まるまる一週間遅れになってしまったけど、今北京オリンピックの日程を確認したら、ちょうど一週間後ではないか。むしろベストタイミングだったかも。

私のように、「スポーツの祭典」をあくまで横目で楽しみたい方には、最高のオリンピック特集なのではないか。

スポーツ&マネー丸ごとランキング

まず、なんといってもこちらの特集。私自身、スポーツはプレイヤーとしてもオーディエンスとしてもさほど興味はない。時折「上司にしたい人ベスト10」みたいな特集で長嶋茂雄だの星野仙一だのと出たりすると、唾を吐きたくなるし、スポーツ選手による人生訓を買ったりしたら負けだと思っている(ただ、日本だと羽生とイチロー、米国だとアリとウッズとジョーダンは別格。あれ、けっこういるじゃん(笑))。

しかしそんな私も、スポーツに群がる人々を観察するのは大好きだったりする。「スポーツオーディエンスオーディエンス」というわけだ。つくづくメタが好きな性格である。

その「スポーツ観戦」観戦というのが、まさにこの特集なのだ。「ドーピング毒本」もそういう本だったけど、本号の扱う範囲に比べるとやはり狭い。本号が「ゲーム」だとすると、同書は「イニング」といったところか。

まず道具。進化しているのは水着ばかりではない。道具の進化では、むしろ陸上が先行している。このあたりの事情を書いたのが「10秒の壁」。道具の進化なくしては、10秒の壁の突破というのはありえなかったのだ。本号と最もあわせて読みたい一冊だ。集英社新書編集部よりこの場を借りて改めて御礼。

そして「へえ」だったのが、ナイキの物語。今や時価総額三兆円の世界最大級のスポーツ用品企業だが、実はその出発点は、オニツカのシューズ輸入販売店。このオニツカは今のアシックス。今やナイキの売り上げはそのアシックスの8倍に及ぶが、70年代半場には赤字転落して銀行の融資が止まったところを、日商岩井の融資で乗り切ったのだそうだ。おかげで、双日はナイキの優先株の唯一の持ち主。"Just Do It"は、アシックスと日商岩井の"Just Did It"があってのことだったのだ。

電気自動車 始動!

で、もう一つの特集が、こちら。

電気自動車。もう何度目の正直なのだろうか。日本語で「モーター」といえば「電動」が暗喩されるのが一般的だが、Motorの本来の訳は「発動機」。私もボンネットの下に潜むあれは、EngineというよりMotorと読んでしまうクチ。

しかしその発動機としての特性は、実は電動が一番。なぜかというと、トルク。ムラがない上に特性が自動車にとって理想的。電動モーターなら、トルクコンヴァージョンが不要なのだ。実際電車には「シフトチェンジ」がない。

なのになぜ電気自動車の時代が一向に来ないかと言えば、電気が「最も使いやすいエネルギー」であるのと同時に「最も貯めにくいエネルギー」でもあるからだ。電車は外から給電を受けることでこの問題を回避しているが、「線」でなく「面」で動く自動車には、自前で発電するか蓄電しなければならない。

それをどうしていくのか、というのが今回の特集の目玉だが、クルマもいずれは電化されるという感触は確かにある。といっても数年ではなく十数年のスパンだけど。しかし私が還暦を迎える頃には、ガソリン自動車を公道で見かけなくなってもおかしくないのではないか。

Dan the Audience Audience