著者より見本を頂いたとき、最も驚いたのが、タイトル。
初出2008.07.05; 販売開始まで掲載
「なんというレッドオーシャン」というのが読前の率直な感想。なにしろ「戦略」である。「課長」と比べ、この「海」がどれほど紅いかはリンク先を見ていただければ一目瞭然である。さらに初版は、「ゼロ版」である見本とは違い、それを象徴するかのごとく真っ赤っか。大丈夫か、おい。
という懸念は杞憂だった。この著者、たしかに「あたらしい戦略家」であった。本書はまぎれもなく「あたらしい」「戦略」の「教科書」である。
本書「あたらしい戦略の教科書」は、「はじめての課長の教科書」の著者による「あたらしい」戦略本。先ほどから私はしつこいほど「あたらしい」を繰り返しているが、それはなにを意味するのか?
目次 - Amazonのものを追補
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それは、「戦略は誰のものか」、ということである。この点こそが、「あたらしい」のである。
かつて戦略というのは、「上」が立てるものであった。国の戦略は大臣が立て、会社の戦略は重役が立て....家庭においても(もし立てる必要があれば)家長が立てるものであった。それ以外の者は、戦略の実行に関与することはあっても、戦略を理解している必要もなければ、その戦略に責任を持つ必要もなかった。戦略とは、「やつら」のもの(their strategy)であったのだ。
これからは、違う。これからの戦略は、「われわれ」のもの(our strategy)でなければならない。国の戦略は国民に共有されねばならないし、会社の戦略は役員だけではなく、株主にも従業員にも共有されねばならない。
このことは、断片的には報告されては来た。会社によっては最高戦略責任者という役職を置くところさえ現れてきた。しかし、本書ほど「戦略」が「われわれ」のものでなければ駄目だということを全面に押し出した本を見たことがない。その点において、本書は確かに「新しい」。
著者は、こう言い切る。
第四章 2 スイート・スポットをシェアし、戦略を育てる戦略の立案を密室で行うことは、犯してはならない「現代のタブー」なのです。
これは、今までの戦略論からは真っ向から対立する。かつて戦略というのは最高機密に属することだった。それを守るためなら自国の都市を空爆に晒すことさえ厭わなかったほどの。チャーチルはそうやって戦略を守りぬき、それで英国をナチスから守り抜いた。20世紀までは、確かに戦略というのは「えらい人」のものだった。
しかし、冷戦も終結した頃から、いやその萌芽が見え始めた頃から、この常識が覆される事例が相次ぐようになった。ピラミッド型の組織があちこちで瓦解するようになったのだ。ピラミッドの各階層で「戦略」が「遮断」していると、いちいち命令を発令しないと末端が動かないので、末端が駆けつけた頃には間に合わないという事例が多発したのだ。
それに呼応するかのように、組織はフラット化しはじめた。現場の権限が強化された代わりに、責任も大きくなったのである。これはいいことばかりではなく、むしろ危険も大きなやりかただ。えもすれば、現場の勝手な行動が組織全体を殺し兼ねないのだから。「権限委譲」を取り違えて「死んだ」会社の何と多いことだろうか。
そういった現代型の組織をつなぎ止めるもの、それこそが戦略なのである。
「戦略とは「旅行の計画」である」という要旨は、およそ戦略論の本であればどこにも出てくる。本書も例外ではない。しかし本書において、戦略とは単なる旅行計画(itinerary)ではなく、絆(bond)なのである。
そんな著者が、「戦略立案を刺激する優れた目標」として掲げているのが、次の5つ。
- リーダーが設定した目標であること
- 3年程度の期間で到達したい目標であること
- 背伸びをすれば、ギリギリ届くような高さの目標であること
- 測定できる目標であること
- 利他性のスパイスが入っていること
著者自身、この目標設定に実に忠実である。特に3.と5.には舌を巻く。なぜいきなり本書を著すのではなく、「はじめての課長の教科書」が先かといえば、まさに3.なのである。そして私がこうして本書を書評してるのは、5.に該当する。そういえば、この5.も「あたらしい」。出来ている人は実は少なくないのだが、しかし言語化はされていなかったという意味において。
戦略は、古くてあたらしく、そして難しくて簡単である。それであるが故に、もはや「えらい人」には任せておけなくなったのもまた戦略というものである。各自が学んでおかねばならなくなった所以である。
そうそう。戦略といえばタイミング。その意味で、社長blogで
と告知しているのに、自社販売サイトにまだ上がっていないのはちょっとかっこわるいなあ。
Dan the Strategist of His Own

たとえば、中小企業の社長というか経営者で作っている団体に、中小企業家同友会というのがありますが、そこでは経営指針をそれぞれの企業で、社員と共に作って行くという実践を交流しあっています。
小さい企業の経営者は、とかくワンマンになりがちなので、「頭でわかっているつもり」でも、トップダウンでやりたがってしまい、実際には「社長の決めた経営理念/指針」となって、結局スタッフ全員のやる気と実力を引き出せないという失敗例が多く、それじゃだめだよねということで学びあったりしてます。
ご参考まで。