そういう祖父がいない人のために、本書がある。

祖父は従軍の記憶を僕に語ろうとしない。
普段は雄弁な祖父は、しかし口を濁した。どんな返答が返ってきたか覚えていない、ということはなにか意味のある言葉ではなかったのだろう。僕は祖父がなぜこれを語ろうとしないのかよく分からないし、うまく想像もできないでいる。
これは - finalventの日記
これは、お祖父様の友人がいる席に同席してじっと耳を傾けることですよ。

本書、「戦争絶滅へ、人間復活へ」は、従軍記者として太平洋戦争に従軍し、1945年08月15日その日に戦争責任を取る形で退社し、秋田県横手市で「たいまつ」という週刊新聞を1978年まで発行し続けて来た、あの戦争を生で知る人の事実上の最終作品。

なにしろ世界大戦だけあって、あの戦争についての作品は、フィクションノンフィクションを問わず、文字映像を問わず未だに新たなものが作られている。しかし文字で書かれたもののうち、「最初の一冊」として最もふさわしいのが本書なのではないだろうか。

それがなぜか、といえば、戦士が戦場を語らぬ理由がきちんと書かれている、それに尽きる。

P. 35
あえて言いますが、ほどんどの男は、とても自分の家族、自分の女房や子供たちに話せないようなことを、戦場でやってきているんですよ。中国戦線では兵士に女性を強姦することも許し、南京では虐殺もした。

自虐史観?ならばこれはどうか。

日本軍が上陸したとき、オランダ、オーストラリア、イギリスの約八万人が、ほとんど戦わずに降伏した。ところが、彼らがバタビア(ジャカルタの旧名)の兵営に帰るときに、すごい強姦をやっている。そのすぐ後に私たちが行ったわけだ。
ジャングルのなかに連れて行かれたんですが、そこには何十というベッドがあった。おそらく、村中のベッドが持ち込まれていたのでしょう。そこへ村の女たちを全部引きづり出し、男たちはつぎつぎにその女たちを......要するに十番でやる。
その周りには死体がいっぱい転がっていた。近づいてみると、自分の妻がおかされるのを防ごうとして、殺された男たちだった。

古今東西を問わず、これが「戦士」なるものの実態のようである。

そして戦士の誉れは声高に語られ、国家とマスメディアによって増幅されているのに対し、戦士の恥は口をつぐまれ、歴史とともに忘れ去られていく。なぜ著者が「責任を取って」朝日新聞を辞めたかという答えがこれであろう。

しかし著者はそのことを後悔している。結局のところ彼もまた「都落ち」することで、「口をつぐむ者」となってしまったという反省がそこにある。

これくらいでいいだろう。あとは自分で確認して欲しい。

じいさんたちの誰にも言えない恥をまた繰り返さないためにも。

Dan the Helpless

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