その青木さんより訳者献本御礼。

404 Blog Not Found:予約開始 - WEB+DB PRESS Vol.47
で、今回インタビューしたのが、Fine Software Writingsの青木さん。Webの世界で最も読まれている翻訳者ではないでしょうか。

読了して、嘆息。

「ああ、これがダイヤモンドや東洋経済や日経BPやディスカヴァーや日本実業出版や...[以下略]...という『スーツ系』出版社から出ていれば」。

翔泳社には大変申し訳ないのだけど。

本書「Eric Sink on the Business of Software」は、タイトルどおり、実際に独立系ソフトウェア会社(Independent Software Vendor = ISV)を経営している著者が、その要諦を一冊の本にまとめたもの。

しかし、本書は決してISVの経営者のためのものではないのだ。およそ「小さなサービス業」であれば、本書の知見はどこでも応用可能であり、そして内容の広さ、濃さ、そして面白さにおいて、本書はこの一年で私が読んだSOHO指南書のトップなのだ。

目次 - どこにもないので手入力
日本語版への序文
訳者序文
序文
著者について
謝辞
第1部 起業家
第1章 小さなISVについて
第2章 石の樽に不平をこぼす
第3章 自分の会社を始める
第4章 ギークのたqめのファイナンス入門
第5章 マイクロISVの探求
第6章 私のマイクロISVの第一報
第7章 もっと失敗しよう
第2部 人
第8章 小さなISV に必要なのはプログラマではなく開発者
第9章 ギークの支配とMBAの戯言
第10章 採用の危険
第11章 すごいハッカー!=すごい社員
第12章 「ソフトウェアにおける高音域」に対するコメント
第13章 キャリア計算
第3部 マーケティング
第14章 マイクロISVのための製品アイデアを探す
第15章 マーケティングは後処理ではない
第16章 競合を選ぶ
第17章 年相応に振る舞う
第18章 ギークの小手
第19章 建てる場所に注意
第20章 ゲームは進む
第21章 展示会に行こう
第22章 小さなISVのための雑誌広告掲載ガイド
第4部 マーケティング
第23章 マイクロISVのための製品アイデアを探す
第24章 マーケティングは後処理ではない
第25章 競合を選ぶ
第26章 年相応に振る舞う
エピローグ あとはただやるだけ
索引

一言で言うと、「ギークだけに読ませとくにはもったいない」ということである。

だからこそ、ギーク向け出版社から出た原著を、ギーク向け出版社が翻訳し、ギーク向け価格で出しているのが惜しいのだ。

A4、横書き、280ページで2,980円。これは技術書としては一般的な値段だが、一般ビジネス向けのフォーマットではない。

そして今や日本語blogosphereきっての「本売り」であると同時に複数の本の著者となった私には、このフォーマットの違いがどれほど売れ行きに影響をもたらすかを悲しいほど知っている。「弾言」と「小飼弾のアルファギークに逢ってきた」のどちらが面白いかというのは、「長女と次女のどちらがかわいいか」という質問と同じく、「どちらも面白い」と「父」としては答えざるを得ないが、単純にかかった時間から行けば後者であるし。著者以外の意見もふんだんに入っている以上、より「外れにくい」のも後者ということになる。

しかし、前者は後者の倍以上売れている。値段は同じであるにも関わらず。

悲しいかな、出版社や体裁や単価もまた「メッセージ」であり、そして購入にあたってはこれらの「メッセージ」の方が「内容」より重視されるのだ。それらの「メッセージ」が一般向けであればあるほど売れるというのが、悔しい現実ではある。

「誰が言っても1+1は2」

これはマーケティング的には事実ではない。「どの出版社がどんな体裁でいくらで出したのか」でその言説に耳を傾けてくれる人の数は変わってしまうのだ。ギークは比較的そのことから免疫であり、だからこそギーク向けの図書には高価格を設定できるのであるが、しかしギーク向け出版社はそのことに甘えすぎてはいないか?

いいものは、いい。

しかし、いいものがいいことを伝えるのは、いいものを作るのとは別の技術でもあるのだ。

だ、か、ら。

ギークならざる読者のみなさん、だまされたと思って読んでみて下さい。そこらの1,500円本を二冊買うよりもずっと得るものは大きいということは弾言しますので。

Dan the Geek