面白い。

映画の描く宇宙:松浦晋也「人と技術と情報の界面を探る」
  • 下の法則:重力は常に観客が見ている画面の下に向かってかかる
  • 音の法則:空気のない宇宙空間でも爆発が起きると爆発音が聞こえる。しかもどんな遠くの爆発でも時間差なし。爆発と同時に音が聞こえる
  • 星の流れの法則:宇宙の星々は非常に遠くにあるので、宇宙船がどんなに速く移動しても窓の外を流れ去っていくということはない。しかし映画では高速で飛ぶ宇宙船の窓の外を星が流れ去っていく
  • 真空イコール無重力の法則:エアロックなどで空気がある時には重力がある。空気が抜けると無重力になる
  • 宇宙ふわふわの法則:宇宙に出た物体は実際には地球を回る軌道に入る。ひとところの上にとどまれる軌道は赤道上空の静止軌道しか存在しない。しかし映画では、地面の遙か上を衛星がふわふわと浮いている
  • 小惑星帯過密の法則:実際の小惑星帯はすかすかで個々の小惑星にランデブーするほうが難しい。しかし、映画の小惑星帯は中で宇宙船が小惑星を避けつつ鬼ごっこができるほどに過密である
  • 氷の惑星、砂漠の惑星の法則:現実に地球は氷に覆われた地域も砂漠の地域もあるが、映画に出てくる惑星はたいてい惑星まるごと氷に覆われていたり、惑星全体が砂漠だったりする
  • エンジン噴射しっぱなしの法則:現実の宇宙機は、加速が終わるとエンジンを停止して慣性飛行に入る。宇宙には抵抗となる空気が存在しないので、そのままずっと運動し続けるわけだ。しかし、映画の宇宙機は飛行している間中、ロケットエンジンを動かし続ける

けど一番重要なのを忘れてまっせ。

それが、これ。

宇宙戦争の法則:
地球上の戦争と同じような理由で戦争が始まり、同じような感覚の有人戦闘が繰り広げられる。

確かに今宇宙は軍事利用されているし、衛星破壊ミサイルなんてのもあるのだけど、なぜそんなことになっているかといえば、実は我々が地上にいるから。

まず戦闘。実際の宇宙は、あまりに危険で自分の身を守るのに精一杯。チョモランマのてっぺんで格闘する奴はいないし、ましてや「しんかい6500 vs USS Alvin海面下6kmの死闘」なんて起こりようがない。戦争なんてしてる暇はないのだ。

MOON LIGHT MILE」なんか見ていると、あたかも米中宇宙戦争がすぐにでもはじまりそうで、同作品の中でも有人宇宙船どおしが戦っていたりするのだけど、いくら人命を安く見積もっても、生命維持装置は安くない上に戦闘では役立たない。

しかしそれよりも大きなのは、戦争する理由。

戦争の理由というのは、権益確保/奪取だったり政治への不満だったりするのだけど、いずれも宇宙の大きさの前には消し飛んでしまう。

右の"The Space Elevator"は、JSEA(日本宇宙エレベーター協会)入会特典として大野会長から直々に頂いたのだけど、「宇宙旅行はエレベーターで」に書かれていないディテールが全部出て来て、同書で不満な人は絶対に手に入れておくべき良著なのだけど、数式もばりばり出てくるので、数式よりも数字の方が好きな人はまず第17章を開いて欲しい。

P. 225 を拙訳
一人当たりの太陽系資源(総人口60億人)
一人当たり
水素34兆トン
8340億トン
ケイ素化合物8340億トン
酸素340億トン
炭素340億トン
エネルギー(出力)64.56兆キロワット
自分の持ち分を手に入れていない人は、議員に手紙を!

繰り返すけど、これは一人当たりの割当。さらに参考までに、全世界のCO2排出量は、理科年表オフィシャルサイト/環境部:世界のCO2排出量によると2006年時点で241億トン。

もちろん、この数字は「取り出しようがない」ものもかなり入っている。例えば水素のほとんどは太陽にある(検算してみますた)。半分冗句といえば確かにそうだ。それでも、重力井戸から一歩外に出れれば、資源問題は無問題になってしまう。全人類が billionair どころか trillionair 。こんなド金持ちが戦争なんかしますか?

しかも、これ太陽系のみでの数字。Star Warsをはじめ、「宇宙映画」のかなりの部分は、星間飛行キラッ☆じゃなかった恒星間航行が当たり前。で、この銀河系だけでも2000億から4000億の恒星があると見積もられている。低い方の見積もりでも、お一人様20個。

宇宙でも戦争したいほど困窮している時点では、戦争なんかやっている技術はないし、戦争が出来るほど技術が進んだ暁には、戦争をする理由そのものが消滅してしまう。せっかくコロニーがあるのに自治させない連邦もアホならジオン(というよりザビ家)はそれに輪をかけた阿呆ってこと。

Make starships, not star wars.

Dan the Man @ the Bottom of Gravity Well