自腹購入。こういう本があるから、献本だけには頼っていられない。
スゴい病気に対するスゴい対抗手段を、スゴい著者がスゴくわかりやすく書いた本。
スゴ本の定義に全てあてはまる一冊だ。
本書「ガンマナイフ」は、タイトルどおり、ガンマナイフを中心に、ノバリス、サイバーナイフといった次世代の放射線外科装置まで解説した一冊。
目次 - 平凡社[平凡社新書 − ガンマナイフ]より- 頭蓋内腫瘍
(1)転移性脳腫瘍 / (2)聴神経腫瘍 / (3)髄膜腫 / (4)神経膠腫(グリオーマ) / (5)脳下垂体腺腫 / (6)頭蓋咽頭腫 / (7)松果体腫瘍 / (8)脳悪性リンパ腫 - 頭蓋底腫瘍
(1)脊索腫 / (2)グロームス腫瘍 / (3)鼻咽頭がん / (4)腺様嚢胞がん / (5)網膜悪性黒色腫ほか - 血管性病変 (1)脳動静脈奇形 / (2)海綿状血管腫 / (3)脳動静脈瘻
- 機能的疾患 (1)神経痛 / (2)頑痛症 / (3)癲癇 / (4)パーキンソン病
- 眼科疾患
- ガンマナイフ治療
来院と診断 / インフォームド・コンセント / 二泊三日のガンマナイフ手術 - ノバリス治療
来院とインフォームド・コンセント / 苦痛のないノバリス治療
それでは、ガンマーナイフとは何か。
γ線で、脳腫瘍だけ焼き切る機械である。
原理は至って簡単。コバルト60を201個ぐるりと並べて、そこから出るγ線のうち余計なものをコリメターヘルメットで遮断すれば、残ったガンマ線が患部を直撃する。虫眼鏡で火をつけるのにそっくりだ。焦点から離れていれば、光の通り道に指を差し入れてもやけどしたりしない。
発明されたのは1967年。なんとX線CTより前である。しかし普及しはじめたのはかなり遅く、日本では1990年。著者はその頃からガンマナイフを駆使して、これまで6000件の実績を積んできた、日本におけるガンマナイフの第一人者。
その6000件の実例から選りすぐられた実例が本書のキモ。なにしろCTやMRIといった断層写真で「ビフォーアフター」をやるのだ。小学生にだってそのすごさがわからずにはいられない。登場する断層写真は、本書のページ数の倍ぐらいあるのではないか。
しかし本書が優れているのはそれだけではない。実際にいくらかかるのか(保険を使えば15万円で済みます)、どこへ行けば治療が受けられるのか(現在全国51箇所)、実際の治療はどのように進められるのか(第六章)....患者が抱く疑問が、本書でほぼ全て答えられているのだ。
もちろん、ガンマナイフそのものは魔法の光線銃ではない。なんといっても頭部しか使えないし、頭部を固定するための「拘束具」を固定するのはピンであり、これにちょっとした外科手術を要する。その代わり精度は0.1mm。患部だけを狙い撃ちに出来る。
そして、頭部以外の患部も、ノバリスやサイバーナイフといった、リニアックのX線を照射する、新世代の放射線外科装置が使えるようになっている。
それ以前の放射線治療というのは、「焼く」というより「あぶる」という感じで、患部にだけ強い放射線を当てるというのが難しかったのだが、本書で紹介されている放射線外科器具のおかげで、「患部だけ焼く」が可能になった。このことは、もっと知られてしかるべきだし、そしてそのために本書が書かれたと言っていい。ちなみに「切る」方に関しては、「脳外科の話」がおすすめ。
実用書としても完璧だし、そして教養書としてもAha!の連続。しかも新書。これほど非の打ち所がない一冊というのは滅多にない。本書自体もガンマナイフに劣らない、切れ味するどい一冊だ。
Dan the Potential Patient
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