糸井重里事務所より献本御礼。

ずいぶん前に頂いたのだが、すっかり紹介が遅くなってしまった。

そうなったのには訳があって、読了感をどう言語化すればいいのかわからなかったのだ。

本作「吉本隆明の声と言葉。」は、タイトルどおり、吉本隆明の肉声を納めたCDと、糸井重里との対談文からなっている。その吉本隆明が、私の Love to hate の対象だ。

Love to hate.

この言葉は、よく「死ぬほど嫌い」とか「蛇蝎のごとく嫌い」という訳され方をする。しかしこの言葉、単なる"hate"を強調した言葉ではなく、「嫌うことを愛する」という直訳どおりの意味でもあるのだ。

この Love to hate で私は引っかかっていたのだ。

「どうせ日本語で言い切れないならそのまま言ってしまえ」と開き直るのに時間がかかったのだ。

著者を嫌う理由は、あまりに多い。

昔の人の方が、やっぱり偉かったと思う。

嫌うだけなら、これで十分である。曰く「昔って何さ。人類発祥以来この世に登場した人は1000億ほどだそうだが、あんた全員チェックしたのか」「そういうお前はなんで子どもをこさえたんだ」「隆明よりばななの方が偉いよ、オレ的には....」

しかし、吉本隆明には、これがある。

言葉の一番の幹は、沈黙です。言葉となって出たものは幹についている葉のようなもので、いいも悪いもその人とは関係ありません。

だから、単なる hate では充分ではなく、充分かどうか以前に不適当で、 love to hate でなければならないのだ。

私にとって、そういう人は決して多くない。

そしてそういう人こそ、私がこの世を愛すべき理由なのだ。

Look, the world is large enough to harness both kinds. Those I love, and those I love to hate.

なぜ私が全体主義のごとくに耐えられないかと言えば、一言で言えば狭量だからだ。正しいもののみ存在が許されるのなんてまっぴらごめんだ。自分自身、そういう世にあっては真っ先に消される存在だろう。

そのことを確認するのに、著者のような存在ほどありがたいものはないのだ。

Dan the Man who Loves to Hate the Author