まじ?

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Foundation Triology
Issac Asimov

邦訳:銀河帝国興亡史1-3
岡部宏之
SF小説の金字塔、アイザック・アシモフの「ファウンデーション」映画化 : 映画ニュース - 映画のことならeiga.com
[ニューヨーク 29日 ハリウッド・レポーター] 今年始め、親会社のワーナー・ブラザースに吸収され、消滅したインディペンデント系映画会社のニューライン・シネマ。その創業者だったボブ・シェイとマイケル・リンが新たに立ち上げた製作会社ユニーク・フィーチャーズが、第1弾作品としてアイザック・アシモフのSF小説「ファウンデーション」を映画化することになった。

というわけで、以前「SF入門用ベストテン」でも紹介したけど改めて。

「何冊読めばSFを読んだになるのか」という宗教戦争があるけど、それが何冊でもこの三部作ははずせないのが、これ。

「ファウンデーション」は、SFおいて少なくとも三つの意味がある。

  1. "Foundation"(ファウンデーション),"Foundation and Empire",(ファウンデーション対帝国)、そして"Scond Foundation"(第二ファウンデーション)による三部作
  2. The Zeroth Law of Robotics (ロボット第零法則)によって統合された、Issac Asimovによる未来史すべて
  3. それ(ら)によって確立された、SFの基礎。

ここでは1について書きつつ、なぜ本作が3の意味を持つようになったのかを解説する。

数学者 Hari Seldon は、予測不可能な個々の分子からなる気体のふるまいが予測可能なように、予測不可能な個人からなる社会全体のふるまいが予測可能なのではないかという予想のもとに、Psychohistory (心理歴史学)を創設し、銀河帝国の将来を予測する。その結果、帝国の崩壊は不可避であることを見いだす。その後に続く混乱は一万年に及ぶだろう。しかし、これを千年に縮める方法がある。これまでに得られた人類の叡智を、Encyclopedia Galactica、銀河百科事典へとまとめ、これを復活の礎=ファウンデーションとするのだ....

このファウンデーションの創設から、「新秩序」の目処が立つまでの Foundationers = ファウンデーションの守護者たちが、この三部作の主人公である。帝国はどのように崩壊し、そしてファウンデーショナーたちはどのようにして再び銀河に秩序を打ち立てるのか....

まず、「予測不可能な個人からなる社会全体のふるまいが予測可能なのではないか」という発想がしびれる。その名が Psychohistory というのもしびれる。そして帝国の崩壊が不可避でも、混乱を最小限にとどめるための手段が、百科事典の編纂であり、その名が Encyclopedia Galactica というのもしびれる....

こういう文字だけ追っても素晴らしいのだが、やはり故野田昌宏が言い遺したように、「SFは絵」であり、この「絵」にあたる部分の描写がまたしびれる。全てが人工物に覆われた銀河帝国首都惑星、Trantor。そこでのエネルギー源は、文明の究極のゴミである熱を宇宙へ捨てることによるヒートポンプ。そして第一ファウンデーションの所在地、Terminus。名前のとおり、銀河の果てに、帝国崩壊の動乱をさけるように築かれる。ここで第一ファウンデーションと言った。実は第二のファウンデーションも存在するのだ。しかしそれはどこか?そもそもなぜ必要だったのか?

こうして書いているだけでも本作の大作ぶりが伺えるが、本三部作に限って言えば文庫本/ペーパーバック三冊である。まだ読んでいない人は、この夏休みに読むのが絶好の機会であろう。英語版に挑戦してみるのもいいだろう。単位系がヤードポンド法だったり、登場人物たちが平気でタバコをふかしていたりといったあたりに、この三部作が書かれた頃の時代が感じられるはずだ。ちなみに第四部、"Foundation's Edge "(ファウンデーションの彼方へ)以降に書かれた作品では、英語でもちゃんとメートル法が使われていたりる。

ところで、「SFは絵」だと先ほど述べた。その意味で、実は表紙や挿絵も含めて作品だと思う。なにしろこの三部作は1951年から53年までに書かれた作品だけあって、表紙は何度も変わっているのだが、これまでのベストは何と言ってもMichael Whelanのそれだろう。

SCIENCE FICTION « The Art of Michael Whelanより

単に絵として美しいだけではなく、いかに本作を的確に読んでいるのかがしっかりと伝わってくる。帝国崩壊前のTrantorとHari、崩壊後のTrantorとThe Mule、そして帝国そのものが忘却の彼方となり、緑に覆われたTrantorとArcady....感無量。

日本はこのSFイラストの世界で「本国」より優れているように感じる。特に加藤直之のそれは本国版をほぼ100%凌駕していたりするのだけど(りりふぁさんともどもお元気でしょうか?)、こと本作に関して言えば、この Whelan の Cover が空前のベストだ。なぜ最新版ではしょぼくしてしまったのだろう。

この三部作の後の「ファウンデーション」ものも確かにすごい。いい意味でも、そして多分悪い意味でも。「宇宙史統合」は本当に必要だったのだろうか。私は Hari が Giskard と Daneel の「申し子」であったということが哀れでならない。たとえ Dors が傍らにいたとしても。

いかんいかん。三部作の話だった。本書を読まずしてSFを語るのは、源氏物語を読まずして日本文学を語るようなものだろう。好き嫌いはさておき、クリアーしておかなければならない作品というのは確かにある。SFに関しては、この三部作がまさにそれに相当する。フィクションとしては「銀河英雄伝説」も素晴らしいが、SFのS、Scienceに関してはダメダメ。SF大作を読みたいという方、まずは本三部作を。

Dan the Presychohistoric Being

P.S:そういえば星海シリーズはどうなっているのだ。いつになったら「断章2」から先に進むのだ!?