エクスナレッジより献本御礼。

にも関わらず、本書評は今年の書評の中では最も「コストパフォーマンスの悪い」書評である。なにしろ本書に書いてあることを検証するために、実際に

から送料無料価格(5000円)以上の商品を買って試してみたのだから。

それだけの価値は、あった。

この会社、本物だ。

本書〈「つらぬく」経営〉は、数多い「中小企業細腕繁盛記」の一冊であるが、その中では間違いなく今年のベスト。

はじめに
第1章 池内タオルのいま
第2章 民事再生、そして復活へ
1・絶頂からどん底へ
2・迫られた経営方針の転換
第3章 風で織るタオル誕生
1・タオル生産の真実
2・本格的に環境配慮に取り組む
3・エコから生まれた自社ブランド
4・風で織るタオル─アメリカから日本へ
第4章 会社を継ぐまで─続けることの重み
1・生い立ちと父への思い
2・今治に帰るという選択
3・父の死と二代目社長の誕生
4・新米社長の経営改革
第5章 エコとビジネスの両立─なぜ生き残れたか
1・ビジネスの原点
2・真摯な姿勢がファンをつくる
3・産地が与えてくれた力
第6章 がんばる地方と中小企業のために
1・5年後の池内タオル
2・今治産地をファクトリー・ブランドへ
おわりに

何をもってベストというかは微妙ではある、例えば文才という点では岡野雅行には及ばない。しかし、本書の主人公である池内タオルの製品は、社名のとおりタオル。プロでなくとも直に検証可能という点で、エンドユーザーが直接使う製品を作って売っているという点は強い。この点では「おしゃれなエコが世界を救う」もそれに近いとは言えるが、しかし自ら売っているだけではなく作っているという点、そしてWebサイト経由で製品が容易に入手できるという点において本書には一歩およばない。

その池内タオルがどんな会社で、そしてその製品がどんなであるかは、是非各自で確認していただきたいが、一つ言えるのは、ブランドというものの強さ。池内タオルが幸運だったのは、著者である二代目社長がこのブランドというものに対する「エリート教育」を、松下(現パナソニック)でしっかり身につけていたことだろう。

で、同社の製品である。価格も品質もまさにブランドである。同社のバスタオルは、いいものだとそれだけで5,000円もする。Tシャツより高いのだ。正直、本書を読むまで私にとってタオルというのはコモデティティであり、著者もそれを嘆いていたが、本書を読めばその考えを改めざるを得ないだろう。

私が買ったのは、竹繊維で出来た Bamboo Colour-Solid、 ニューヨークホームテキスタイル展でグランプリを受賞した Straits Colour-Solid 、そして同社の「最高級品」である Organic Colour-Solid 5の三種類。

当初以外だったのが、生地の厚さ -- というよりその欠如。「ふわふわ」との評判だったのでもっと厚手かと思いきやさにあらず。かさばらないので旅で持ち歩くのにもよさそうだ。なのに確かに「ふわふわ」なのである。こればかりは実際に手に取ってみないとわからない。

しかしそれ以上に感動したのが、抜群の吸湿性。特に Bamboo Colour-Solid のそれはびっくり。私は体型もかさばるし、髪の毛も細いので、きちんと体をふくにはバスタオルが二枚必要だったのだが、一枚で髪も体もばっちりふきあがる。今までのタオルは一体なんだったのか。

それでいて、乾きも早い。「厚ぼったく」ないのでそれだけ水が蒸発するのに必要な表面積が大きいためだろうか。さわってびっくり、ふいてびっくり、乾かしてびっくりである。

確かにこれなら、5,000円でも売れる。それくらいすごい体験であった。

かのようにすごいタオルを作った会社を率いる人が、そのタオルに勝るとも劣らない情熱で語った言葉をまとめたのが本書なのだが、その点で一つ残念なのが、編集がそれに充分答えているとはいえないこと。「『つらぬく』経営」って、売る気あるの?中小企業細腕繁盛記は本屋にあふれている。これでは埋もれてしまうではないか。エクスナレッジのページにも本書の紹介はないし。

それに対して、装丁、特にオビはたいへんよい。手触りを少しタオルっぽくしてあって、本書が何に関して書かれた本なのか、手に取れば確実にわかるようになっている。

私なら、本書のタイトルは「池内タオルの風」とした。著者がこのタイトルを思いつかなかったのはちょっと以外だったが、しかし著者は執筆に関してはプロではない。だからタイトルの凡庸さの責任は編集にあると断定する。

「タオルなんて引出物としてもらえばいい」と思っている人、是非本書でその世界の奥深さを堪能して欲しい。目から鱗、というより目のよごれを拭ってくれる一冊です。

Dan the Newest Fan Thereof

P.S. 同社のショッピングページ、会社の規模を考えれば実に立派なものなのだけど、改善点を一点。色柄はプルダウンメニューではなく、ラジオボタンなど「見える」ような選択法にしていただきたい。