ジバラン。
滑稽で やがて悲しき アメリ哉。
ブッシュ(息子)政権下の合州国に関して書かれた本の中では、間違いなくベストな一冊。
それが、たまらなく悲しい。
本書「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」は、「ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記」の町山智浩が、アメリカの中(バークレーは「人民共和国」であってアメリカではないという意見はスルー)から見た、アメリカ。本書は主にニュースで構成されているので、あえて「現場で」とは書かない。現場の雰囲気を知りつつ、しかし現場からある程度(少なくとも銃弾が飛んでこない程度)の距離を離れていなければ、とても本書はまとまらなかっただろう。
目次 - 町山智浩の新刊『アメリカ人の半分は〜』10月10日発売 - ベイエリア在住町山智浩アメリカ日記より
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「殿(ビートたけし)に、
『今、一番面白い評論家は誰だ?』
と聞かれた。俺は自信たっぷりに、
「町山智浩です!」と答えた。
もし疑うなら、この本を読んで欲しい!!
水道橋博士(浅草キッド)大絶賛!
おい、ちゃんと端から端まで読んでねえだろ、水道橋博士。
面白いのは、町山智浩じゃない。
アメリカ、なんだよ。
町山智浩がどれほど面白い人かは、blog(リンクは上)を読めばわかる。それだけ面白い人が、なぜこれほど自重しなければならないか。
そこまで、かの国は面白くぶざまにぶっこわれているということなんだよ。
本書には、「評論」はほとんど出てこない。強いて言えば、各ニュースの後ろに一行つっこみがあるぐらいだ。しかし、それを省いても本書はなお面白い。そこで取り上げられた事件が面白いからだ。
冒頭から一つだけサンプルしよう。
P. 9「9・11テロの犯人の宗教は?」
「ヒンズー!」
「アルカイダって何?」
「テロリスト!イスラエルの」
「イラクの次にアメリカが攻撃すべき国は」
「イラン!」
「この世界地図でイランを指差してください」
その紳士が指差したのはオーストラリアだった。
著者が指摘するように、この該当インタビューがやらせでないところに、かの国の悲劇がある。本書には、こうした可笑しくて悲しい事件がこれでもかと並んでいる。
現在著者が住んでいるのは、かつて私も住んでいたところだ。そして当時からこの手のニュースは数多くあった。本書にも登場する The Simpsons が始まったのは、私がいた頃の話だ。
しかし、その当時と比べてもなお、かの国の「アホでマヌケ化」は進行してしまったようだ。それは「ゆとり」などというレベルではない。本書を読んでもなお、カバーの「アメリカが外国に戦争をしかけるのは地理の勉強をするためだ」というのが冗句に聞こえるのだしたら、もう一度、本書がノンフィクションであることを指摘しておこう。本書は「僕らのミライへ逆回転」ではなく、著者がアメリカをスウェーデンしているわけではない。現実はKindではなく、Rewindもできないのだ。
それでもなお、著者がかの国にいるのはなぜか。「アホでマヌケな」ものばかりではないからだ。大政翼賛チャンネルFOXがあるかと思えば、そのFOXの看板番組で白昼堂々とFOX批判をやってのけれるMatt Groeningもいるのがかの国なのだ。
P. 254この国に住むことは「世界」に住むことだ。だから、もうしばらくここにいようと思う。
かの国に一度住めば、このことは実感できる。
もっとも、かの国を「世界」と錯誤することこそ、かの国の国民の最大の宿痾でもあるのだけど。
Dan the Ex-Resident Thereof
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