日経BPの竹内様より献本御礼。
なのだけど、もう終風翁にぺんぺん草も生えないぐらいきっちり書評されてしまっている(笑)。
本書「すすんでダマされる人たち」は、一言で言うと「大槻教授の最終抗議」の英米版。
目次 - 極東ブログ: [書評]すすんでダマされる人たち ネットに潜むカウンターナレッジの危険な罠(ダミアン・トンプソン)より(笑)- 第1章 知識と反知識――世界を席巻するデマ情報
- 第2章 新しい創造論とイスラム圏――進化を続けるアンチ進化論
- 第3章 『ダ・ヴィンチ・コード』と『1421』――息を吹き返した疑似歴史学
- 第4章 サプリ、デトックス、ホメオパシー――危険な代替医療の落とし穴
- 第5章 巨大デマ産業の登場――『ザ・シークレット』のインチキ起業家たち
- 第6章 デマと生きていくには――決してなくならない反知識
本書から学ぶべき点は、以下の三つだろうか。
- 反知識はローカル
本書を読了して改めて真っ先に感じたのは、「グローバルな反知識って以外とないのだな」ということ。本書に紹介されている例は、英米で横行する反知識なのだけど、そのほとんどは日本では知られていないかスルーされているかのどちらかというもの。「反進化論」は一神教がマイノリティでしかない日本では未だ対岸の火事という感じだし、疑似歴史学はこの国も多いし、「ダ・ヴィンチ・コード」はこの国でも売れたけど「1421」の方はほとんど知られていないし、「ザ・シークレット」はまるで知られていないし....
- 反知識人としての反反知識人
そういった反知識に対して、著者はびしばしと反論を加えていくのだけど、やはり不得手もある。それが特に表れているのが、第4章。医者自身が「医学は科学ではない」と言っている状況下で、「非科学的」で押していくのは、かえって「病状を悪化させる」のではないか。
あと、終風翁もおっしゃる通り、漢方まで「危険な代替医療」に入れているのは、鍼灸の世話にちょくちょくなっている私も首をかしげる。確かに漢方の世界はEBMにはほど遠いが、
2007年までに、中国製の薬品で世界保険期間(WHO)の予備承認が得られたのは、抗マラリア生薬アルテミシニンだけだ
というのは、「漢方=中国」というむしろ反知識によく見られるレトリックではないか。エフェドリンを麻黄から抽出したのは日本人だが、非中国人による漢方はスルーなのだろうか。
とはいえ、著者はあくまで社会学博士であり、医者ではない。「反反知識人」もまた検証の対象であり、勇み足も間違いもする。これは大槻教授も同様だし、終風翁もそうだし、もちろん私もそう。それを見つけるのも、反「反知識」の楽しみの一つ。
- 反「反知識」の実践法
本書が最も役に立つのは、この反知識にあふれる時代において、どうやって反「反知識」と対抗したらいいかを提案している最終章である。この点において、「気をつけましょう」「あなたも反『反知識』を実践しましょう」としか書いていない類書に本書は勝っている。
その具体例として、著者はblogをあげている。「反知識」はいわば知識に対するゲリラであるが、ゲリラと同様、権威化すればするほど脆くなる。そこをゲリラ攻撃してしまえば、個人blogが「機関反知識家」をあっさり打ち倒すことも可能なのだ。
これは、2.の知見との組み合わせでより重要になる。反反知識人もまた、自分の不得手な分野では簡単に、しかも時には自分すら気がつかないうちに反知識人になっていたりする。お互いに「攻撃」しあうことで、それが大きくなることを未然に防ぐことも出来る。「炎上」には確かに消毒効果もある。
こういうのも何だが、反「反知識」の実践は、防疫に近い考え方が求められるのではないか。天然痘のように根絶できるものはまれで、マラリアのようにしぶといものも少なくない。免疫のように、あえて一度かかることによって耐性を確保したり、蚊帳のように「運び手」そのものを遮断したりといった手法を組み合わせた方が効果は高そうに感じる。
Dan the Counter-Counterknoledge Advocate
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