんだよ。それこそが彼の天職なのだから。

一つ確かなことは、彼去りし後の世界において、「正しい」を導くのはずっと難しくなるということ。今までは、ITの世界では何かあれば「Bill Gatesのせいだ」と言えた。これからはそういう言い訳は通用しないのだ。Bill Gates という好敵手なき、今日からは。

404 Blog Not Found:Kill Bill's Little Finger
もう20年近く前だが、当時はまだBillご本人がデモをやっていたのだ。
その前のバージョンはバグだらけで、Word 3では特にデバッグに気をつけて、ということを力説したあと、こう加えたのである。「バグが一つでも見つかったら、ご報告ください。私の小指を進呈します」。それも小指の根元をチョンチョンとやるジェスチャー付きで。
その後BMUGのメンバーがすぐに小さなバグを一つ見つけたのだが、小指はまだ届いていないようだ。

というわけで、冒頭の挨拶。「お疲れさま。小指は財団のために使って下さい」。

Dan the One of the Billion Enemies

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