先週号に引き続き、今週号も特大号。どうも特大号が常習化してきたなあ。

しかし、そこで取り扱われている話題は、今までで最も「自然」なもの。

食を知れば経済がわかる!

食というのは、現在の経済学が最も不得手としているもののように思う。なぜ不得手としてきたかと言えば、自然の関与する余地が、経済活動中で最も大きいからでもある。農場は市場で斬れないのだ。少なくとも、今のところは。

「お金」崩壊より
two-economies

この図の下にある自然資本の部分が、食に関しては他よりずっと大きいのだ。各国とも食を完全に市場にまかせていない理由が、ここにある。のだが、実は意外なことに、日本は世界でも有数の「食が市場化された国」である。

本特集で最も注目すべき点が、ここである。P. 84ページのグラフ、「日本市場は解放されている」は必見なのだが、これによると農産物の平均関税率は10%でEUの半分であり、韓国は60%もあり、インドとノルウェーに至っては100%を越えている。

だとしたら日本の食は市場経済のよさを最も享受しているはずなのに、そう見えないのはなぜか。この当たりを知るのに、本特集は最適である。なぜ自給率39%の国で、2000万トンもの残飯が出るのか。なぜコメはこれほどえこひいきされているのか....

しかし、本特集をもってしても、食に関してわかるのは断片的だと言わざるを得ない。各要素に関しては非常によくわかるのだが、全体像がいまいちわからないのは、我々がそれだけ自然を知らぬということなのだろう。本特集の各論併記ぶりは、この問題に関する「冴えたやり方」が未だに見つかっていないことの証である。

とりあえずの落としどころとして、本特集のトリを飾る鈴木宣弘の「逆説の『農業保護政策』提言」の結びは、私のそれとほぼ一致する。

P. 85
農業・農村には多面的機能があるが、それを評価する具体的な指標がなければ、農家に対する直接支払い充実は、国民には受け入れられない。ヨーロッパのような具体的な指標化を通じて、食料生産の持つ多様な勝ちを国民に理解してもらい、補助金の根拠を明確員する努力が当事者たちに求められている。狭義の経済効果にとらわれない、多様な価値観を国民が共有することが、わが国農業再生の第一歩なのではないか。
404 Blog Not Found:農水省は環境省と統合したらどうか
それであれば、むしろ日本においては環境保全、養老孟司の言うところの「手入れ」を「農家」の「正業」にして、「食料生産」を「副業」にしてしまうというのはどうだろうか。

それで、第二特集が「新型インフルエンザ大流行の脅威」。本号はまさに「自然vs経済」という趣きであった。

See Also:

Dan the Economic Animal by Nature